NKC - Tincture (2017)

Post-Internet、Post-Everything、混沌とした概念の輪が火を噴き、ベースミュージックを取り巻く環境はダブステップのソレよりも遥かにディープになりつつある。Soundcloud上で名を上げたオンライン・アンダーグラウンドのプロデューサーがクラブシーンへと殴りこんでいくことは徐々に増えてきた。Eternal Dragonz、PTP、NAAFI、Gang Fatale...小さなHyperdubたちが織りなすビートの渦は徐々に大きくなっていき、シーンが共振し合って新たなシーンが誕生していくのが垣間見えてくる。UKのHer Recordsはその先陣を切る存在だと言えよう。Sudanim、MM、CYPHRなどのクルーが運営するアーティスト・コレクティブのHerは、2013年冬の登場を皮切りにUKのみならず世界中のベースミュージック・シーンのトレンドに大きく影響を及ぼしてきた。先に挙げたレーベルを始め、MixpakやFade To Mindなど、革新的なレーベルもその色を確立し始めたのはこの時期だ。筆者はHer Recordsの第二弾リリースのSudanimをきっかけにこのレーベルを知ることになったが、当時一端のロック好きとしてはその衝撃は大きくて形容し難いものを感じた。

NKCは昨年のEP「Hague Basement」での衝撃的なデビューと共に、RinseFMやRadar Radioといった配信番組にチャンネルを持っていたEven the Strongというウェアハウス・パーティーをスタートさせ、DJ JMやTash LC、Lockhartといった新鋭アーティストを発掘してきた。彼はクルーとの間で「ハードドラム」というジャンルを確立させ、UK Funkyを思い起こさせるメロディックな要素を主に彷彿とさせるこのサウンドに重点を置いている。テンプレートの躍動感から飛び出したような彼の音楽は非常に先鋭的で新しい音楽に触れる快感に於いてはこの上ないものを持っている。驚くほど滅茶苦茶にスライスしたテクノと壊れたリズムセクションはこの上なく刺激的でこの音楽に触れるあらゆるリスナーを魅了するに違いない。いずれあるかないかは別としてもだが、日本でそのライブを目撃出来る日の到来が楽しみすぎる要注目の新鋭アーティストだ。