NYP Best Of 2016

name your price、自分なりにこの言葉を訳してみたとき、どんな心象風景を思い描くかはその人の自由だ。滅多に出くわさないんだけど、京阪電車に乗って、街に出るとたまに三条か四条辺りの河原でバケツを叩いてノイズ/フリーインプロみたいなことをやっている人がいて、その人に255円を投げたのが僕の初めての「NYP」の経験だった。今年「投げ銭」したバンドキャンプ上の作品の中からベストとしていくつかピックアップしてみた。みんな先鋭的だったり、熱量に溢れていたり、個性的だったりする音楽をname your priceで提供する。もし、この中であなたが気に入った音源があれば、priceするもフリーダウンロードするも自由だと思う。コミュニケーションの手段はあなた次第だ。順不同。

(アルバムタイトルをクリックするとバンドキャンプへと飛びます。PC閲覧推奨。)

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Various Artists - "渋谷コンピ -Mirai Tokyo Shibuya-"

個人的にときめいて、全く知らないアーティストの名前が羅列されたときの興奮はたまらないものがある。「渋谷コンピ」と銘打たれたこのコンピレーションには総勢34名のクリエイターが参加し、思い思いの「渋谷系」を思い描いている。今年ヘビーローテーションした一作だ。凄く思い出深いものが根底にある。

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Monkeybone - "Rocks Paper Fuck You"

Gobbyの別名義なんだろうか、1080pやUNO NYCなどから作品をドロップしてきたこの名アーティストはOPNを超える勢いで世界を回しているように思う。音響とサンプリングに対する印象派的な感性はとても尖んがっていた。代金の支払い先はDFAになっていた。こういうのは欠かさずフィジカル化して欲しい。

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Naoto Kawate with Kiyoko Sakata and Chie Ozeki - "Rolling On The Moon"

昨年のSweet Dreams Pressからのアルバムで魅了してくれたマヘル・シャラル・ハシュ・バズのメンバー、川手直人さんの2016年作。前作はJerry Paperと共に絵筆を取ったかのような朗らかなタッチで印象的だった。今作も緩やかなカーブを描くように夢見心地の音楽を届けてくれている。凄く頼もしい。

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ミズイロノヒ - "ゆめとゆううつ"

toiret statusさんが参加していて知ったアーティストのリミックス作品。とんでもなく愛らしいタッチのMIDIポップ/フューチャーベース。宵闇に染まる学校帰りの自転車の上で聴けたなら最高の人生だったに違いない。やっぱりOmoideレーベルにハズレなし。

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NYŪFILE - "Sayonara B.B.Jacket"

未だにかなり謎が多い京都の作家さんによるミュータントな感性が炸裂したエクスペリメンタル・ポップ。普段何を聴かれているのだろうか、そういう細かいところが気になってくる。"empty"とタグにあるけれど、彼(彼女?)の虚無のようなモノを上手くキュートにまとめあげている。未聴の方はぜひ聴いてみて欲しい。

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Cherushii - "Manic EP"

先日、ウェアハウスで悲惨な火事があったばかりの100%Silkだが、昨年ここからデビューを果たした女性プロデューサーのNYPのEPシリーズ第三弾。カセットという媒体がフィットしそうな軽やかなアンビエント・ハウスの残像がきらきらとしながらも残酷にノスタルジーを抉る。日々の移ろいに寄り添う哀愁があるな。(追記:チェルシーさんはこの火事の犠牲者の一人でもあるらしい。お悔やみ申し上げる。)

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Chun-liang Liu - "Friction"

台湾のサウンド・アーティストによるポエトリー&フィールドレコーディングなエレアコ的快作。これはCDで出ているんだけどデジタルはNYPになっている。大学に行くのが億劫な朝にダラダラとアンプから流した思い出がある。送料安めなのでフィジカルでお薦めしたい。

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Soda Plains - "She Has All Kinds of Temperatures / Rodeo"

DIS Magazine、Liminal Sounds、Black Oceanといったニューエイジの新たな系譜を辿るメディア&レーベルから頭角を現したロンドンの新鋭によるシングル。この辺の音はなかなかデジタルリリースをしてくれないので個人的にも嬉しかった。同世代の子にもっと聴かれて欲しいグライムを通過したナウいサウンドです。

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XYZ - "demo"

これも前述のNYUFILEさん的な感性を感じる独特のユルさが後から染みてくるユルユル系エクスペリメンタル。このストレス社会の中、こういう感性はどのようにして養われていくのだろうか、純粋に気になる。この人は作品をアップしてすぐ消したりするので早めに聴かれるがよろしい。

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Leisure Centre - "High Fashion"

これも日本人の鳴らす音というのだからとても頼もしい。今年買い逃した数々のヴェイパーウェイヴのカセットの中でも特に後悔しているこの傑作は眠れぬ夜にこそ音楽から解放してくれるときめきを届けてくれる。アンビエントはあなたの心に絡みついて逃げることはありません。次回作こそフィジカルで買いたい。

