Second half of 2017 : Best 50

今年は音楽を聴き始めてから十年という節目を迎える年でした。だからと言って、特に何か変わったということも無いですが、春ごろから休学していたので、その有り余る暇を使って、精力的に音楽を聴いたり掘ったり(とはいえ例年通りですが)、特にこるすとれいんすさんとのニューエイジ・ミュージック・ディスクガイドを出したことが大きかったでしょうか。もうあって当たり前のものとなったアップルミュージックやSpotifyを使って、さらにはバンドキャンプやBoomkatで音楽を買い漁りましたが、例年よりデジタルが増えた気がします。その分、上半期と下半期に分けられるほど聴く量が増えましたが、今年は質の面でも高められたかなと思っています。それでは、長いですが、最後までお読みいただければ幸いです。(毎回同様各レーベルごとに一作ずつです。アルバムタイトルをクリックすると音源に飛びます。右クリック&PC閲覧推奨。) 

50. Sally Dige - Holding On (DKA Records / AVANT! Records)

バンドキャンプで初めて注文したカセットのひとつを出していたレーベルとして思い出深いDKA RecordsからSally Digeの二年ぶりのアルバム。埃っぽさはなく、瑞々しいシンセの音色、艶やかなミニマルウェイヴ・サウンドを前作よりも洗練されたタッチでトランスする重厚なシンセ・ポップに仕上がっています。八十年代のシンセポップには無かった神々しさみたいなものが神秘的に華開いた一作。肉体的な感覚がバツグンにいかしてます。

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49. Li Jianhong - Lonely Lodger (Concrete)

惜しくも今年この世を去った生悦住英夫氏の運営したPSF Recordsにも在籍し、中国を代表するハーシュノイズ・スター、Torturing Nurseともスプリットを発表している杭州市のアヴァンギャルド・ミュージシャン、李剑鸿の最新作にして、二枚組と気合いの入った一作。微かな音が増幅を繰り返し、ノイズ~即興演奏の妙を見せつける無機質なテクスチャーのなか、徐々にエクストリームな実験が展開していく。非常に繊細な表現が勝負な演奏ながらも弛緩しない音世界、細微な音の変化が見逃せない逸品です。

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48. Obsequies - Organn (Knives)

Kuedoのレーベル、Knivesからの新人、Obsequiesが強烈でした。インダストリアル調のモノクロのジャケットデザイン。愛と二元性について描かれたというこのアルバムは、フランスの詩人・ロートレアモン伯爵の詩集「マルドロールの歌」からインスパイアされています。ヴィジュアル面では、フランスのミックスメディア・アーティスト、トマス・ハウザーの洗礼を受けており、シュールレアリスムへの逆行を意識しているとのことです。ポスト・インターネットからベースミュージックの深淵へと注がれるこのバイオレンスな音楽は確かな審美眼で今アンダーグラウンドからインディペンデントなミュージック・シーンへと押し届けられようとしています。

47. MHYSA - fantasii (Halcyon Veil)

Chino AmobiやKamixlo、Angel-Hoらと並んでポスト・インターネット~ポスト・クラブの文脈で活躍するSCRAAATCHのメンバー、MHYSAのソロ最新作。社会から隔絶される黒人女性の希望、夢、インスピレーション、そして欲望といったものを歌い上げているとのことです。揺れ動く現代の言葉を揺さぶって、訴えかけるかのように表現し、彼女の話した、歌った、サンプリングしたボーカルが強調されています。賛美歌というよりは労働歌のようなものか、胸を締め付ける哀愁にやられます。バンドキャンプではなんとname your priceになっているので是非聴いてみてください。

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46. John Carroll Kirby - Travel (Outside Insight)

Blood Orangeのコラボレーターでもあり、あのSolangeの「A Seat At The Table」にも数曲参加しているロスの新鋭、John Carroll Kirbyのデビュー作。東京で構想され、ベリーズのラマニで書かれたKirbyの楽曲は、シンセとリズムの多元宇宙論、そして感嘆のアトモスフィアが香っています。まるで、Suzanne Kraftと細野さんの音楽を足して、ジョン・ハッセルの「Fourth World」のタッチで作ったような壮麗たる音楽の響き。同国の気鋭アーティスト、Kaitlyn Aurelia Smithの音楽ともどこか通じる部分も。あまり話題になっていませんが、今年の下半期で最も美しいエキゾ音楽のひとつです。

