First half of 2017 : Best 50

時が過ぎるのも速いものであっという間に初夏を迎えてしまいました。足取りは遅いのに過行く時間だけは今までの倍速以上で進んでいるようです。14年から付け始めた年間/半期ベストもいよいよ四年目。自己満足とともに、微力ながら、自分が愛した音楽の魅力を少しでも多くの方へと広められたら幸いだなあと自分を誤魔化す所存です。デジタル中心に購入し、フィジカルの出費を抑え、アップルミュージックやSpotifyをフル活用した結果になっています。並びは好きな順ですが、どれも甲乙付け難い素晴らしい作品ばかりです。いつも通り同じレーベルからは一作まで(傘下は除く)今回も長いですが、ごゆっくりお付き合いください。

(アルバムタイトルをクリックすると音源リンクに飛びますが、閲覧が大変だと思いますので、新しいタブで開くことを推奨します。)

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50. Jaws - Object Dom (Hundebiss)

こういう音楽を聴きたくて、音楽を掘ろうと思い立つことは僕に限らずよくある事だと思う。引き延ばしたエレクトロニクスの歪みと加虐的なグリッチノイズの暴力が織り成す、サグ・レイヴ感触なマン・マシーン・ミュージック。ポスト・インダストリアル、ヒップホップ、ベースミュージックを音響実験的に解体/再構築したエクスペリメンタルの魔境。LAから鳴らされている音だというのが、意外性も感じさせる。前作が好きな人には間違いなくウケるし、やっぱりHundebissの審美眼は間違いないなと思わされる。

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49. BIZNAGA - Sentido del Espectáculo (Slovenly Recordings)

まんまセックスピストルズ…。スペインはマドリッドガレージ・ロックバンド。彼らはあくまでロックバンドであるが、スペイン語ピストルズやるとこんなにカッコいいのね。とにかくピストルズが好きなのかな?と邪推させられるのも無理はない。あまりにも似てるんだもの。全体的に分かり易くシンプルかつストレートに決めるパンキッシュなサウンドで繰り広げる日々の闘いについての讃美歌。この軽快なメロディと裏腹に彼らは、恐怖や嫌悪感といった古典的な問題について歌い、退屈や現代のコミュニケーションの欠如などについて、誰も実践しなかった方法で語りかけているそうだ。とにかくこのバンドを前にしたなら、考えるな、感じ取れ!というところに尽きるだろう。ロックは不滅。

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48. NOVI_SAD - Wound_Burner (Sub Rosa)

Sub Rosa、Touch脈のサウンド・アーティストにしてNovi_Sad新作。ニューヨークやスウェーデンのゴトランド、リオデジャネイロギリシアの田園地方で採取したというフィルレコ素材を元に、エレクトロニクスやソプラノ歌手のIrini Kyriakidouの声を取り入れて練り上げられた作品。終始弛緩しない展開で、張り詰めたアンビエンスを幽閉した無感情なサウンドスケープが幽玄な一作。中盤以降、雰囲気が神聖なものへとガラッと変わり、神を讃える祈りのようなソプラノボイスが挿入される瞬間はまさに尊いものがあって、最後の展開は、収穫祭のあと、閑散としたムードが漂う中世の東欧の街並みのような美しい静謐が設けられていて素晴らしい。今年聴いた極上のアンビエントのひとつ。

47. Sun Araw - The Saddle Of The Increate (Sun Ark)

昨年のニューエイジのレジェンド的鬼才Laraajiとのコラボもベストに選んだが、USを代表する酩酊野郎、Sun Arawの八枚目もぶっちぎりでテン年代ニューエイジ決めたプログレッシヴな仕上がりで最高!崩壊するアンビエント・スケープと天才的なサウンドデザイン、ダブとエレクトロを通過してニューエイジを作っている様は、食品まつりと繋がるところまでは分かった。どことなくポストパンク的で、リズムセクションの異様さは折り紙付き。スタイリッシュかつ偏執的で、ヘンテコを地で行くフリーク・サウンドは酔狂そのものといったところで、唯一無二の領域にいることは否定できない事実だろう。

46. Japan Blues - Sells His Record Collection (Japan Blues)

英国が誇る名レーベル、昨年は浅川マキのベスト盤(にして久々のヴァイナル化)も手掛けたHonest Jon'sのレジデントにして、誰よりも「和モノ」を知る掘り師、Howard Williamsによるプロジェクトの最新作。毎年来日する彼は、日本滞在時のフィールドレコーディングや任侠映画から歌謡曲雅楽などの日本の伝統的な音楽文化をミュージックコンクレートの観点からふんだんに取り込み、DJとしてのエポックメイキングな感性で海外の視点より再構築してきた。彼の膨大なコレクションによる音響素材で隙間なく構築されており、和太鼓などの日本的なビートも介することで非常に密度ある音楽に仕上がっている。日本人自身にしても普段の生活には馴染みの薄い伝統文化から「和」がコラージュミックスされたサウンドには、当の日本人にとっても異国情緒が付きまとう。個体から液体、そして気体へとテクスチャーを行き来する変幻自在の「和」の伝統、その恍惚とした音世界にじわじわと感性を侵食される風流のミュータント・エレクトロニクス。

