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First half of 2016 : Best 50

上半期というにはずいぶんと遅くなってしまいました。(公開日時は七月末)。学生なので金銭的制約もありましたが、今年はヴァイナルを買う比重を増やして、アップルミュージックの恩恵も存分に駆使して数多くの音楽に触れることが出来ました。挙げればキリが無いほど素晴らしい作品に出会えましたが、その中でも本当に良いなと思ったものの中から上半期に発表されたEP・アルバムの中からお気に入りをランキング形式で紹介します。(アルバム名をクリックすると音源に飛びます)

 

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50. Autumns - "Das Nichts" (Clan Destine)

Ela Orleans主催のClan Destine Recordsからデビューしたロンドン・デリー拠点の数人組。80sインダストリアル/エレクトロニックな狂気と粗暴な魅力が混在している。埃っぽいノイズビートのシーケンスに寄り添うように乱気流を帯びた電子音の重ね方がどこかドローン的でもあり、全体的にインスト寄りながら、リヴァーヴのかかった呻くようなボーカルもまた印象的でありポストパンク的なようにも思える。Dirty Beaches愛だろうか、じわじわと惹き付けられる怪作カセット。

49. Day Wave - "Hard To Read" (Fat Possum)

SoundCloudで昨年公開されたシングル、"Come Home Now"と"You Are Who You Are"は新人として異例の20万再生を記録した米オークランド出身のJackson Phillipsのソロプロジェクト新作!照れ隠しのようにくぐもった歌声が心をくすぐるキラキラと輝く青さのサーフロック!再生する度に因果律が操作されるような多幸感さえ覚える奇跡の青春ポップミュージック。

48. James K - "Pet" (Dial) 

謎ジャケット!アンダーグラウンドの深淵で闇堕ちというか咎落ちしてしまったグライムスみたいな神々しさと禍々しさとヘンテコ・ポップ感覚が入り乱れている。澄んだハイトーンのボーカルがゆらゆらと浮遊するまさに今旬なエレクトロ・カラオケ・ポップ。薄い灰色の両面ポスターに描かれたカルトな現代宅録女子の闇も一周回ってキュートでした。現代っ子必携!

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47. Joy Again - "Looking Out For You" (Lucky Number)
またしてもフィラデルフィアから!とんでもなく愛せるローファイ・ポップに打ち抜かれてしまった!HindsやDream Wife輩するLucky Numberから登場した5人組。デビュー当時、16歳の子もいたそうです。音になっても褪せることのない愛嬌たっぷりのダサいのか、新しいのかも分からないモコモコとしたギターポップ。良い!

46. Ishmael - "Sometime In Space" (Church)

Seb Wildblood主催の今一番キテるUKハウスレーベル、Churchから夢みたいなディープ・ハウスが登場しました。なんというアートワークの良さ。アンビエンスの塊のように快適なウワモノをベースにして、ジャジーに縫合されたサンプリング・アンサンブルが交差していく。季節を選ばないロマンチックさが光っています。

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45. Leapling "Suspended Animation" (Exploding In Sound)

ニューヨークの三人組による愛しのエクスペリメンタル・ポップ。インディはこうでなきゃ!古き良き時代からやってきたストリングスの音とともにエバーグリーンなメロディがゆったりと流れる冒頭曲の"I Decide When It Begin"、今を生きる喜びに胸を馳せる青さの音色"Alabaster Snow"、眩しいほどにドラマチックな風景の中、微笑み返してステップを踏む彼女の姿が見える"Don't Move Too Fast"、1~3曲目の流れが眩しいほどに鮮やかです。

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44. Sissy Spacek - "Disfathom" (Helicopter)

John Wiese × Charlie Mummaのコンビによるノイズグラインドの凶星、Sissy Spacekのニューアルバム!(Cassette、CD、LPの三種類でリリース)比類のない破壊力と殺戮衝動で毛細血管をぶち破りつつ、地獄のデスロードをマッハで駆け抜けるゴアジェットの心意気は相変わらず。とても上品とは言えないノイズの嵐と純粋培養の憤怒が濃度100%で展開される10分間。

43. Joasihno - "Meshes" (Alien Transistor) 

ドイツ人作家のCico BeckNico Sierigによるエレクトロ・デュオ。自作のシンセサイザーや奇妙な楽器を多用し、ロボットによるオーケストラというファンシーなスタイルも用いていたりとなんとも言えないユニークな空気が炸裂しています!00年代のエレクトロニカにも通じているような「時代」の淡さがふわりと舞って、出来過ぎてるんじゃないかって思うくらい居心地がいい。疲れた心の処方箋。こちらのレーベルからはテニスコーツの"Music Exist Disc1"のLP版もリリースされている。

