CARLA DAL FORNO - The Garden

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本格的に音楽を掘り始めてから、不作だったという年が無い気がします。もちろん今年も豊作だった。エクスペリメンタルに関しては(下半期は)上半期ほどではないものの、OPNのサントラ始め、Kaitlyn Aurelia SmithやAriel Pink、Hacoさん、Elodieなど、かなりのクオリティの作品に出会えています。今回紹介するのはいわゆる「アルバムだったら最高だったのに!」というやつ。

さて、ドミニク・フェルノーのPrurientやVatican Shadow、Lustmord、ホワイトハウスのWilliam Bennetによるカット・ハンズ、ノクターミナル・エミッションズのCaroline Kといった古株から、RaimeにSecret Boyfriend、NAAAHHHといったクオリティーに折り紙付きの新鋭まで発掘してきた名レーベル、Blackest Ever Black。今年も目が離せないこのレーベルですが、昨年デビューしたこの女性歌手も要注目なのです。

CS + KremeのメンバーでもあるSam Karmelと、自身もソロ活動で同レーベルから作品を発表しているTarquin Manekと共にオーストラリアでF Ingersを結成していた現在ベルリン拠点の女性シンガーソングライター、Carla dal Forno。昨年もここからアルバムを発表し、日本でもメディテーションズやロスアプソンなどでバズっていたようですが、今年もミニアルバムを出してくれました。

Nicoを思わせてくれた昨年のアルバムの壮大なサウンドを保ちながら、創造的に進化させた新機軸のベッドルーム・ポップ。ベルリンに移住したのが大きかったのか、本作はなんとEinsturzende Neubautenが1996年に発表した作品へのトリビュート。歌声に暖かさと親密さがありながらも、冷静な目線で歌われていくサイケデリックな世界観の"We Shouldn’t Have To Wait"は呆然とした夢想のようでありながらも、力強く、宿命的なドローンロックに仕上がっています。二曲目、"Clusters"は、Stereolab、Saint Etienneと続いてきたエレクトロニック・ポップのファンタジックな伝統を受け継いだ幻想マーチ。夢の中で何かを追いかけるような空虚な幻想感、消えてはまた現れるかのような薄っぺらいリズムマシンの紡ぐビート、浮遊感のあるシンセの音色が上の方でじわじわと耳を締め付け、独特の奇妙なサウンドに釘付けにされてしまう。この楽曲は、ナショナルジオグラフィックの記事のページから歌詞が抜き取られ、並べ替えられたのだとか。どこか乱暴でぎこちないドラムビートが支える"Make Up Talk"も昨年メルボルンで書かれたという佳曲。緊迫した音世界が広がっていくようなんではあるんですが、なんというかこのやる気のなさがいいですね。そして、クライマックスのタイトルトラック、"The Garden"、この曲でノイバウテンへのトリビュートが為されているようです。まさしくノイバウテンの「Silence Is Sexy」を彷彿させられるような空間的で緊張感のあるサウンド。庭園が意味するものは美しさなのか、何なのか、決して雄弁ではない語りが雄弁にサイケデリックな世界へと聴き手を導く夢見心地のリチュアル・フォーク。ポストパンクやローファイの音楽がバックグラウンドにあるからなのか、全体を通して、いい意味での気だるさと曖昧さに支配されていて、良い聞き心地です。次作への予告編といった感じなのか、これはまた次のアルバムも楽しみにさせられますね。