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45. HOMESHAKE - Fresh Air (Sinderlyn)

二年前のJerry Paperの来日公演の際に大阪で目にした彼のアクトはほんのりと淡くて、今もうっすらと頭に残っている。あのときはサインも貰った。あれからまたしても月日が流れ、気付けばもうニューアルバムが出る頃で。クリーム状の彼の透明な音楽はとにかく"淡い"。モラトリアムの空白地帯に佇むようなその調べはひたすら甘く、目を閉じれば世界は朧げになっていく。チルウェイヴ、サイケデリック、ローファイの髄を尽くしたインディポップの真価ともいえる無類のサウンドスケープがここにある。

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44. Andrea Belfi - Ore (Float)

Umor Rexからカセットを出していたB/B/S/のバンド名義でその名を知ったイタリアのパーカッショニスト、Andrea Belfi。まさにネオクラウトなフェチズムを体現したようなエレクトロニクス+ドラムセット。バンドキャンプにもトップに貼られているが。PVがあまりにも鮮烈なので是非目を通して欲しい。ミニマルを極めると宇宙へ行くというのは本当だ。左右に回転するアンビエンスも非対称なドラムワークも全てが秀逸で文句のつけようがない。高校時代からの友達とバンドをやることになったが(という名目で遊びでセッションするだけだが)、このPVを見て、こんなエレクトロ・アコースティックやれたら最高だよなーと初心者同士で捕らぬ狸の皮算用をしていたのであった。

43. Palehound - A Place I'll Always Go (Polyvinyl)

このバンドとの出会いは大学一回生の頃、ペイブメントの"AT&T"をサークルのコピバンでコピーするときにたまたま参考にした動画まで遡る。この間の抜けたヴォーカル、肩の力の抜けたパーカッション、ヘロヘロな歌声でノリ出すと叫び始める意味不明なテンション。全てがカンペキで一時期この動画を狂ったように再生した。バンドキャンプで彼女たちのミニアルバムを買うためにお金を払ったのもこのバンドが初めてだ。それから三年後の今、彼女たちはPolyvinylからセカンドアルバムを出すほどに成長してもう僕は何と言えばいいのだろう。オルタナの完成形をここに見たかもしれない。

42. Visions Congo - Mulago Sound Studio (Discrepant)

フィールドレコーディングといえば、DiscrepantってくらいDiscrepantはよきレーベルなのだが、そこからまたとんでもないのが登場した。主催者のGonçalo F Cardosoによる別名義Visions Congoである。こちらは15年に半年間彼がアフリカを探検したときの素材を元にしていて、ウガンダの湖(恐らくヴィクトリア湖)やコンゴタンザニアやその歴史的都市ザンジバルを旅したときの記録が用いられている。シンセによってアンビエンスが添えられ、途轍もなく壮大なエキゾ・コンクレートに仕上がっている極上の冒険譚。個人的にこの順位は過小評価かもしれないが、時間をかけて消化していく事になりそうな大作。

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41. Kara-Lis Coverdale - Grafts (Boomkat Editions)

「Virgins」以降、Tim Heckerのバックでピアノを演奏し、教会ではオルガン奏者を務めるというカナダのシンセシスト、Kara-Lis Coverdaleの二年ぶりの最新作は、Boomkat Editionsから。Umor Rex、Sacred Phrasesからの前二作があまりにも素晴らしかっただけにもっと大きなレーベルから出して貰いたかったという本音もあるけども、彼女はアンダーグラウンドでやっていく選択をしたのだろう。しかしながら、最新作は22分にも渡る壮麗なコンテンポラリー・クラシカルとして機能し、ピアノの旋律が際立って美しい作風へと変化していて、より万人に開かれた音楽としても完成している。きめ細かい音の粒がアンビエンスを纏いモーダルなミニマリズムによって紡がれており、淡々とした進行にもフォークミュージックのエッセンス的な美しさが感じられ、聴く人を惹き付けるメディテーション・ミュージック。TouchやMegoといったレーベルからもいずれ登場してもおかしくないと思うのでこれからも注視したいアーテイストの一人である。

40. Dave Phillips - RISE (iDEAL Recordings)

Dave Phillipsは、元Fear Of God、アクショニズム(自身の身体を傷つけるほどに過激なパフォーマンス・アート)というムーブメントを象徴するスイスの人物で、以前一作記事にも書かせていただきました。実験作家によくある流れながら、この人も例に漏れず歳を取るごとに多作になって来ており、今年も既に三作を発表している。12年~15年のレコーディング音源で、カットアップやサウンドコラージュ、残響がホラー要素たっぷりと炸裂するコンクレート・ノイズ・エレクトロニクス。Pauline Oliverosの「Primordial / Lift」と併せて、人間の欲求と人間中心の世界観への傾向への危機感と「エキソビジズム」についての急激な差し迫った警告を伝えている。RabitとJohn Wieseの音楽が雑然として同居するような心地好い混乱と恐怖の感覚で、聴き手を取り巻く音世界が破壊衝動で満ち溢れている。危うい、恐らく世界のソレと同じくらいに。