42. Rosen & Spyddet –"Drengen Ved Brystet" (Janushoved)

ポスト・ラストフォーユースな立ち位置の夢のエレクトロ・ノイズポップデュオ、Rosen & Spyddet。メンバーはそれぞれTranquility TapesやIkuisuusなどのカセットレーベルからリリースしていた経緯もある北欧の原風景的なシンセの音遣い、瑞々しい空気感と相まってノスタルジックな恍惚の連鎖が止まらない。ボーカルの混じらない物足りなさがちょっと惜しくて、100点には及ばないって感じもなんか逆に好印象を植え付ける。でも今年一番聴いたカセットでした。これからにさらに期待が出来そうです!(ボーカル入れ!)

41. Death Index - "Death Index" (Deathwish Inc.)

まるでジャケ買いをしたような気分だった!我らがMerchandiseを率いるCarson Cox参加の新生ハードコアパンクバンド。まるで燻し銀のような佇まいの中、スロウで重たいダンディズムに満ちたヴォーカルでじわじわと迫り来るエネルギッシュな骨太のサウンドは圧倒的。マーチャンダイズで養ってきた、ズブズブと深みにハマるポストパンクな粋が見て取れる。

40. Nicholas Krgovich - "The Hills" (Tin Angel Records)

カナダって国はちょっとズルい。昨年二度目の来日ツアーを行ったバンクーバーのスムース・ポップ・シンガー、ニコラス・ケルゴヴィッチの二年ぶりの新作はドラマチックな夜長に彩る大人の純愛ブルー・アイド・ソウル。人のよさが滲み出る音楽の澄み切った空気感が好きです。

39. Merely - "Uncanny Valley" (Sincerely Yours)

「もしかしたら神様はいるのかもしれない」なんて気分にさせてくれる神々しい空気を纏ったスウェーデンのレーベル、Sincerely Yoursからは同レーベル所属のTeam Rockitのボーカルにして歌姫、Merelyの最新作。天界を降りてくる女神の微笑みが魂を深淵まで満たすエンジェリック・チェンバーミュージック。やはりABBARoxetteThe Cardigansへと続いて来たスウェディッシュ・ポップの血と祝福された大地にて交わり合った神聖なる博愛の果実。

38. Basic Rhythm - "Raw Trax" (Type) 

今年は来日も果たしているベテラン&遅咲きのワーキングクラス・プロデューサー、ロンドン育ちのImaginary Forcesによる新プロジェクトはエクスペリメンタル・シーンの良心的レーベル、Type Recordingsから。スタイリッシュな佇まいとグライミーなノリの良さで侵食する、ガラージやジャングルを吸収したトリップ感覚のダンスミュージック。かな~りゴツいです。

37. Kristin Thora Haraldsdottir - "Solo Acoustic, Vol. 14" (Vin Du Select Qualitite)

Sir Richard BishopやMark McGuire、サーストンムーアなども作品をリリースしているVin Du Select Qualititeから発表されたアシッドフォークの快作。このレーベルからの作品はどれも素晴らしいのですがこちらは一層聴かされるものがありました。Morr Musicなどのアーティストの諸作でヴォーカルや演奏を担当してきたアイスランドの女性インプロ奏者、初のソロ作品。原風景が広がり透き通るようなインストゥルメンタルでミニマルに構成されたモダンでアコースティックな音の連なりがさざめいている。センチメンタルな気分に浸りたいときに豊かな趣きを与えてくれる安らかなメロディ。

36. Joey LaBeija - "Shattered Dreams" (PURPLE TAPE PEDIGREE)

プエルトリコとイタリアの血を引くゲットー育ちのJoeyはヴォーギング・グループのHouse of LaBeijaの第四世代のメンバーとしても知られる。インターネットを前にして精彩を欠くダンスミュージックへの抵抗を口にする彼のスタイルは内省的かつスリリング。ヴォーグやグライム、ヒップホップを芯の部分で透明度の高い音像に集約される。かつてゲイはヴォーギング・ダンスを通して互いの美しさを競ったという。世界の深淵であるゲットーで養われた感性は艶やかにして華やかな毒牙を研ぎ澄ましている。

35. Laraaji & Sun Araw - "Professional Sunflow" (W.25TH)
Superior ViaductのサブレーベルからリリースされたLaraajiとSun Arawのコラボレーション・ライブ音源!ニューエイジ×ダブの真骨頂!まるで北インド伝統音楽や中東の伝統音楽、密教音楽といったようなメディテーティヴなテクスチャーをミックスした幽玄なサウンド。エレクトリック感覚な丸みを帯びて飛び交うエキゾティシズムが壮大な時を越えて解き放たれた快作!インドのお香を焚いて熟聴したい宇宙遊泳感が炸裂してて最高。