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BOOMARM NATION - "FAMILY ALBUM 2016"

SeekersinternationalやEl Mahdy Jr.に始まる名うてのダブ・アーティストをキュレーションする名レーベルのサンプラー。デジタル・タブの最先端を行くレーベルのコンピレーションだけあって楽曲の強度はレベルが違う。土臭さとナウな感性を求める人にはまさにここを紹介したい。

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Natural Sciences - "V/A Future Works Vol.2"

Aquarium / 外神田deepspaceという新たなる才能を12インチとして世に送り出したドスの効いた新鋭ハウスレーベルのコンピレーション。去年から今年にかけて同レーベルで活躍したプロデューサーから今後キュレーションしていく予定であろうアーティストまで幅広く収録。軽く流して聴ける軽快さでまとまっている。

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Soda Lite - "Liquid Earth"

Pedicure周辺のSoundcloudでよく見かけた、懐かしきバブルガム・ベースの面影を漂わせるキュートな才能。ベッドルームから外行きまで広く生活空間に馴染むポップさがある。抜けの具合があまりにも秀逸だから疲れたときにはいい処方箋になるだろう。こういうのがレコードとかで出てくれたらたまらないのにな。

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Yuto Ohashi - "Neotenia"

なかよしレコードさんが紹介されていた新世代の日本のアーティスト。個人的にこのポップさとどこか憂鬱な情景描写の感覚、弛まぬ実験精神にはかなりドープにヒットした。Y.Ohashiさんとは同一人物なのだろうか。これからがますます楽しみ。

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世界は80年代に終了しました - "24時間 EP"

何故かこれが今年よく聴いたヴェイパーの一つだった。アーティスト名の持つ説得力には僕も心から賛同する。外に出ると国分友里恵か彩恵津子しか聞きたくない気分になるのは本当の話だ。エレガントな佇まいで深夜高速に乗り込むエコジャム・ローファイ・クルージング。

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Teges Semar Pegulingan - "Bali - Teges Semar Pegulingan - Legong Kuntir"

民族系のディガーを追っていたら偶然発見したインドネシアの土着音楽の違法カセット音源をアップロードしまくるという謎レーベル。全て聞いたが、クオリティの次元が違っていた。レーベルの説明にもし音源の所有者がいたら名乗り出てくれと書いてあるのも愛らしい。

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ZINI - "Sirenzz"

Organ Tapesを世に送り出した新鋭グライム/ベースミュージックレーベルTobago Tracksから登場した新たな才能である。90年代のアクション映画を見まくったぞと言わんばかりのサンプリングセンスが二十年回って先鋭的だったりするのが今のネット上の音でもある。軽めだし、外行きにはスリル感もあって楽しいです。

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waterfront dining - "Estrania" 

たまたま買い逃さず手に入れることが出来たヴェイパーの新鋭によるカセット作品。ヴェイパーウェイヴの伝統に則り、デジタルは言うまでもなくNYPである。Luxury Eliteと系統は違うもののこのアーティストの作るスクリュード・ポップもクオリティには定評がある。これからが楽しみな作家の一人。

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Vanessa Rossetto - "Adult Contemporary"

Kyeなどに始まる名音響レーベルから作品を発表し、近年のサウンドアーティストでも類希なる才能を見せつける米女性作家の新作カセット。何ドルか以上出してインフォを送信するとカセットが注文できた。かなりノイズ寄りだろうか、友達が減るタイプのロウな感触のフィールドレコーディングである。

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Ynfynyt Scroll - "Ynfynyt Scroll Summer '16 Mixtape"

Orlando Volcanoが参加していることをきっかけに購入した作品。#FEELINGSや主催のTrack Meetなどで活躍しているダラスのアメリカ人DJ。これは夏の終わりに聞けてよかったなあ。これダンスホールじゃん。トロピカルなアフロハウス、多分来年も沁みてます。

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CVN - "Unknown Nerves"

今は亡き、Jesse Ruinsの1/2として活動してきたNobuyuki Sakuma氏による日本が誇るミュータント・エレクトロニックの肖像。ジェシールインズの頃なら叶ったかもしれない世界スケールの展開からゆっくりと手を変え品を変え、アンダーグラウンドでやっていくと覚悟を決めたのだろうか。これをNYPでリリースするのも気合い入ってる。

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MVJIMOB - "カープ輪舞曲2016 (リメンバー1975バージョン)"

こういう意味のよくわからないものがたまにあるからバンドキャンプを掘るのは楽しかったりする。別にカープファンではない(個人的に中日と西武推しの)僕だが、今年一番聞かされた応援歌がこのカープ輪舞曲であるとはなんとも奥ゆかしいものがある。