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39. Day Wave - The Days We Had (Harvest) 

Soundcloudでメチャクチャバズっていたのをきっかけに出会ったファーストEPからずっと個人的にグッと来ている、オークランドを拠点のJackson Phillipsによるソロ・プロジェクト最新作。初のフルアルバムも、グッとくるわあ~…シンプルながら味のあるポップさ加減で、いい塩梅に仕上がった最良版ドリーム・ポップの真髄的存在。この甘ったるい感じが何より最高にいかすんだよね。今回、39位に留まってるけど、気分次第では十位以内に入ってもおかしくないくらい個人的にハマってる作品です。Carouselの活動も含め、これからが楽しみな逸材。

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38. Ssaliva - We Never Happened (Ekster) 

TCFやHieleといった先鋭的なアーティストが集うベルギーのEksterから、Cupp CaveことSsalivaの最新作。邦題にて「福音」と銘打たれた日本盤からももう二年が経つらしいじゃないか。アンビエンスが溶解するポスト・グリッチ感覚な立体電子音響。こういった音楽は、Seth Graham始め、Orange Milkの音楽をも彷彿する。きっとアンダーグラウンドは繋がっているのだ。エレクトロニカアンビエントニューエイジを横断したエクスペリメンタル美学が霊性漂う素晴らしい音楽に華を添えている。Ssalivaは、Disc MagazineJeromeといったポスト・インターネット時代のオンライン・アーカイブにもミックスを提供しているので是非聴いてみてほしい。

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37. ELEH + RICHARD CHARTIER - LINELEH I (LINE)

この二人が組むことがどのような化学反応を引き起こすかは衆目を集めたに違いない。増幅されるエレクトロニクスの数奇の運命にただただ白い息が零れる。この音楽を初めて聴いたときに抱いたのは、Eliane Radigueの「Trilogie De La Mort」を聴くような感覚に近い無二の感触だった。一時間にわたって繰り広げられる倍音アンビエント・ドローンは、ヒプノティックな質感と無機質で無感情な電子の波、そして「Trilogie De La Mort」のソレに近い攻撃的な一面がせめぎ合っていて、如何とも形容し難い。アンビエントに分類される音楽ながら、アンビエンスといえる要素は無く、ただただ排他的なテクスチャーが纏わりつく驚異のエクスペリメンタル・エレクトロニクス。ちなみにこの作品、Juno Downloadだとめっちゃ安く買えるのでおススメ。

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36. Elliott Sharp (with Mary Halvorson and Marc Ribot) - Err Guitar (Intakt)

メンバーのあまりの豪華さに食指が伸びた一枚。こうした界隈の音楽は去年頃から聴くようになりつつあったので、徐々にこっち方面へと趣味も向かっている途中だ。予定調和という言葉の似合わない不穏なインタープレイ(といっていいのか?)。曲は概して即興的で意味のあるような無いような。全員ギター奏者ということだが、やっぱりギターっていいなと思う。三重奏で奏でられると余計にじわじわと琴線に触れる。定位バリバリにドラッグレスで決めたサイケデリックインプロヴィゼーション傑作。

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35. Amanda Palmer & Edward Ka-Spel - I Can Spin A Rainbow  

デヴィッド・ボウイトリビュート・アルバムが大ヒットしたボストンのアーティスト、Amanda PalmerがThe Legendary Pink DotsのEdward Ka-Spelとコラボした夢のアルバム。クラウドファンディングを利用して製作されたらしい。深く心を抉るカスペルのボーカルがジワリと沁みるし、アマンダのハスキーな歌声もまた渋い。前衛的な要素は前面には出ていないが、ところどころに抽象的なサウンドデザインを感じる芸術性溢れるオルタナティヴ・バロック・ポップ。映像があって音楽があるような想像力を掻き立てる音楽だ。

 

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34. Uniform - Wake in Fright (Sacred Bones)

York Factory ComplaintのMichael Berdanと元The MenのBen Greenbergによるインダストリアル・ノイズ・パンク・ユニット。直球の音楽で勝負、とにかく熱量と破壊力で全てを叩き割る無慈悲な衝動が強烈な奴らの二年ぶりの新作。こういう音楽だったら誰でもいい気もして来るが、これを愛するバンドのメンバーである(あった)彼らがやっていることが重要。ブラストビートの如し強烈なリズムセクション、濃霧のように彼らを覆い隠すガビガビのノイズは照れ隠しなのか、否か。ズブズブと深みにハマるスクリームな一作だ。

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33. CVX - Zibaldone I of CVX (Laura Lies In)

Charles HaywardやBeatrice DillonともコラボしているRupert ClervauxことCVXの初アルバム。三章のポエトリーと二章のパーカッションをフィーチャーしたトラックによって構成される約16分にも及ぶ大曲が収められた作品で、即興ジャズの如く壮麗なリズムセクションの爆走から、静謐な音響空間を行き来するドローン状のパートまで非常に起伏に富んだ展開を見せる一枚。ピアノやサクソフォンまでフィーチャーし、練に練り上げられたアカデミックな仕上がりながら即興初心者でも窮屈しないポップさがある。それほどにイメージが強烈な印象を刻んでいくエレクトロアコースティック大作。

