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Michal Wolski - La Mer (2016)

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閲覧ありがとうございます。今日は学祭期間ということで貴重な休みを満喫しているところ。(最近バイトであまりにも多忙すぎて……)知人の方が昼から遊びに来るのですが、それまでの時間を生産的な行為に捧げようと思って筆をとっています。

本日二つめの更新は、パララックスで見つけたポーランドの音響テクノです。森さんがちょうどいらっしゃったので今年のお薦めをお伺いさせていただいたところ、こちらを紹介していただきました。毎回あそこはハズレのない店ですが、またしてもいい買い物をしたものです。

さて、Michal Wolskiは、「SUPPLY」レーベルのサブレーベルにしてSOREN JAHAN主催の良質ミニマルテクノレーベル、「BLANK SLATE」などからも作品を発表する東欧のポーランドワルシャワ気鋭のダブテクノ・プロデューサー、「Where To Now?」で14年にカセットを発表したFischerleなんかも抱えるディープ・テクノレーベル「Minicromusic」レーベルを主催、そして音楽ジャーナリストでもあり、欧州アンダーグラウンドシーンのビッグイベントUnsound Festivalにも出演、mixcloudではラジオも配信するなど精力的に活動を繰り広げている今まさに旬なお方です。

情報の羅列ですみません……。

そんな彼が同国・ワルシャワのエクスペリメンタルテクノレーベル「RECOGNITION」より発表した作品が本作に当たります。

音楽的に形容するとすれば、ポストインダストリアルの流れを汲んだダブテクノ/ディープテクノであり、音響テクノと捉えるのが吉かと思います。アンビエンスとノイズの混沌とした共存の中、アブストラクトな音響を帯びた濃霧に吸い込まれていくミニマルなノイズビート。音をも動かす音響彫刻の動き、抽象絵画とも取れる「ラ・メール」(フランス語で海)を構成する静謐/内省/混沌/調和/分解という5つの拡張組成物が、これらの特別な瞬間を見事な立体音響として仕上げています。ヒプノティックで内向的な、ひたすら陰に沈んでいく京騒戯画はリスナーを鋭利な言葉で切りつけ、75分間収縮/拡大を繰り返す仰々しいサウンドスケープを見せつける。

同時に即音乱調の美学に基づいたある種普遍的なメッセージを刻んでいくようでもあります。そして、アルバムの一貫性の鍵は既存の音楽表現に依存していない。それはむしろイマジネイティヴな個性から産み落とされる巨大なスケール感と深淵へと沈みゆく内向の深度で具現化される。「ラ・メール」は全体的にヒストリックな音響体験でリスニングと聴覚を切り離した音響生態学の新しい分野における個人主義的な顕れなのではないかと感じました。

彼とこの音響彫刻の仕事との関係性は、純粋なものではなくひたすら自虐的でアイロニック。彼は意識的に複雑なアートワークを捉え、飽和から始まる芸術の爆発を足取りにサウンドデザインの最も暗い境地を模索しているかのよう。

バンドキャンプ、お手頃な値段なので未聴の方はぜひ手に取っていただきたい作品です。