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Organ Tapes - "SOME IN A DIFFERENT LANGUAGE (DJ CORPMANE EDITS)"

前述のTobago Tracksからデビューしたオンラインの感性息づく新鋭アーティストによる最新作。ShantiとHeadlockが参加していていいなと思ったけど、他のアーティストはホントに知らない。ニューエイジ~オンライン・アンダーグラウンドの文脈を辿る者には必須のJeromeやDisc Magazineからもミックスを出していてこちらもぜひ聴かれて見て欲しい。

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Quantizer Kyoto - "Quantizer Sampler 2"

Toyomuが参加しているということで買ってみたコンピレーション。全員京都の人なのだろうか。そういうところが趣深かったりして食指が伸びたビート/ヒップホップ作品群。LAビートとはまた一線を画す日本人の独占的ユルさがなんともまたたまらない。

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10minimal - "unohtaminen"

以前から名前を聞いていたけど、初めて耳にした作品がこの編集版の作品。愛らしい、長年エレクトロニカは離れていたつもりだったけど、これに触れて以降ズブズブと引き戻されてる。本人の人柄やアートワーク、音楽も世界観が纏まっていてとても好印象でした。

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toiret status - "ObenjO"

日本発の新たなる才能であるドラマティックなアーティストのPedicureデビュー作。今年はOrange Milkからカセットも出していていうことなしなのだが、出来れば今度はぜひダウンロードコード付きの和式便所をリリースして欲しい。(10万までなら買う)。

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Radar Radio - "RADAR.2.ZIP"

NTS RadioやRince FMとはまた一線を画すロンドンの先鋭ラジオステーション、Radar Radio発のコンピレーション。リリース当初はNYPだったものの、今はフリーダウンロードになっている。ヒップホップやグライムを始めとした尖ったキュレーション。この機会にぜひこのメディアにも触れてみて欲しい。

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Love Cult - "Educated Guess"

Digitalis亡き後もUmor Rexと共にカセットレーベルのファンタジアを追い求め続けるロシアはFull Of Nothingの主催者二人によるデュオの最新楽曲。これがアルバムだったら殺されていたかもしれない。今は7インチとLPの制作中だとかで非常に今後が楽しみな要注意のレーベルボス。

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KOKAYNA - "music to fuck your drug dealer to"

ジャケットから既にヤバイと思っていた。マクロスがコラボレーションってホントだろうか。バブルガム・ベース、Kawaii-Future Bassの極北を独りで突き進むロサンゼルスの迷子の女性によるカラオケ・ポップ・ダークウェイヴ。

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sportsmusicassemblepeople - "For My Homiez"

今年度、言わずと知れたSMAPトリビュート。笑うしかないアートワークながら、スカートや嫁入りランド、Carreにマシュマロハネムーン参加とかなり豪華なラインナップ。このコンピレーションを通して案外初めて本格的にSMAPに触れたかもしれない。まだ聴いてない人は是非チェックを忘れずに。

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Vibraphonic - "Pulsar"

今年一番、NYPの音楽としても強度にびっくりしたフリーインプロヴィゼーション。北欧を彷彿させられるような愛らしいジャケットながらイタリアのアーティストらしい。ビブラフォンとパーカッションだけでこれだけ色彩豊かな音楽を構築するというのも夢がある。こういう真摯な音楽は姿勢を正して聴きたいですね( ᵕᴗᵕ )

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L'eoscombu Couti - "lac des psaumes et la moissonneuse-batteuse"

/fの友人と思われるContellation TatsuやCarpi在籍のカナダ・ケベックのアーティスト。やはりPsalmus周辺の感性というべきか。独特のアンビエンスとユルさがうまいこと被さっている。たまらなくロウな耳好さが愛せる。ヒプノティックという言葉も似合うであろう瑞々しいアンビエント作品。

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Comfort Zone - "Comfort Zone Remixes: t e l e p a t h テレパシー能力者"

ヴェイパーウェイヴを貼るのはなんか卑怯(?)かなと思ったんですが、これは格別良かったので紹介します。これはもしカセットで出てたら間違いなく高騰したであろう好内容なリミックスアルバム。テレパシー能力者は現世代のヴェイパー筆頭格であり、Comfort Zoneはヴェイパーの作家を招聘して届けられるポッドキャストレーベルであらゆるヴェイパー好きに欠かせないレーベル。こういう楽曲群のリリースはこことしては珍しく、今年よく耳に馴染んだ一作だった。

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boxboys - "g o o d b y e"

ツイッターで何となく呟いたところ、あるフォロワーの方が異様に気に入ってくれたヴェイパー・トラップ。自分でもよく聞いてみたところmemory cardsを彷彿させられるようなノスタルジックの嵐にひきこまれてかえれなくなった。サンプルの使い方が叙情的。やっぱり思い出に根付く音楽が好きだなと思う。こういう音楽と来年も出会えたらもう言うことありません。

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