32. The Gerogerigegege – 燃えない腹 (Scrotum Records)

限定の国内流通盤を待たずにレーベルから直で通常盤(と知らずに)を買ってしまったゲロゲリゲゲゲの最新作は謎すぎるモンドミュージック。歌謡曲をサンプリングしたようなトラックをバックに繰り広げられる意味不明で異物感溢れるボーカルの反復はもはやノイズですらないし、ヴェイパーウェイヴよりも下劣だ(褒め言葉)。B面もやりたい放題のミニマル・キチガイ・ボイスパーカッションの応酬でもうメチャクチャ。少なくとも前作に感じられたスタイルの決まった格好良さや尖端音楽的な美学はない。しかし、これがゲロゲリゲゲゲの美学なのだ。

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31. Jonny Nash & Suzanne Kraft - Passive Aggressive (Melody As Truth)

現在のニューエイジ/バレアリック・シーンを代表する気鋭レーベル、Melody As Truthの二人組による初のコラボアルバム(来日時のコラボカセットを除く)。ジョニー・ナッシュの紡ぐアコースティック楽器とスザンヌ・クラフトのシンセが重厚に絡み合い、永久へと続く旋律を奏でる終末のアンビエント・スケープ。南国から黄泉へと渡る異質な情緒が香る中、ただただ恍惚として煌めくアンビエンスが道しるべだ。こんな優しい音楽があるのかと、正直耳を疑う。しかしこの夢のような音楽は事実だ。まるでそんな白昼夢のような音楽。

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30. Helm - Rawabet (Alter)

今年のThe Trilogy Tapesデビューは鮮烈だった英国地下ノイズ貴公子、Helm。こちらは15年のツアー中にエジプトでのライブを収めた作品であり、恐らく純新作という訳ではないのだけれどもこれは素晴らしい。無機質かつ抽象的なエフェクトを幾重にも施されたコンクレート・ノイズ/ダーク・インダストリアル。混沌としたサイケデリアを演出しつつも、内的宇宙の解放をも押し止めるような束縛的な空間演出が強烈なキッチュさを放ち、悪趣味(褒め言葉)とも言うべき世界観が広がっている。ノイズというものはこうでなければ、暇もなく音楽が迫る群像劇がここにあると言えよう。

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29. Vangelis Katsoulis - If Not Now When (Utopia Records)

名前に見覚えがある人もきっと多いだろう。この人こそ、あの「炎のランナー」で名高いギリシアプログレニューエイジのVangelis本人に他ならない。何と御年74という高齢ながら、近年の音楽にも劣らないバレアリック美溢れる極上の作品を仕上げている。アヴァンギャルドジャズやミニマルなどの要素を随所に散りばめた流麗なサウンドメイキング。湖面を白鳥が舞うような軽やかな足取りで色鮮やかに染め上げるニューエイジアンビエントの美学はMusic From Memoryの諸作にも通じるだろう。

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28. Kingdom - Tears in the Club (Fade To Mind) 

我らが、Fade To Mind主催者、Ezra Rubinの最新作。ジ・インターネットのSyd Tha Kidやリアーナやケンドリック・ラマーの楽曲にも参加しているSZAを起用している点にも野心が感じられる。前述したように実力のあるボーカルを据えつつも、アンダーグラウンド出自の近未来的なサンプリング素材によるエフェクトでみごとに調理し、タダでさえ妖艶な音の葉を中性的な宇宙観へと彩ったレフト・フィールドR&B。オンライン・アンダーグラウンド~クラブシーン、ポップミュージックをも広範に繋げる金字塔的作品だと思う。

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27. HERMANN NITSCH - Streichquartett In 4 Sätzen (Tochnit Aleph)

市民から愛されるウィーン・アクショニズム系統のパフォーマンス・アーティスト、ヘルマン・ニッチの最新作。今回は、四章に渡って展開される弦楽四重奏のための楽曲集。彼のパフォーマンスからはとても想像できないグリーフワーク的な霊性伴う美しさが秘められたアンビエント・クラシカル。レイヤー化されたミニマルな音楽がドローン状に連なり、バベルの塔に寄り添うが如く流麗に弧を描いてひたすら天上へと昇っていく。Tochnit Alephという崇高なるレーベルからリリースされるに相応しい大作。

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26. First Flush - Fuwa (Visage)

二年前の来日の際には、「Youは何しに日本へ?」にも映っていたということはファンの間ではおなじみなこのバンド、Eschoの弟分的レーベルなVisageから登場のデンマークコペンハーゲン産まれ。彼らの作品には、BIGLOVEで出会って以来、ずっと聞き続けてきたが、年輪を重ねるごとに北欧の大地の威風を纏いつつある彼らの成長が感じられる。アイスエイジへの愛溢れるポストパンクサウンドから、洗練を重ねエモーショナル・プログレッシヴ・オペラとでも言うべき今の独特の音楽観へと辿りついたのは感慨深い。こちらはアップルミュージックやSpotifyでも視聴可能です。

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25. Inventing Masks - 2nd (Error Broadcast)