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45. NKC - Tincture (Her Records)

Eternal Dragonz、PTP、NAAFI、Gang Fatale...小さなHyperdubたちが織りなすビートの渦は徐々に大きくなっていき、シーンが共振し合って新たなシーンが誕生していくのが垣間見えてくる。UKのHer Recordsはその先陣を切る存在だと言えるでしょう。NKCはクルーとの間で「ハードドラム」というジャンルを確立させ、UK Funkyを思い起こさせるメロディックな要素を主に彷彿とさせるこのサウンドに重点を置いています。テンプレートの躍動感から飛び出したような彼の音楽は非常に先鋭的で新しい音楽に触れる快感に於いてはこの上ないものを持っている。壊れたリズムセクションと、滅茶苦茶にスライスしたテクノが見せる新時代の可能性、要チェックです。

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44. Obediencia - Erosión LP (LA VIDA ES UN MUS DISCOS)

全くハズレを出さないこのレーベル、今年話題になったHaramがピンと来なかった中、こっちはカンペキにやられてしまいました。スペイン・マドリードからは、女性ボーカルによる三人組パンク・バンド、Obediencia。メランコリックで湿った響きのコーラス、パワフルなボーカル・メロディー、速い動きのマシニスティックなドラム、ビートの効いたギター・ワークの全てでパンチラインキメてます。パンクとかハードコアとか多分本質的に好きなんですけど、ちゃんとディグらないとなあとこれで痛感しました。

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43. Angel 1 - Terra Nova (Constellation Tatsu)

Exo Tapes、 Beer On The Rug、1080pと地下レーベルの代表格を渡り歩いてきたAngel 1。その久々の最新作が登場です。アンビエントからニューエイジ、ヴェイパーウェイヴ、レフトフィールドをも飲み込んだ貪欲な音楽性と天才的なソングライティングで届けるコズミック・サウンドスケープ。トライバルなビートが導くようにアンビエントの密林へと潜り込むミステリアスなヴェールに包まれた作品。もし、今は亡き名レーベル、Hippos In Tanksが今も続いていたら間違いなく登場していたでしょう。

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42. Shuta Hiraki - Unicursal (Kyou Records)

ツイッターで長い付き合いのフォロワーで一緒にThe Necksを見に行った仲のよろすずさんが遂にアルバムを出すとなって買わざるを得ませんでした。ファーストアルバムというには高すぎる完成度。Eliane Radigueの「Trilogie De La Mort」やElehの音楽を彷彿する微音ドローン・エレクトロニクス。個人的に三曲目の「Wound」はドツボ。変遷していくサウンドスケープの密度がその強度を物語っています。なんというか僕が好きなことを全部やってくれているような感じがして、愛着の湧く作品です。初回特典で付属したミックスも秀逸なので皆さんもあるうちに買ってみてください。

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41. Vanity Productions - Only The Grains of Love Remain (Posh Isolation)

下半期のPosh Isolationだとこれが一番でしょうか。まるで昔々の音楽、そして現代音楽のような、アーティスティックな威厳と祝福された北欧の大地の神聖さを体現したかのような、そう、今のコペンハーゲンの音楽シーンの香り。地味な音楽ながら、ダイナミズムを伴いながら、徐々に変遷し、深遠たる黄泉の音楽を見せつける。精緻で無残なドローン、そして、退廃と耽美の合間の幽玄な音楽。それはまさに母体回帰を思わせる温かな感情が伴うオーセンティック・サウンド。

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40. Tyshawn Sorey - Verisimilitude (Pi Recordings)

タイムラインのジャズファンたちが何度も名前を出してるのを見て、やはり、無視するわけにはいかなかったマルチ奏者、Tyshawn Soreyの気合の一発。僕自身もフリージャズを聴くようになってから、Pi Recordingsのカタログはチェックしてきましたが、さすがのレコーディング、外せない一枚でした。モートン・フェルドマンクセナキスドビュッシーなどを意識しているらしく、現代音楽の抽象性も垣間見える作品。複雑に入り込んだ迷宮の中、真理を探究するような真摯な演奏はじわじわと体に染み込み、眼前で向き合わさせられてしまう。今年はあまりジャズの作品を多く聞けたわけではないので来年はしっかりと聴取していきたいと思います。

