Grayson Gilmour - Red Bull Music Academy Library Series, Vol. 1

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ライブラリー・ミュージックとは、ラジオやテレビ番組、CMや映画などで使われるあまり一般流通しない音楽のことを指します。ポップスからジャズ、クラシック、ワールドミュージック、実験的なものまで極めて幅広いジャンル。テレビや映画のSEや効果音にまでもライブラリーミュージックが使われています。八万曲ものトラックを12のレーベルからリリースしてきたDe WolfeファミリーやフランスのRoger Roger、イングランドのBrian Bennett、イタリアのEgisto Macchi始め、多くの名もなき作家達が時代を超えて広範に活躍しながらも、産業の歴史に埋もれてきたのです。その歴史は古く、第一次大戦前から多くの作家が活躍してきましたが、ライブラリーミュージックという言葉自体がマイナーで、特に日本ではなかなか認知されません。今やあらゆる産業に欠かせない立ち位置の世界であり、もちろん、今日にもこうしたフィールドで活躍する作家は存在します。

今回紹介するのは、Yosi Horikawaともフィーチャリングしているニュージーランドのプロデューサー兼パフォーマー、映像作家のグレイソン・ギルモア。 インディの名門Flying Nunからの諸作を始め、P-Vineからも日本盤がリリースされていましたが、独自の審美眼で気鋭アーティストを発掘する音楽ラジオやレクチャー番組でもおなじみの、あのRed BullのレーベルであるRed Bull Media House GmbHのライブラリーミュージック・シリーズから登場することとなりました。グレイソン・ギルモアは、Kirstin Marcon監督の「The Most Fun You Can Have Dying」のサントラを担当し、2012年のニュージーランド・フィルム・アワードで「Best Score」を獲得しており、レイプ被害に遭った女性を支援する団体、Rape Crisis NZのために2015年に制作した「Consent (OST)」(name your price)では、APRA Silver Scrollsから"Best Original Music"と称賛されています。

この作品にはあまり反映されていませんが、そのサウンドはポストパンクに影響を受けているそうで、今作では、同じく映像作家でXosarの夫のTorn Hawkも彷彿しますね(トーン・ホークのサウンドもギルモアと同じくミニマリズムクラウトロック的な音世界です)。郷愁的で煌びやかなアンビエンスが豊穣に実っていて、FenneszやEmeraldsの音楽とも通じるところがあります。非常に暖かく、緊迫しながらも艶のあるサウンド、やや情熱的で抒情的ではありますが、いちいちアンビエント好きのツボを突いてくるモダン・クラシカル風味のバロック・ポップ。ラスト曲の"Thalamus"では、ブリストルアンビエント・ドローン作家、Paul Jebanasamがリミックスを担当しており、深呼吸を繰り返すような残響的なトラックが秀逸です。わずか19分とあっという間な作品ながら、凝縮された音空間が広がっていてつい何回もリピートしてしまいますね。アルバムだったらなあという思いもありますが、今年であった作品の中では上半期併せてもかなり秀逸な部類に入るかも。クラウトからミニマル、アンビエントニューエイジ好きにはマストです。