最近元気で嬉しい我らがSenufo Editionsを率いるGiuseppe Ielasiの変名最新作。ビートミュージックを極めた先にある境地から放たれたエキセントリックなエレクトロニカといった感じで聴いてる側としても心地好さ抜群。ポリリズムを想起する偏執的なビートの設計や独特の間の美学が働くインストゥルメンタルアブストラクト・ヒップホップの新境地にいる。これだけ変異質のビートミュージックを聴くことも稀なんじゃないかな。とにかくソウルフルでドリーミーな抜けのよさに感服な傑作。

24. FEDERICO DURAND - La Niña Junco (12k)

琥珀の夜に独りでに奏で出される古琴の瞑想神秘のように彼方遠くの次元から届けられる音楽。今年も来日公演に非常に行きたかったこの人、昨年に引き続き新作には魅了された。ミニマルな作風から舵を切り、シンセひとつで作り上げた、創造性に溢れ、豊かなイマジネーションを育む夢幻の箱庭アンビエント。少ないマテリアルながら、深海的なコスモを抱かせる神憑った音響空間を構築しているのは驚異的としか言わざるを得ない。押し付けのないこのスケール感も快く、心疲れた全ての人を労る週末のサウンドスケープ

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23. Drab Majesty - The Demonstration (Dais)

ファーストを聞いたときの衝撃には何とも形容し難い終末感が渦巻いた。ダークウェイヴはいい意味でも悪い意味でも古びないが、彼らは違う気がした。得体の知れないこの外見に惹かれる人も多いだろうし、僕もその一人。Daisから再度登場した彼らの新作は今までのシンセポップ/ドリームポップを闇化粧で飾ったその音楽を貫きつつもどこか少し垢抜けて、より耳好く、よりポップになった感触がする。増幅するシンセの波に抱かれて、生暖かい瘴気を身に纏い、腐食する救済のアンビエンス、これぞダークウェイヴの真髄か。

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22. Oto Hiax - S/T (Editions Mego)

流れを渡るようなアンビエンスの波に包まれ、メルトダウンする電子音楽の神秘。危うくスルーするところだったこの作品、なんとメンバーにSeefeelのマーク・クリフォードがいる(!)Seefeelというと90年代のWarpRephlexの青春そのものとも言うべきまさしくエレクトロニカIDMの申し子といった伝説的存在ながら、ここでは、テン年代ニューエイジ的な切り口からもその音楽を広げている。やはり、強度の音楽と言えようか。内的宇宙をさ迷う繊細なフェチズムで、夢想するエスノアンビエントに仕上げたコズミック・エレクトロニック。

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21. Turinn - 18 1/2 Minute Gaps (Modern Love)

去年観たMillie & Andreaの鮮烈なアクトにしてもそうだが、Modern Loveという名のレーベルが行うキュレーションはやはり侮れない。その審美眼の鋭さに度肝を抜かれたのは、マンチェスターからの無名の刺客のこのデビュー作。強靭な楽曲の完成度と溢れかえるレイヴ感、摩擦熱でごった返す衝動的な音楽の破壊力とアッパーなグルーヴ、全てがカンペキな領域にあるインダストリアル・テクノ・アシッド。今からオウテカエイフェックス・ツインスクエアプッシャーといったレジェンド級のプロデューサー達にも引けを取らない存在が生まれてくるとしたら、彼は間違いなくその一角だろう。

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20. Zeitkratzer - Perform Songs From "Kraftwerk" And "Kraftwerk 2" (Karlrecords)

Lou Reed灰野敬二などといった著名作家とコラボして演奏したり、時には本人とともに楽曲をカヴァーするというユニークなコンセプトが生きるドイツの音楽集団、Zeitkratzer。今回は(さすがに本人らはいないが)クラフトワークの初期作の再解釈/再構築している。クラウトロックの持つダイナミズムそのままに肉感的に繰り出される名演の数々に感銘させられる一作。交感的肉体感覚から紡ぎ出された霊性伴うコズミック・ミュージックとしてのクラフトワークの「生身」を独自の視点から解剖したアヴァン・ジャズ・コスミッシェ・ムジーク。

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19. Félicia Atkinson - Hand In Hand (Shelter Press)

Lastfmの似ているアーティストをディグっていて出会ったあの頃が懐かしくなるフェリシアアトキンソンの二年ぶりニューアルバム。ASMRといった側面もあるだろうか、前衛精神に基づきながらも、非常にポップに仕上げられた歌モノとして完成している。フィルレコやフェミニズムが入り乱れる、奇妙なモジュラーサウンドはミニマルなビートとドローンを引き裂き、架空の世界が現実のモノとなっていく不気味な感覚に晒される。このレコードでは、「多様性と抽象性の共通の思考と聴取の瞬間」を意図しているようで、ディックのSF小説のように布のように軽くて、花のように繊細で、神秘的。他に類型が見つからない、時代性を超越したエクスペリメンタル・エレクトロニック。

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18. Michael Zerang and Spires That In The Sunset Rise - Illinois Glossolalia (Feeding Tube)