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39.Trailer Trash Tracys - Althaea (Double Six Recordings)

最近、あまりインディを聴けていないなと反省しつつも、今年もちゃんとイイのに出会えました!The XX のオリヴァー・シムもフェイヴァリットにあげる、ロンドンのデュオ、Trailer Trash Tracys。どこか昔の日本の香りがして好きだなと思っていたら、日本の80年代のトロピカル・ミュージックやフィリピンの祝祭音楽、ラテンのリズムに影響を受けているということでなるほどと合点がいった。耽美的でエキゾティックなサウンドの中にノスタルジアが息づいていて、聴くたびに心洗われる秀逸な楽曲たちに圧倒される。ピッチフォークとか全然見てませんが、やっぱり見ないといけないのかなあ。

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38. Yüksen Buyers House - Out of the Blue (Less+ Project.)

DYGLやYkiki Beat、Tawingsといった東京インディの流れにイマイチ乗れない僕でもビビッと来るのちゃんといました!エレクトロニカとインディポップが絶妙に気持ちいいラインで交差した近未来的なサウンドデザイン。テン年代以降の日本のバンドサウンドについていけない僕としてもこういうスイートスポットの存在はやはり愛おしい。爽やかなだけじゃなくて、少しウェットな部分があるのも僕的には好ポイントなのかな。やっぱりバンドっていいなと思います。

37. Greg Fox - The Gradual Progression (RVNG)

Zsのドラマーとしても活躍し、今年初めの来日も記憶に新しい先鋭アーティスト、グレッグ・フォックスの最新作。マス・メタルがルーツにあるという異形のバックボーンで奏でるエクスペリメンタル・フリーク・ジャズサウンド。凡百の肉体的な音楽には終わらないこのエッジの効いた音楽というのは、NYエクスペリメンタルの聖地、RVNGから出てくるというのも十分頷ける先進性を兼ね備えています。JTNC文脈のリスナーから音響派エレクトロニカのリスナーをも巻き込んだ一大事件だと思います。

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36. Visionist - Value (Big Dada)

アダム・ハーパーが2013年に提唱した「ディストロイド」という言葉も古び、アルカ以降の音楽がなんなのかわからなくなっている現在にまたしても疑問を投げかけようかのようにしてVisionistが帰ってきた。この二年間は、彼とPANが共同で運営するCodesレーベルの作品からKamixloやSKY H1が出てきたりとオンライン・アンダーグラウンド~ポスト・インターネット以降の文脈でも外せない時期でしたが、ソレを飲み込むかのようにして、新世代の音楽の奥底へと切り込んだ一作。ミュータント・ベース~ポスト・クラブと呼ばれる音楽をアップデートし、より鋭いエッジで畳みかけた強烈な作品。現在進行形の音楽の最先端を追いたい人には是非チェックしてほしいサウンドです。

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35. Arovane & Hior Chronik - Into my own (ASIP)

あんまり最近はモダン・クラシカルと呼ばれるものを好んで聴いたりはしないんですがこの美しさにはやられてしまいました。ドイツのアンビエントIDMプロデューサー、Arovaneと、Hior Chronikによるコラボレーション・アルバム。フィルレコ素材をふんだんに用いた美麗アンビエント・クラシカル。まるでHeliosを初めて聞いたときのようなあの感覚が取り戻される感じがする。僕のいる鳥取でもいま雪が降っている真っ最中ですが、何もかもが透き通るこの季節にピッタリな情景的サウンドがじわじわと心に沁みます。今この季節こそ、手に取ってみて欲しい果てしなく美しい一枚です。

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34. Toiret Status - Nyoi Plunger (Noumenal Loom)