34. Glenn Branca - "Symphony No. 13 (Hallucination City) for 100 Guitars" (ATAVISTIC)

ノーウェイヴの地平で挑戦を続けるグレン・ブランカの新たな試みはオーケストラで再現するエクスペリメンタル・ロック(2008年録音)重厚なバンドサウンドで爆風を撒き散らす暗黒威容の重低音、この手に負えないスケール感はSWANSのソレにも近い!戦前のカートゥーン映画のような異質さが終始付きまとう怪作。

33. Death In Vegas "Transmission" (Drone)

英国が誇るエレクトロニック・デュオ、いや、しかし遂にリチャード・フィアレス一人となり、心許す者、皆死んでいったDeath In Vegasの最新作が五年ぶりにリリースされていました。ソリッドで無機質ながらどことなくキケンな香り、今にも炸裂しそうな金属音をショートさせ、長年育んで来た七十年代と八十年代への愛が複雑に交差していく。現行シーンに適応したミニマル・サウンド。ダンスホールで煌めきを増すに違いないざらざらとして不穏なテイスト、残像を残して迫撃するサイドワインダー、クラウトチックでサイケな魅力が追い打ちをかけに来るポスト・インダストリアル・エレクトロニック。にやはり死んでいく。

32. Zeitkratzer + Keiji Haino - "Stockhausen: Aus den sieben Tagen" (Karlrecords)
灰野敬二の近年の作品で最も異彩を放っている作品だと感じられたのが、ドイツの前衛アンサンブル、Zeitkratzerとの三度目のコラボレーション作である、シュトックハウゼンの"Aus den sieben Tagen"を再現したこのアルバム。ここで重要なのは、本作の全体を通して展開される、静寂の「寂」の要素を灰野敬二というミニマルスケールなアンビエンスで解体したことだと思う。そこに取り残されたものはひたすらに「無」であるように感じられた。これによって、表題作においてシュトックハウゼンの志向した直感音楽として、人の感覚が最も繊細に研ぎ澄まされる「静」的な空間設計を再現するに至っている。真っ暗な部屋で聴くにはちと無機質過ぎる不気味さが鑑賞者の五感を増幅させる奇作。

31. Negicco - "ティー・フォー・スリー" (T-Palette Records)

多くを語る必要は無いはずです。ネギを持って歌っていた三人組アイドル、新潟のNeggicoの3rdは昨今のアイドルや声優達が切り開いたAORシティ・ポップの地平線にて輝くアーバンミュージック!ちょっと大人になった姿でジャケットを飾った三人の笑顔が眩しい。スパングルコールリリライン、平賀さち枝、Lucky TapesのKai Takahashi、坂本真綾などが作詞・作曲・編曲を手掛けた意欲作!全体的にフラットな印象を受けるもそれを上回って親密かつ耳馴染みの良い電子音が彩るエレクトロ・ポップ。中でも、土岐麻子作詞・さかいゆう作曲の『矛盾、はじめました。』は今年のベストソングだと思っています。

30. Healing Force Project - "Gravitational Lensing" (Firecracker Recordings)

危うく買い逃しかけた2016年のベースミュージックの本命の一つ。VakulaやLnrdcroyを輩するエディンバラのエレクトロニック・レーベルにして今を輝くFirecrackerからは、Berceuse HeroiqueやBedouin、Nousといった著名レーベルからのリリースで近年急速に名を上げてきたイタリアのAntonio MariniによるHealing Force Project!これがヤバいのなんの!!! 得体の知れぬ民族調のダイナミックなリズム感の中、フリージャズライクなジャングル・テイストで危なっかしく展開するブルータル・テクノ。ミニマルな進行なのだけれど、情報量の多さは異次元。各所でソールドアウトしてしまっているけれど、見つけた方は是非アナログで手に取って欲しい今年最高のEPの一つです。

29. Inventing Masks "Inventing Masks" (Error Broadcast)

Senufo Editionsを主催したGiuseppe Ielasiの新プロジェクトが遂に始動した!新名義での挨拶代わりに発表した新作品は、ジャズ・テイストな音の鳴りを基調にヒップホップやミニマル・エレクトロニックな要素をふんだんに詰め込んだバランス感覚の賜物。持ち前のリズム感覚を平坦化させることなく実験電子音響+ビートミュージックな次元へと再着陸した快作!