Fred Lonberg-HolmやPeter Brötzmann脈のパーカッショニスト、Michael Zerangによるリーダー作。Spires That In The Sunset Riseとは昨年の作品に続くコラボとなる。凄絶なレコメン系プログレインプロヴィゼーションで始まるかと思ったら、中盤以降、変態的なコンクレート・ジャズへと変化していく超展開があまりにも熱い。不規則に変化する音像や立体的な空間操作が非常に秀逸で、ひたすら不気味極まりない。Phil MintonやNurse With Wound、LAFMSの音楽が好きな人にも間違いなくおススメな一作。

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17. Second Woman - S​/​W (Spectrum Spools)

今年のIDMで最良の部類に入ることは間違いないだろう。Telefon Tel Avivの一角にして、Sons Of Magdaleneの一員としても活動するJoshua EustisとBelongのメンバー、Turk Dietrichによる新鋭ユニットのセカンド・アルバム。とにかくグリッチエレクトロニカ全盛期の強烈なフィーリングを以て奏でられる果てなき進化の一枚。フットワークやダブテクノ、エクスペリメンタルを咀嚼した先鋭的なビートが類を見ない美しさで構成されている立体電子音響。映像喚起的なサウンドスケープも秀逸で、今年一番聴き入った作品のひとつ。Mark FellとIDMをくっつけたような屈折した音響デザインは驚異的。

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16. Hauschka - What If (Temporary Residence Limited)

今まであまり食指が伸びなかったが、今作で久しぶりに聴いてみたら思いのほかツボでハマってしまった。自分の中でポスト・クラシカル再燃のときが来ているのかもしれない。プリペアド・ピアノを愛でるドイツ人ピアニスト、ハウシュカの最新作。今作ではネクストステージを目指してピアノら、プレイヤー・ピアノと呼ばれる自動ピアノが導入されている。曲は概して即興的で、非常にスリリング。偶然と必然が奏でるポスト・ミニマル・クラシカル。緻密に構築されたリズムパターンと伝統的なクラシックの幅を次元を抜け出したアグレッシブな曲展開、圧倒的な熱量のカオスに感嘆させられる一枚。

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15. Giuseppe Ielasi - 3 Pauses (Senufo Editions)

Senufo Editions復活という最高なニュースが舞い込んだ今年はBellowsも二作新作を出したり、前述したInventing Masksの新作などジュゼッペ周りでは朗報ばかりである。本作は主に14-16年にかけて製作された音源を収録した3枚組。「低音量での再生を推奨」というインフォメーション以外に情報は無い。主にフィールドレコーディングと様々な音響素材で構築されていて、非常に秀逸な実験音響作品に仕上がっている。この作品のレビューについてはこの記事に詳しい。情報量は少ないながらもアイデアに富んでいて、時間をかけて練り上げられただけの強度ある作品だ。

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14. The Caretaker - Everywhere At The End Of Time 2nd Stage (History Always Favours The Winners)

突如、新作を発表した往年の電子音楽作家、The Caretaker。三年間で六作を発表するとのことでアンビエント好きを沸きに沸かせたポスト・モダン・クラシカル降霊会。最近も、再発ラッシュで盛り上がってますが、この作品も良かったなあ(今後ニューリリース全作品ベストに載っけちゃったりして)。豊かなアンビエンスの奥に潜む悲しい記憶を辿るように、うっすら霞んだヒスノイズの谷を彷徨うダークアンビエント傑作。サンプリングする音楽のセンスが相変わらず良い。こういうアンティーク志向めちゃくちゃツボだから前作の使いまわしみたいなフレーズとか全く気にならないよ(?)

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13. Oded Tzur - Translator's Note (with Shai Maestro, Petros Klampanis & Ziv Ravitz) (Yellowbird)

ジャケを見ただけだったらスルーだったかもしれないけど、シャイ・マエストロ参加ということで目が留まったこの作品、全体的にダウンテンポながらタイトなグルーヴ、静寂の間と間にノる感じがグッときましたね。緻密に練り上げられながら、肩の力を抜いたセッションと、それでいて溢れんばかりの情報量に圧倒されます。しっとりとした質感に艶が乗っていて、スローライフな時間ながらも窮屈しない快楽のサウンドスケープ。随所随所に散りばめられたメロウな展開にも注目です。マエストロ同様、イスラエル出身ということですが、今後も中東のジャズシーンに注目したくなる一作です。

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12. Hisato Higuchi - 消え続けるエコー (Root Strata)

飾らない佇まい、繊細な息遣いで吐き出される素朴な言の葉が箱庭スケールで飛び交う奇跡のアシッドフォーク・サイケデリア。Root Strataの作品では、15年に発表されたSean McCannのアルバム以来の快作なんじゃないだろうか。限られた素材の中で、自然とアンティークな世界観を生み出しているのも驚異的で、これは相応に年輪を重ねた人でなければ作り上げられない境地から届けられた作品だと思う。プリミティヴに奏でるアコースティックギターの擦れる音に完敗。今年聴いた最高のフォーク・ミュージック。

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11. Fabian Almazan - Alcanza (Biophilia Records)