これほどまで外行きを楽しくさせる音楽に未だかつて僕らは出会ったことがあるでしょうか。山口出身の気鋭アーティスト、Toiret Statusの気合のセカンドアルバム。この人はサンクラで一曲目を発表したときからずっと追いかけてきたので、アルバムを出すたびに興奮させられてしまいます。Orange Milkの音楽になんともピッタリな遊び心、そして、デスクトップの奥行き深さに溢れた未知のサウンド。もう既にGiant Clawと対を為す存在まで成長したのではないでしょうか。ヴァイナルを出す未来が楽しみすぎてなりません。

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33. Riccardo Sinigaglia, Trio Cavalazzi - Acustica < > Elettrica (Alma De Nieto)

ジジマシンやロベルト・ムスチの再発に始まり、ここ最近はイタリアの地下シーンにずっとハマっているんですが、まず、その最深層を代表するアーティストとして外せないのが、現在も活躍中のこのリッカルド・シニガリア。今年はイタリア地下に専心する新鋭レーベル、Soaveからの再発も話題になったばかりです。今回は、コンテンポラリー系のCavalazzi三兄弟と共演した最新作。ステレオタイプなイタリア的情緒というよりは、クラシック音楽の拡張性に切り込んだような側面が感じられます。三兄弟のクラシカルな演奏に乗せて、シニガリアがエレクトロニクスで味付けしていく感じ。元々、クラシック的な表現に長けた彼の深い部分へと潜り込んでいける良作です。

32. Giant Claw - Soft Channel (Orange Milk Records)

さすが、Orange Milkの主催者、遊び心満点のテン年代ニューエイジアンビエントを展開してくれています。まるでおもちゃの楽隊のようなファンシーな音色たちが縦横無尽にオーケストレーションされ、情感豊かな旋律が旋風のように舞い上がっていく。ジャイアント・クロウの本質は変わることなく、より深いゾーンへと向かって探求を極めようとしている姿勢が伝わってきます。聴いていて退屈しない、興奮の連続です。

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31. Kassel Jaeger - Aster (Editions Mego)

カッセル・イェーガーの三年ぶりの堂々のソロアルバム。リアルタイムでこの人を初めて聞いたのは、二年前のShelter Pressと昨年のUnfathomlessからの作品くらいだったので多くは語れないのですが、これほどまでに強度の強い現行のエレクトロ・アコースティックを聴いたのは久しぶりだなという感触。ドローンやアンビエント、エレクトロニクスが効果的に用いられ、ここに無為の時間が存在しない。漂流する無意識や自我の深層を切り取ったような人間の本質的なサウンドは、鋭利なナイフで眼球を切りつけられるかのように脳裏に刻まれる。下半期のMegoでは一番しっくりきた作品。

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30. D​.​K. / S​.​K. - D​.​K. / S​.​K. (Melody As Truth)

これぞ、泣く子も黙る神秘的瞑想ニューエイジアンビエント。Suzanne Kraftがまさかのコラボレーションで選んだ相手は、Antinoteの看板プロデューサー、D.K.でした。深いリヴァーヴが心の奥底へと舞い込み、豊かなアンビエンスと反響するシンセの音色で静かに花を添えるディープ・エレクトロニカ・サウンド。白昼夢で幻想郷に迷い込んだかのような優雅なメロディに一発でもっていかれます。テン年代アンビエント史に燦然と輝く、Melody As Truthというレーベルの美学が詰め込まれたような逸品です。

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29. The Gamelan of the Walking Warriors - Gamelan Beleganjur and the Music of the Ngaben Funerary Ritual in Bali (Akuphone)

Sublime Frequenciesの企画編集も手掛けるゴング・ミュージックの名手、Vincenzo Della Rattaがインドネシア・バリ島でフィルレコした祭事音楽の実況音源。端境の音楽とはこういうものか、プリミティヴな音楽が今も息づく現地の祝祭風景をそのままに伝える一大録音だと思います。モーリン・タッカーの如し、ハイエナジーな演奏による神秘的な酩酊を現世へと蘇らせる極上のトランスミュージック。終始弛緩しない強烈な演奏が見どころたっぷりで、アフリカンなパーカッションが好きな人もお見逃しなく。

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28. Les Filles de Illighadad - Eghass Malan (Sahel Sounds)