28. Federico Durand - "A Través Del Espejo" (12k)

カセットレコーダーで録音された音をさらに別のレコーダーで再録するという手法を用いて、古ぼけた輪郭へと整えられた繊細な音響。素朴な質感は淡くも鮮明です。蜃気楼に映る幻のように美しい景色が広がる街並みの中で空気の境をゆらゆらと彷徨う夏の日のくつろぎミニマル・アンビエント。人懐っこい季節を運ぶ風の通り道に風鈴の揺れる音が聞こえる。

27. Lumisokea - "Transmissions From Revarsavr" (Opal Tapes)

今年の来日公演で圧巻のメタリック旋風を巻き上げていったベルギー&イタリアのエレクトロアコースティック・デュオ、Lumisokea。人を殺すようにソリッドで重厚なサウンドが如何にもモテそうでモテない破戒のトライバル・インダストリアル。ダーク・テクノなテクスチャーを内包したディープな音遣いが見事。究極の質感と練り上げられたリズムの強靭さで畳み掛ける好作。

26. Brood Ma - "Daze" (Tri Angle)

インターネット・アンダーグラウンドを彷徨うような未知の機動性でソニックブームとノイズの乱気流を巻き起こし、早くからサイバネティックな音楽を展開して来たロンドンのプロデューサー。こうしたような異質な電子音響を拾い上げてきたTriangleからのデビューは違和感のないものに感じられる。鋭利なサウンドを精錬したコラージュミュージック主体ながら、ダビーかつ確かなリズム感に乗せて、ミストと化した金属片を撒き散らしていくネオIDM。ポスト・インダストリアルな肌触りの無機質な音楽ながらも、ダイナミズムを纏ったスリリックなスケール感が生身の熱量を感じさせてくれるミュータント・エレクトロニック。

25. Anderson .Paak - "Malibu" (Empire) 

ローリング・ストーン誌の「あなたが知るべき10人のアーティスト」にも選出されたLAのアンダーソン・パク。Knxwledgeとのコラボやドクタードレーの復帰作への参加で知名度を上げ、スターダムを駆け上がってきた彼がいよいよセカンドアルバムを発表した。マッドリブやロバート・グラスパー、クリス・デイヴ、ナインス・ワンダーを始めとした豪華メンバーが参加し、ヒップホップ、R&B、ゴスペル、ソウル、ロックを高度にブレンドしたチルアウト・ビートミュージック。アンサンブルとして絶妙に敷き詰められた有機的なサウンドメイキングがディープな世界で重厚に花開いている。

24. THE GEROGERIGEGEGE - "燃えない灰" (Eskimo Records)

ジャパノイズの伝説、ゲロゲリゲゲゲがまさかの新作をGrimのEskimo Recordsからニューリリースという大事件が起こったのが今年でした。GauzeG.I.S.M.も再結成しただけでなく、プリンスもボウイも死に、今年は何かある。得体の知れない"日本風"の何かをフィールドレコーディングしたエキセントリックな感性を冒頭から曝け出すところに「復活」を実感させられる。鈍くも強靭なサウンドプロダクションの迫力にヒリヒリと古傷が痛む人も多いだろう。ジャケットから滲む絶対的な孤独がこの音楽の真髄か。

23. Don't DJ - "Authentic Exoticism" (SEXES)

High Wolfとのスプリットを発表したばかりのアフロ・エレクトロニック、The Durian Brothersの一員でもあるFlorian MeyerによるDon't DJ、今年リリースした作品のうち、一作目に当たる作品。異質なジャケットから放たれるエキゾティシズム(そしてソレへの風刺)は当作の音楽にも現れている。整然としたポリリズムの成立によってリズムへの感性を明瞭にした柔軟性がどこか瞑想的な要素を色濃く持つことで、異国趣味に於ける「偏愛」から鑑賞者を解放させる意味合いを持っているように思う。偶像の生み落とす現実との乖離を今一度深く捉え直すとき寛く麗しい心と空間を提供してくれる一作。

22. Junior Boys "Big Black Coat" (City Slang)

勢いの止まることを知らないエレクトロ・ポップの中でも飽和と消化不良を退け、デビュー以来、一際異彩を放ち続けているのはJunior Boysだ。シンセポップのみならず、ミニマル・テクノやヒップホップ、UKガラージといったクラブミュージックサイドからのアプローチで成立させたエレクトロニック・ポップは強靭なバックボーンを確立させるに至っている。ディスコ・ライクな軽快さを纏いながらも何処かに拭い去れない違和感を内包し、ほとばしる青さを香らせるナード・ミュージック。やはりどこかミディアム。瑞々しい空気感の中、センチメンタルに聴かせる魅力がある。Lust For Youthとはまた違ったカタチのニューオーダー