一昨年あたりからちょっとずつ聴き始めた現代ジャズ。その中でも金字塔と呼ばれることになるであろう一枚に今年は出会う事が出来た。絶妙な味付けのアレンジと予測不可能な展開、官能的なリズムセクションと優雅なボーカル、すべてがもうカンペキ。。。ダイナミックで目まぐるしい展開に素人ながら眩暈がします。なかなかこういうクラシカルな佇まいの作品では、個人的にツボにハマる作品になかなか出会えなかったけど、これはクリスチャン・スコットやエリザベス・シェパード並みにビビっときました。とにかくメンバー全員暑苦しいほどに弾きまくってます。強力な熱量で展開されるスリリングなインタープレイプログレッシヴな曲展開、何よりエスニックなボーカルにイチコロでしたね。

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10. Communions - Blue (Fat Possum Records)

二年待ったデビューアルバム、その感動は僕の語彙では容易には言葉に出来ない。澱みなくポップで、とめどなくモラトリアムで、限りなくエクスタティックな音楽の群像は、ひとえに彼らの「今」を同じ世代の僕達と共有する。ポストパンクほどひねくれてないものの、それも間違いなくバックボーンとして持ち合わせているし、80年代のインディ/オルタナパワーポップなんかも通過しているのは間違いない。とにかく彼らは「グッとくる」瞬間をこしらえることに長けている。歳も近い彼らの音楽は僕にとってモラトリアムの共有感そのものだ。これからもその愛おしい音楽を奏で続けて欲しい。

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9. Jérôme Noetinger · Anthony Pateras · Synergy Percussion - Beauty Will Be Amnesiac Or Will Not Be At All (Immediata) 

まず、このメンツが一堂に会したのは非常にユニークで、仏の老舗Metamkineレーベル/ディストリビューターを主催するJérôme Noetinger、Michael AskillによるSynergy Percussion、そして、このコラボ・プロジェクトImmediataを主催するAnthony Paterasによるトリオ編成になっている。Xenakisの”Pléïades”の管弦楽法を用いたというチベタン密教的打楽器三重奏で、二年の制作期間を費やしている。見事にレイヤー化されたポリリズムでミニマルな音響空間を練り上げて行進していく様はあまりにもフェティッシュで、聞く人をトリップへと誘う。二年も掛けて作り込まれたものなのでインプロという訳では無いが、即興好きにも堪らないものがあるでしょう。「COMPUMA - "Lateral Thinking」の画像検索結果

 8. COMPUMA - Lateral Thinking feat. KILLER-BONG (BLACK SMOKER)

ステロイド・デザート・ソングス、スマーフ男組での活動を経て、DJとして名を上げ、日本を代表するレコード・ショップ、Newtone Recordsのバイヤーとしても活躍するコンピューマ氏の最新ミックス。KILLER-BONGも参加していてぶち上がる。一部はGeorgiaやLutto Lentoといった気鋭アーティストを抱えるFTDのNTSでの番組内で流されたそうだ。バレアリック、ニューエイジ、モンド、ロウハウス、トライバルをも巻き込んだ強烈なミックスアンダーグラウンド~ストリートを繋ぐ強靭な感性を放っている。密林から大都会へとサーフするこの人並み外れたセンスは類を見ないだろう。今年も数々のミックスを(主にサウンドクラウドで)聴いたが、一つ頭抜けた大名作。

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7. Internazionale - The Pale and the Colourful (Posh Isolation)

誉れ高いとしか言いようがないこの美しさはいったい何なのか。それを確かめるべく我々は北欧の奥深くへと歩を進め続ける。そう、今や誰もが認めるデンマークコペンハーゲンの音楽シーンのアイコンことPosh Isolationより舞い降りた慈しみ深きアンビエント志士、Internazionale。ここでは省くが、彼も他の同国地下作家のようにまた多くの別名義を持っている。天ノ川に溢れる崇高なるアンビエンス、この音楽には星空が零れる瞬間がある。音楽を柱と見立て、己の人生を研鑽するその道をゆく人にならきっとこのあまりにも透明な音楽の素晴らしさは伝わるはずだ。間違いなくこの場所で彼の音楽は、"鼓動"している。恥ずかしながらまだまだ僕もコペンハーゲン贔屓ですね。

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6. Gaussian Curve - The Distance (Music From Memory) 

思い返せば、もう二月が経っているらしい。このGaussian Curveに参加しているイタリアのアンビエント紳士、Gigi Masinの来日公演は、僕の人生で行ったライブアクトの中でもダントツのベスト級な思い出として記憶している。やはり、ニューエイジ/バレアリックな音楽の源泉はいつの時代も枯れることはないみたいね。Jonny Nash、Young Marco、Gigi Masinというこの驚愕の超メンツによるプロダクションに間違いは無いようだ。アコースティックとエレクトロニクスが交差し、淡々と紡がれるアンビエント・スケープ。無駄を徹底して排除した滑らかなリズムセクション、悠々と奏でられる異国情緒の旋律が美しい。春の風に背中を押されて、航海する帆船の如く、麗しのアンビエンスをものとしている。Torn Hawkとか好きな人は間違いなくハマると思う。

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5. Burial - Subtemple (Hyperdub)

