Dave Phillips - mutations 4 & 5(2017)

フィールドレコーディングっていう音楽ほど古びない音楽は無いだろう。機材の進化が一番反映される音楽スタイルであり、時代ごとに変わるランドスケープそのものを音楽に起こすんだから。

このブログを読んでくれるような人には、説明不要だと思うが、Dave Phillipsは、アクショニズム(自身の身体を傷つけるほどに過激なパフォーマンス・アート)というムーブメントを象徴する人物だ。アクショニズムというのは言葉で説明するより、画像を見てもらった方が早いだろう。

カルト的な人気を誇る八〇年代に活躍したスイス産グラインドコアFear Of Godのヴォーカルとして活躍し、87年にソロでの活動を開始している他にも、グループとしては、「psycho-physical tests and trainings - 心理的身体的実験と探求」という命題を掲げるアウトサイダーアート集団、Schimpfluch-Gruppe(シンプフルク・グループ)での活動が一番有名だろう。89年から活躍するノイズ・グループ、Sudden Infantのメンバーとして現役で活躍するターンテーブリストJoke Lanzと現在大阪在住のアクショニストにして、スイス有数のノイズレーベル、Schimpfluch主催のRudolf Eb.erとその活動を共にしている。それについてはこのサイトに貴重な日本語情報が載っている。

特異な経緯を持つノイジシャンながら、やはりノイジシャンらしいことに現在もリリースは頻繁で、今年も把握出来る限り既に三作を発表している。今回紹介するのは、環境保護主義者でもある彼が稀に製作するフィールドレコーディング音源だ。

3CHF(日本円にして約340円)というのもお得な音源だ。熱帯性気圧や砂漠気候の場を中心に原生林や国立公園、アネクネメなどで採集した虫や蛙、鳥類、哺乳類などの鳴き声を用いている。これらの音源は、減速や60-98%程度の時間の伸長、逆再生を施したもので一切電子音による加工は為されていない純自然素材によるリチュアル・サウンド・アート。

2016年12月~2017年一月の録音。徹底してドローン状に仕立て上げられたレイヤーの隙間の無さが強烈な印象を叩きつけ続ける。湿度の高さと乾燥した空気感を見事に行き来するテクスチャーとムダが一切介在しないミニマルな音響空間の切迫感が非常に素晴らしい。有機的な素材から生命の躍動を奪わないように繊細かつ緻密な加工を施し、彼の思う深淵に寄せつつも、素朴なフィーリングを大切に扱う感覚的な音楽を作っている。昨年、自主リリースしていた「South Africa Recordings」の延長的なサウンドメイキングが光る名作ながら、本作にも彼のメッセージ性が深く込められており、「how would i hear/perceive the world if i were an insect (amphibian, avian etc)?」(もし自分が虫や両生類や鳥だったら、自分はどんな音楽を聴きたいか/どんな音楽に気付かされたいか)という問いに何を感じるかというのが本作の醍醐味だろう。ソレは、この作品に触れる人の思いに委ねられるだろう。あまり僕はここでは触れないことにする。

静寂なる音楽における空調の音の如く無機質なものへと変異していながらも、静かな躍動感に溢れる。しかし、音響ノイズ的な側面から、全面的に不穏さが漂っており、「South Africa Recordings」同様、Dave Phillipsの個性が余すことなく押し出されていて、通好みのテクスチャーが満遍なく発揮されている。フィールドレコーディング好きというよりは基本的にこのブログを読むような人はナード野郎にお薦めの作品だ。値段もお手頃だしね。音質も綺麗なフィールドレコーディングなのでCDでもリリースして欲しかったが、カセットもリリースされており、カセット版は、40部限定でモスクワのNazlo Recordsからリリースされているが、今のところdiscogsのマーケットプレイスでしか購入できないようだ。日本でもどこかで流通しないだろうか。