21. Mary Lattimore - "At The Dam" (Ghostly International)

Desire PathやThrill Jockey、Kit Recordsなどからレコードやカセットをリリースしていたフィラデルフィアの女性ハーピストの世界デビュー作。米地下の女性作家、Letha Rodman Melchorの遺作でその存在を知って以来、幻想的にリズミカルな旋律を刻む彼女の音色に魅了されていました。ハープとエフェクトを駆使した実験的な要素が強い音楽性ではあるが、水彩のように淡く優しい輪郭をしたアンビエントを生み出す繊細な情緒の扱いに長けている。ノスタルジックとセンチメンタルの狭間で感情の機微を感じさせに来る秀逸な音遣いに心奪われること間違いなし!

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20. Fat White Family - "Songs For Our Mothers" (Without Consent)

一年に一度はこういうバンドに出会いたいロンドン発の魅惑のガレージ・サイケデリック!自主レーベルのWithout Concentからリリースな三年ぶりのニューアルバム!「マック・デマルコが音楽を作り続けるなら、俺達はISISに入るぜ!」(理不尽)なんていう過激発言やパフォーマンスでセレブリティを魅了し、ショーン・レノンなんかもちゃっかり参加させてしまったり。呪術めいた不穏さも内包した退廃的なアトモスフィアの中、淡々とウィアードな世界を紡いでいく現代のアートロック。リンク先のPVは必見!

19. Torn Hawk - "Union And Return" (Mexican Summer)

信頼の映像作家、そして音楽家、Torn Hawkの新作はファイナルファ〇タジー。まさかこのジャケットで来るとは思ってなくてやはり期待を裏切られなかった。アートワークに描かれたニューエイジな景色に負けず劣らず雄大なストーリーの中、ミディアム・テンポの明るくキラキラとしたサイケデリックな音像で進行していく天上のメロディが輝かしい。シンプルな反復音が生み出す恍惚と愉悦、あまりにもプリミティブなものがバックボーンにある。ここまで大袈裟なロマンティシズムに溢れたエレクトリック・ギターをかき鳴らせる男は希少だろう。

18. 18+ - "Collect" (Houndstooth)

今最も波に乗っている西海岸のR&Bデュオ、ジャスティン・スインバーンとサミヤ・ミルザによる18+。Fabric傘下でアンダーグラウンドからメインストリームへと拡大しつつ、クラブミュージックシーンで一世を風靡して来たHoundstoothからの二年ぶりの新作アルバム。レフト・フィールド畑のニューブリードな音楽ながらポップミュージックとして通用する歌唱センスを持ち、しかもその音はダークサイドから鳴っている。ダウンテンポなエレクトロ・ポップで朗らかに語るストーリーテラーながら、魔性と艶やかに微笑を決めてみせる。魅惑のフューチャー・エレクトロニック。来日が待たれる!

17. Værket - "Jealousy Hits" (Escho)

これがEschoから鳴らされるサウンドということに正直戸惑いを隠せなさがあった!コペンハーゲンの六人組サイケデリック・ロックバンドはVærket(なんて読むんだ?)やはりデンマークらしくバックで鳴り響くサウンドはポストパンク的でありながらも、展開はシンフォ系のプログレッシブロックそのもの。あまりにも大袈裟。あまりにも仰々しい。僕はカンタベリーとかアヴァンロック系統じゃないと正統派なプログレは受け付けないんだけど、これはその若さから滲み出る衝動に少しずつ惹かれてしまいました(しかしバンドメンバーみんなして彫りの深すぎるプログレオタクなツラをしていた)これだけのことをやれるなら引き出しは広いと思うのでこれからが楽しみな存在!

16. Low Jack - "Lighthouse Stories" (Modern Love)

昨年のIn ParadisumからのLP辺りから飛ばして来てるなーと感じていたLow Jack、Modern Loveからのリリースで遂に次元を超えて戻って来ました!かねてよりの彼の個性的な一面であった「ロウ」な質感はアンビエンスを感じられる丸みを帯びたエレクトロニックとなり、甘みのあるウワモノとしての要素においてより大きくウエイトを占めている。瑞々しくなったLow Jackのサウンドというのもまた新鮮だ!ここで展開されるビートも改まった「ロウ」な質感ならではの映え具合。ブツ切りビートの違和感とアンビエンス、劣化ノイズのインダストリアルなテクスチャーを見事に同居させた快作!