こんな秀逸すぎるミュージック・コンクレートを作っていないで早くアルバム出せよと言いたくなるわけですが、そんなことないです。さすがです。これで既に完成形。緻密に配置された音響素材と微かなヒスノイズ、残響をみごとに使い、気圧状のドローン・サウンドが練り上げるダーク・ミニマル・エレクトロニクス、"Subtemple"が圧倒的すぎてもう。照れ隠しに薄いハーシュノイズ幕を張り、絶妙な間と間の美学で静謐と秘境の情緒を発揮したチベタン密教的ダークアンビエント、"Beachfires"も素晴らしい佳曲。やっぱりこの人は天才ですね。こんなの聞かされたら新作が待ち遠しくてどうしようもなくなるってのを分かってほしいところだ。

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4. Visible Cloaks - Reassemblage (RVNG)

僕が挙げるまでもないかもしれないが、今年圧倒された素晴らしき作品のひとつ。これだけ流麗なアンビエンスを紡ぐアーテイストは類を見ないだろう。完全に前作とは次元が違う世界にいる(前作も秀逸だがこれの比ではない)。鳴らされる音の一つ一つがソレスタルという言葉を地で行く霊性を帯びている。ニューエイジが再評価される流れにある中で、この作品はその過渡期を代表するプロダクトに間違いない。Dip in The PoolのMiyako Kodaさんや昨年下半期のベストにも選んだMotion Graphics、Golden Retrieverの一員、Matt Carlsonが参加している点にも注目すべきだ。音世界に圧倒的静謐以外の要素が介さない、瑞々しく、艶やかで、無類のアンビエントと言えるプログレッシヴ・エレクトロニック。音があまりにも綺麗すぎることに違和感を持つ人もいるかもしれないとさえ思う。とにかく凝っている。カンペキ。まごうことなき、テン年代ニューエイジの金字塔的一作。

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3. The Necks - Unfold (Ideologic Organ)

堂々の三位です。ReR脈でレコメン系にも連なるが、ソレとは異質のアヴァンギャルドを実践してきたベテランによる世紀の傑作。昨年、酒游館で見た来日公演は人生で見たライブアクトで一番を争う。彼らが紡ぐ音楽の全てが約束された境地にて結実している。全ては予定調和の末の演奏、壮絶な生身のインプロヴィゼーションから繰り出される音楽の深淵たる演奏に一指も違える瞬間は無い。永久の時間に溶け込む無口なコントラバス、時の流れを練り歩くように異次元より立ち現れるピアノの音色、完全にアタマのぶっ飛んだフリーク具合のパーカッション、すべての演奏が全く違ったベクトルで動きながらも、その営みが重なる瞬間には微塵たりとも違和感を感じない。即興的ながらも全てが計算され尽くした珠玉の演奏。まさにこれこそが音楽の頂点に立つ者たちの佇まいといったところか、もうあっぱれとだけ言えれば満足だ。

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2. Arto Lindsay - Cuidado Madame (Northern Spy)

堂々の二位です。この圧倒的な存在を前にして紹介は要らないだろうけど、コイツ、完全にLAビートとか現代ジャズとか通過した遥か先にいるなと確信したのがこの一枚。この鮮烈なサウンドスケープを前にしてノーウェイヴという言葉さえもはや陳腐に聞こえるほどの斬新な音楽。甘い歌声と叙情性、あまりにもディープなリズムセクション。とにかく彼は宇宙を目指したに違いないそのアヴァンギャルドは2020年になってようやく理解されるだろう。そんな鮮烈なフィーリングに圧倒されるばかりだ。なんといっても滲み出ているのが、彼の愛するブラジル音楽のエッセンスだろうか。ソレも何と説明すればよいか分からないほどハイブリッドに洗練されていて、つかみどころが無さ過ぎる、消化不良だ。参加している面々を見ればその異質さもどことなく「はーん」って感じでは分かるが、僕にはこの音楽を語りかねるわ。ただ、「ヤバイ」ってことだけは身を以って感じられる、尖端とか前衛とかの境地を脱した音楽の境地がここにある。

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1. 坂本龍一 - async (Milan)

堂々の一位です。リアルタイムで教授の作品を聴くのは初めての体験だ。ひと言でいえば、圧倒的な静謐の美学で作り上げた電子音楽の為せる最高の業。これだけの作品を出されてしまったら、盛大な拍手を送る以外に何をしろというのだろう。この鮮烈な美の収束で、ECMやTouch、Raster-Noton、このような稀代のレーベル達が繰り広げてきた音楽の歴史が一手に繋がれてしまった。そんな事件だ。クラシック、アンビエント、ドローン、宗教音楽、現代音楽、コラージュミュージック、そういった要素を余すことなく取り込み、最高純度まで高めて吐き出した。「非同期的」な音楽を作りたいというのがこの作品のテーマらしいが、作品への理解にかかる時間、流行との対比、音楽性の深淵たる諸要素を加味しても非常に孤高で「非同期的」な隔絶された何かを残している。「映像喚起力の強い音響作品である」というテーマ、ソレを表現するかの如く、この作品はひたすら孤独に感じられる。孤独というスロースピードな時間の中で刻まれる個々の思いはまさしく無類に、ひたすら耽美的で、尊いものとなるだろう。