遥かサハラ砂漠からは、トゥアレグ族女性バンドによるテンデ・ミュージック第二弾。ボーカルやハンドクラップ、パーカッションから構成された音楽で、女性がギターを演奏して村と愛と祖先を賛美するという形式。素朴な演奏ながら、どこかしこに滲むサイケデリアと郷愁を感じる神聖な歌声がバツグンにいかす稀有な音楽。こんなシンプルな演奏でも聞いたことのないような音楽を作れてしまうというのが純粋に凄い。こういうのをどんどんと引っ張ってくるSahel Soundsというレーベルと同時代にいられるというのもなかなか恵まれているのかもしれませんね。

27. 在知 - ホムンクルスの羽根 [El Ala De Mi Homúnculo] (Hakanairo)
真美鳥 Ulithi Empress Yonaguni Sanの一員としても活躍する在知の三年ぶりの最新作。アコースティック・ギター、エレキ・ギター、ベース、タンプーラ、ボンボ、ケナーチョ、グイロやティンシャといった多様な楽器が使用され、独自の孤高な世界を作り上げた強烈なインスピレーションに尽きる一作。在知は、アナログで作品を発表することにかなりの熱意があるようで、言ってみれば、「レコードを作るため」に音楽をやっているというほどの気合の入りっぷりです。音響派からサイケデリック、フォークミュージックまでもが混沌として渦を巻き、理解を超えた世界観を完成させており、前作「トゥルパの花」からもさらなる飛躍を見た一作。今後もこの人の作品は楽しみでなりません。

26. Lieven Martens Moana - Three Amazonian Essays (EM Records)

昨年の来日もまだ記憶に新しい、リーヴォン・マーティンス・モアーナの最新作が日本一根性のあるレーベル、EMから来たので歓喜せざるを得ませんでした。本作は、Finis Africaeによるアマゾン探訪録「Amazonia」を音素材として調理し、新たなるアマゾンを再構築するという新鮮な試み。武満徹湯浅譲二、Ivesなど現代音楽からのインスパイアを受けており、クラシックとしての表現性や強度も感じられます。コラージュやサウンドアート、電子音楽など、多様な観点から、テン年代ニューエイジにも繋がる独自の音楽を追求した果てにある奥の境地。疑似アマゾン探索として是非。

25. Asuna - Mille Drops (RÉCIT)

Students Of DecayやSenufo Editions、Home Normalなど様々な名門レーベルから自身の作品を発表し、キャリアを高めてきた日本人作家、Naoyuki Arashiによるソロ名義Asunaの最新作で、今作は「水や雨、水滴、波紋」などをテーマに制作。Asunaさんの作品には昨年のHorm Normalからの「Tide Ripples」が良すぎたので今作も期待しながらの購入になりましたが、さすが、期待を裏切らない。鬱屈した心へと沁み込む、普遍性のある音楽。幾重もの単音や断続音のレイヤーがじわじわと内的宇宙を浸食する。作り手の微細な感情の変遷が感じ取れる箱庭スケールの美麗作品です。

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24. KONSTRUKT & KEIJI HAINO - A Philosophy Warping, Little By Little That Way Lies A Quagmire (Karlrecords)

これは予期していなかった奇跡のコラボレーション!エヴァン・パーカーやブロッツマンなどフリージャズ界のドン達にも御用達のトルコのフリージャズ集団、Konstruktが遂に灰野さんと演ることに!トルコの民俗楽器ズルナや民謡などで使われる南東ヨーロッパの楽器カバル、トルコの木管楽器シプシ、アジア系の木管でおなじみシロフォンなどが使われており、非常にユニークな構成で組み上げられています。絶境で燃え上がるような灰野さんの歌唱にエスニックな民俗楽器、そして、フリージャズの爆炎が華を添える強烈なインプロヴィゼーション絵巻。灰野さんの今年の作品で一番では?