15. Jay Arner - "Jay II" (Mint Records)

何もかもが満ち足りた家路の風景とともに週末を生きる僕たちへ捧ぐ究極のアーバン・シンセポップがカナダは大都会バンクーバーから。ニューウェイヴを愛する男の粋が伝わるジャケットからして既に信用に足ります。Yacht Clubを彷彿するような親密なテン年代インディの息吹を纏った水色の水滴り落ちる走馬灯ポップ!ラーメンばっかり食べているヒマはなかった!

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14. 綿めぐみ - "ブラインドマン" (TOWER RECORDS)

"香港生まれ、インターネット育ち。趣味はアニメ鑑賞。" ソーシャルネットワークの深部に浸透し(いや、まるでそんな風な素振りで)スマートフォンを片手に気だるげながら、オンライン時代を趣味に生きる浮女子が『災難だわ』をネット上にアップロードして以来、ブレイクの兆しを見せて来ています。目の見えないインディバンドマンが少女との邂逅を果たしたようなセンチメンタルな空気感は鮮やか。反復的なバックトラックはエキゾチックで独特な雰囲気を帯び、豊かな感情の発露を現している。同じ世代を生きる一人としてもこれからがますます楽しみ。

13. Worldbuilding - "Umbrella With Rain Drops Emoji" (Visage)

激ヤバ、ロマンス・ポップ!未だに衰えることのない勢いで独特のシーンが輝くコペンハーゲンからはニューロマンティック愛がみなぎるデンマークの新興レーベルから!First FlushやSynd Og SkamといったEscho周辺の才能をキュレーションするVisageからオペラ・ロックな壮大な佇まいを見せてくれるニューカマー。北欧神秘迸る激渋なヴォーカルとギリシア彫刻のような彫りの深い輪郭がイケてるJonathan West Carstensenのファーストアルバム。アコースティックなメロディラインに絡みつくノスタルジアの息吹が優しく全てを抱擁します。今回はアイチューンズでのデジタルリリースなのでフィジカルでの登場が待たれる大型新人!

12. Isorinne - "Recollections Of Forgotten Dreams" (Field Records)

今年一番リピートしたヴァイナル。ストックホルムアンダーグラウンドの神秘にしてVargのJonas RönnbergとともにD.Å.R.F.D.H.S.のメンバーとしても活動しているMICHEL ISORINNEのソロ作品です!アートワークの秀逸さだよ。今年一番円盤をひっくり返した黄泉の世界から響く異郷世界の謎めいた旋律の嵐。環境音をフィーチャーした神聖なサウンドが煌々とゆらめき、アンビエンスが大洪水を引き起こして、センチメンタルを解体していく叙景美の超快作。深淵なる音響空間が深く深く奥行きを持ち、安らぎの中に引き込んでくれる本質的な解放を感じられる稀有な音楽でした。これからもこういう形容し難い感覚に出会っていきたい。

11. Kaitlyn Aurelia Smith - "EARS" (Western Vinyl)

風の谷のナウシカにインスパイアされた極彩色なサイケデリック・ポップの波!!アメリカ・ワシントン州バンクーバー島の間に位置するオーカス・アイランドで生まれ育ったケイトリン・アウレリア・スミスの三作目。彼女は今年のAnimal Collectiveとのツアーにも同行したり、以前にはPanda Bearの''Boys Latin''にも関わっているなどインディミュージックサイドからの注目も受け、Suzanne Ciani女史とのコラボ作品もRVNGからリリースするなど活躍の幅を広げている。Buchlaの復刻版モジュラーシンセであるMusic Easelを愛用し、ノスタルジックに織りなす立体電子音響は、彼女の瑞々しいヴォーカルと内的世界にて邂逅し、ミニマルな立体電子音響として近未来の自然美に満ちたエレクトロニックサウンドをものにしています。混沌と秩序に対比される運命の抒情詩を体現するこの作品は、きっと日本にも広く受け入れられるだろう。

10. Kevin Morby - "Singing Saw"

10年代を生きる人々にとっては青春と等価であるインディロックバンド、運命のポップミュージック・クリエイター、WoodsのKevin Morbyの新作がめちゃくちゃ良くてビビった!夏の日の暖かな日差しに惹き付けられるように歩みを進めてしまう不思議な空気感に包まれている。そんなゆったりとした時間が流れる中、サイケデリック・フォーク基調な郷愁サウンドがとても暖かな叙情系泣きメロ炸裂。魂で聴く一枚だ!

