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Emmanuelle Parrenin - Perelandra (2017)

多くの人がアシッドフォークを愛で続け、その歴史は50年以上に渡る。郷愁を誘うメロディラインと民族性とルーツの香る情緒性、音階だけで語らない素朴な世界観は未だに多くの人を魅了してやまない。高度に機械化された現代という時代でも、民族という逃れようのない顔が出る音楽だ。

今年は、僕は金が無く、レコードストアデイにレコード屋に行かないという個人的に異例の事態が起きていた。というのも先々週に風邪を引いてしまい、高熱で呼吸困難気味になった時に煙草を吸ったら息が出来なくなり、救急車で病院に搬送されるという異常な事態が発生した。病院代が直ぐには払えず、そのときの出費のために親から数万円を送金してもらったのだが、手に握った数万という金を前に衝動に耐え切れず、持ち金併せて全てレコードに使い込んでしまったのだ。そのせいで金が無い。

今年の日本のレコードストアデイでは、例年通りそんなに欲しいものは無かったが、Shunsuke Onoの初LPは欲しいと思った。明日からJet Setでネット販売されるらしいからそちらは買おうと思っている(Shunsuke Onoは、坂本慎太郎に見出されたキーボーディストで、いま若手で一番、黒い音楽を作っている人だ。)

海外のレコードストアデイの公式カタログを見ていると、Kaitlyn Aurelia Smithとの昨年のコラボレーションで近頃、インディ/エクスペリメンタル界隈にもその名が知れ渡ったシンセ女史、Suzanne Cianiの「Fish Music」(Finders Keepers)やThomas de Hartmannの「The Music of Gurdjieff / de Hartmann」(Light In The Attic)に始まり、そこそこディープな作品も名を連ねており、奥深い海外の音楽文化を感じるなーといった具合で、その中でも目を引いたものの一つがこちらだ。

この年間ベストを載せる為だけに作ったようなしょうもないブログなんかを読んでくれているマニアックなお友達ならご存知だと思うが、SOUFFLE CONTINUという、サイケやプログレ方面で名高いフランスのレコードレーベルにしてレコードショップからリリースされたフランス産アシッドフォーク未発表音源。

60年代から70年代に渡って活躍したフランスのシンガーソングライターで、2011年に復活を果たし、現在も活動中とのことである。こちらは彼女の名盤として、フランス産アシッドフォークの名盤として名高い「Maison Rose」に収録されなかった楽曲を中心に構成されたアルバム。ラーガ、エレクトロ・アコースティック、アンビエントなんかを感じさせるような音響に凝ったサウンドプロダクションで、バンドネオン(タンゴで使われる楽器)では、アルゼンチンの現役タンゴミュージシャン、Juan José Mosalini(ファン・ホセ・モサリーニ)、エレクトロ・アコースティック係でクセナキスに学んだBruno Menny(ブルーノ・メニー)、そして、 Hadouk Trioとして活動し、あのGongのメンバーでもあったDidier Malherbe(ディディエ・マレルブ)が参加している。

ソプラノ・サクソフォンやハーディ・ガーディー、フルート、ピアノ、スピネットが乱れ入り、世界の民族音楽ショーケースの様相。流れを淡々とわたるような秀逸な旋律とマスタリングもしっかりした澄んだ音響、やはり天性の才能ともいえる天上ヴォイスなその歌声も素晴らしい。決してパンチが強い作品ではないのだが、季節の変わり目には聴きたくなってしまうような艶やかな魔力がある。彼女の諸作も概ねアヴァンギャルドで実験的な要素が非常に目立つがこちらはそのアウトテイク的な側面も強く、純アシッドフォークというよりは、インストゥルメンタルな音響実験といったテイストが強く感じられる。

もちろん、企画モノなので、Emmanuelle Parrenin公式のリリースであり、Emmanuelle Parrenin本人とArchie Patterson(Agitation FreeやM.B.の作品にも文章を寄せている)によるライナーノーツ込みで4ページのブックレットがアート紙が付属の700枚限定。今のところ国内入荷は無いが、ディスクユニオンメディテーションズ、レコンキスタ辺りには入るのではないかと思う。バンドキャンプに試聴音源を上げるならデジタルを購入可能にしてほしかったところだが、アシッド~トラディショナル・フォーク好き必携の良盤だ。