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Gareth Dickson - Orwell Court (2016)

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Gareth Dickson(ガレス・ディックソン)はアンビエントフォークを得意とする英国・グラスゴーのSSW。フアナ・モリーナの作品にも参加し、坂本教授を始め、多くの著名作家を抱えるアンビエント系のレーベル「12k」やプリミティブな要素が感じられるようなタイプのフォークに強いカセットレーベル「Scissors Tail」などから作品を発表している期待の若手作家。陰と陽の二面性を持つ淡いヴォーカルと悠久の旋律を奏でるミニマルなアコースティックギターさばきで「現代のニック・ドレイク」とも称されています。ガレス・ディックソンは大学を留年することなく卒業、宇宙航空工学を学び、トランポリンチームにも所属していました。休日には彼のテニスコートでノームコアのTシャツを身にまとい、テニスに興じているそう。僕は昨年秋、アシッドフォークの名手ヴァシュティ・バニヤンとの来日公演でのデュエットでその姿を拝むことが出来たのですが、彼女の慈しみに満ちた音響空間を支えるように柔らかに揺れるキャンドルの火を絶やさなかった彼の微笑もまた暖かなものであったと記憶します。なんとも大学生のうちに貴重な経験が出来たものですね。

バンドキャンプのこちらはまだプリオーダー配信中なのだけど、再生してみると引き込まれていくようなノスタルジアの波に連れ去られてしまい、先行配信の二曲を何度も聴き返してしまいました。幽霊が現れるかのような漆黒の背景を背に苔の生い茂った小枝を抱えるジャケットから既に漂う哀愁。彼がヴィーガンなのも作風に影響しているのでしょうか。微細なフェチズムが個性として現れ、ムダを限りなく取り除いたミニマルスケールなアシッドフォークを送り届けてくれる。静けさはその本来の形でまだそこにあるようで、偶然と必然が並存している音楽における本来的な調和が「偶然であり必然である」という麗しいカオスを喚起しています。その精度とユニークさが彼の芸術的プロセスの中心にあり、彼の音楽に顕れる虚像は不確実性と曖昧さの霧に包まれていることを聴く人に意識させる。これは現代の古典主義の一形態であるとも言えるのではないでしょうか。

既に彼岸のラジオから流れ出す農村の風土と黄泉の景色に圧倒されそうな予感。作品のリリースは11/11、ポッキーの日です。楽しみ。