9. Pita "Get In" (Editions Mego)

"Get Off"から"Get In"へ。Mego主催のPitaの久しぶりの新作。暗黒面の深淵にて浴びさせられる様なドローンの風が吹いてしまった今年の傑作的音響作品。奥深く繊細な一面がある一方で背中には鋭利な刃を隠し持ってる。グリッチ・ノイズ~ダーク・アンビエントなテクスチャーが全編を覆い冷気が漂っている。機械的に反復するパルス音がじわじわと腐食を誘い、グリッチの髄を極めたような無に還る断片的絵画が描かれ、鈍い電子ノイズを唸らせつつ静謐な響きを綴るラスト曲へと向かう。寡作という印象が強いレイバーグだけれども、一作一作が圧倒的な威容を放っていて飽きさせない凄みがあるよなあ。今年この作品を避けていた人も是非聴いて。音の粒の解像度が伝説レベルだから。メチャクチャ良い。

8. Joanna Brouk - "Hearing Music" (Numero Group)

良質なAORソウルミュージックを中心に素晴らしい音楽を発掘し続けてきたシカゴの名門レーベル、Numero Groupから今年発表されたのは初期電子音楽にてニューエイジという音楽を切り開いた作家の一人、Joanna Broukの作品群から選曲された二枚組のコンピレーション。テリー・ライリーやロバート・アシュリーに師事していた。カセット録音独特の程よいノイズが包み込む中、マギー・ペイン女史の即興フルートの優雅な演奏が感情を安らぎに還すB2の"Mary's Watch"なんてまさにヒーリング・ミュージックの極北。ミニマリズムに裏打ちされた音響空間にムダな物は何一つ無い。音と音は背景との境界性を無くすほどボヤけて空間と一体化するが、聞き手は抽象的な絵画のような空間に放り込まれる。世紀を越えて届けられる今年最大級の発掘案件。

7. Chairlift - "Moth"

上半期のインディシーンで一番頼もしく思えたのはキャロライン・ポラチェック擁するブルックリンの男女デュオ、チェアリフトの最新作『Moth』。キャロラインのソロプロジェクトにして彼女のダークサイドの横顔、Ramona Lisaとしてのカルト・ポップアイコンとしての経験やビヨンセのプロデュース、ブラッド・オレンジなどとのコラボを経た現在もエスニックな歌声の妖艶な魅力は健在。よりアーバンな魅力を携えてチェアリフトは帰ってきた。さらにポップミュージックとしての強度を増し、強調された低音のバックビートがとても重厚なエレクトロ・ポップ。クラシカルに洗練された瑞々しい勝負の一発!週末に心躍る最高の一枚!

6. Nonkeen - "The Gamble" (R&S Records)

Sonic Piecesから発表されたF.S.Brummとの三度目のコラボ作品(これもアナログ買っててベストに入れるか迷った!)を始めとし、今年もリリースの波が止まらないドイツの類稀なるコンテンポラリー・クラシカルの才能、ニルス・フラームが幼馴染み二人と結成した新バンドです。八年間ものレコーディング期間をかけて制作された渾身の大作。M-3 "Ceramic People"なんて湿り気良好のタイトなドラミングが真空管を通過したエレクトリックな音響彫刻の神秘。プログレッシブなまでに大袈裟な熱量の嵐が電子音に躍動感を吹き込んだミニマル・エレクトロニクスの大傑作!ポスト・クラシカルな作風よりも、ベースミュージックのような頑強さと電化マイルスみたいなダイナミズムを伴ったこの路線は最高に好きかもしれないな。

5. Tim Hecker - "Love Streams" (4AD)

今作もKara-Lis CoverdaleとBen Frostが参加。立体電子音響の髄を尽くしたカラ・リズの昨年のLXVとのLPやカセットのスケール感にも劣らない圧倒的なニューエイジ・サウンドで前作「Virgins」の深淵を引き継ぎつつ、より神聖美的な宗教性を讃えつつも、理想美の追求とは一線を画した原風景的タッチで印象派絵画のような空間との親和性を密にした日常描写の白昼夢だ。融解する大氷河の如く圧倒的なスケール感で地平線の彼方へと広がっていくアンビエント・ドローン絵巻。「Virgins」以前とはまた一味違う繊細な叙景描写の賜物だ!

4. Seiho - "Collapse" (Leaving Records)

日本のビートミュージック界を牽引した男であり、関西の秘宝とも言えるだろう、Day Tripper Recordsを主催したSeiho。今作まで彼には強く興味を持っていたわけではありませんでした。やっぱり、Matthew DavidのLeaving Recordsからデビューしたというのは大きくて、自分の好きな何かに箔付けされてから好きになるというのもちょっといかんなと思うけど、自分の本心からも戦慄させられてしまった。ASMRの側面を持つ耳好さとフリーキーなテイスト、インターネット世代のポップセンスがミニマルなビートで紡がれていく。本作でも意識されたミュージックコンクレートというコンテクストの上でも理解を導き出すプロセスは大変困難を伴うものだと思われる。Seihoは「僕の中での2020年の目標として、今回のアルバムのようなものを〈全員がわかるような状態〉に持っていきたい」とも語っていて、そのとても壮大な野心には心惹かれる。凄く、良いと思う。

3.大森靖子 - "TOKYO BLACK HOLE"

第一子を出産という大きなプロセスを経てからも彼女の芯から届けられるような魅力に衰えは無かった。魔法が使えないなら死にたいを初めて聴いた2013年の秋、受験目前の浪人生だった僕はアーバンなミュージックの魅力に打ちひしがれた。まだ「東京」を見つけられていない自分はカーネーションの"Edo River"を聴いたときのように「まだ早い」ドキドキ感を覚えてしまった。安心出来なかった。僕は二十代になり死ねなかったし、彼女もまた三十代になっても死ななかったし、メジャーデビューしてしまっていた。アラサーの苦難から吹っ切れたような余裕は聴く人のブルースへと寄り添う魅力があった。退廃的魅力みたいな幻想から解放されたような力強さはとても美しく、僕みたいなチャランポランは結構助けられているのである。

2.BATTLE BREAK - "BATTLE BREAK" (PRR! PRR!)

数ある新進気鋭のレーベルの中でも飛び抜けて危険でアーティスティックな香りが溢れているベルギーのPRR!PRR!からリリースされたコンピレーション・ヴァイナル。(間違えて二枚も買ってしまった。)今年、Mannequinから快作を発表しているベルギーの新生カルト・アイコン、Maoupa Mazzocchettiなんかも名を連ねるこのレーベルは勢いも衰えることなく、その最新作は驚くほど乱暴であまりにも良すぎた!前作のミクステもバツグンに良かった主催者のDJ CoquelinによるTough!、B-Ball Joints(ロウ・ジャック)を始め、多彩な(全く知らない)アーティストたちが名を連ねていた。FPS感覚のコラージュがあまりに痛快で大袈裟すぎるサンプリングセンス、インターネットの無限の奥行きがよ~く見える。視界は良好。断片的ながらミニマルに加工されたブレイクビートの応酬は随分と粗暴で凶悪。友達になるには怖すぎる連中だけれど、世代的には凄く近い感じがして、親和感もあるような…。自分がDJだったなら絶対毎回かけたいと心から思える一枚。ソールドアウト必死のレーベルだから見かけたら買うべし。加えてこのレーベルはデジタルをフリー配信しているのでぜひチェックしてくれ!

 

1. 該当なし

というのもデスキャブやチューンヤーズの参加したオノヨーコの最新作が前作ほどピンと来なかったり、スガシカオのおそらく最終アルバムになるであろうと言われた「THE LAST」も好きだけど、ナンバーワンだと主張するには少し違う気がした。だけど、スガシカオの最新作に至るまでのストーリーを思うと胸が熱くなるものがあって、余談という形で少し述べたい。人生で一番執拗に人から薦められたアーティストがスガシカオだった。その人から毎週のように数時間熱弁されていると聞かざるを得ないものだったけど、今では日本で一番好きなポップミュージシャンという位置付けまで来てしまった。日本語でファンクをする唯一の男、非常階段やハナタラシが好きで、ポジティヴパンクなんて聴いて、ノイズバンドを組んでいたやり切れない男、遅咲きの黒い魂、「ぼくらが二度と純粋を手に入れられなくても 夜空に光る黄金の月などなくても」「明日からぼくはちゃんとするよ 何ひとつできやしないのにしないのに」なんて曖昧な歌詞ばかり歌ってた男も、「何度だってやり直せばいい」と最新作で遂に歌うようになり、日本のシーンについて心から考え、地方のライブではちゃんと無名アーティストを前座に置いたりしっかりとインディの魂に根を張る漢になった。そうした物語が続いて、今の作品に至ったというのは美しく感じる人間の姿があった。作品を通して聞いて決して傑作と言える作品ではない。だけど、僕は病床に就く彼の友人へと捧げられたこの歌がとても刺さった。「許されるなら君の痛みを僕のレスポールで粉々にしたい」。スガシカオはダメダメな青年たちだけではなく、より多くの人へと寄り添えるような音楽を作り始めたに違いない。