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23. Rafael Anton Irisarri - The Shameless Years (Umor Rex)

僕も個人的に生涯ベストのひとつに挙げるファースト・アルバム、「Daydreaming」から早十年。またしても大作を仕上げてくれました。Room 40やImmuneといった名レーベルからのリリースを経て、遂に現代のDigitalisことUmor Rexから登場です。抒情的なアンビエントを作らせたら天下一のこの人ですが、さすがでした。ラファエル・アントン・イリサリの最も主題的にも音響的にも一貫性のある記録。迫りくる滝のように浴びるアンビエンスが圧倒的で、一気に三途の川の果てまで。政治的にも複雑な状況下で作ったサウンドだけあってシリアス、しかしハッとさせられるような感嘆があるのがこの作品の美しさなのかな。

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22. Eliane Radigue - Occam Ocean Vol. 1 (Shiiin)

チベタン音楽と電子音楽を融合させたグル、エイリアーヌ・ラディーグ。彼女のファンになってから、初めてリアルタイムで聴くこととなった新譜がこれです。欧州のフリージャズ界屈指のハーピスト、Rhodri Daviesを始め、Julia Eckhardt、Carol Robinsonといった豪華メンバーが集った挑発的なメンツでの演奏。管楽器やヴィオラ、ハープなどが用いられて、ラディーグの越境的なサウンドを極限まで引き伸ばした霊的音源。姿勢を正し、雑念を傍観するのに相応しいメディテーション・ミュージック。

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21. Ian William Craig - Durbē (Recital)

最近、各地で名前を聞く機会が増えてきたカナダ・バンクーバーの音楽家、イアン・ウィリアム・クレイグが14世紀のラトビアの教会で録音したという作品。本来、リリースされる予定は無かったらしいのですが、レーベルオーナーのSean McCannの熱望によりリリースに至った作品。前作までのメロディアスな作風から幾分か無感情さが際立つ異形の音楽へと変遷し、いっそう深い音楽世界へと根差しています。多様な要素が介在し、オペラからアンビエントニューエイジをも包括したサウンドへと深化。まるでルネサンス期の音楽のよう。こんなんいつまでも聴いていられますね。

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20. M.E.S.H. - Hesaitix (PAN)

PANの下半期の作品では、ErrorsmithやPan Daijingにピンと来ず、Dracura Lewisことシモーヌの新プロジェクト、STILLは個人的に惜しいラインだった中、M.E.S.H.がフルアルバムでキメました。ベースミュージック然としながらも以前にも増して、より熱量が感じられるような肉体美溢れるサウンドに仕上がっており、暇もなく繰り出される展開の数々は鬼気迫るものがあります。ポスト・クラブ的な文脈から切り込んできましたが、リズムセクションはトライバル志向そのもので都市型民族音楽といった風情です。ベースミュージックの最先端に触れてみたい人は要チェック。

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19. WAVEFORM TRANSMISSION - V 2.0-2.9 (Astral Industries)

DeepChord名義での、Modern Loveからの大名盤「Liumin」を残しているRod Modellが二十年ぶりにChris Troyとのユニットを再始動してリリースしたセカンド・アルバム。「Liumin」が圧倒的過ぎて他の作品に手が出ない人がいるかもしれませんが、これもまた見逃せない大作です。18分もの大曲が四曲収録された重厚な味わい。フィルレコ素材を自然美たっぷりに調理したアンビエント・サウンドと音の生態系と調和のとれた至高の音世界があまりにも壮大なコスミッシェ・ムジーク。霊性を感じる音楽、躍動する電子音が、生命の神秘と存在の祝福を届ける彼岸のサウンドがここにあります。

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18. Spirit Fest - Spirit Fest (Morr Music)

ゑでぃまぁこんと、テニスコーツ、どっちが好きかと問われると回答に困るものですが、そんなテニスコーツThe Notwistが合体して生まれたこの神秘的な音楽を目にすると頭を抱えがちです。軽やかに、そして、色鮮やかに、時にメランコリックに交差するさやとマーカス・アーチャーの歌声に心を擽られます。おもちゃの世界へと迷い込んだ少年の日でも思い起こしそうな、優しさと微睡みと慈しみの音楽。箱庭スケールで、聴く人の心にフィットする愛おしい旋律がまたいいもんです。長く付き合うことになりそうな作品。

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17. Robert Haigh - Creatures of the Deep (Unseen Worlds)

オックスフォードのヴァージンレコードで働いていた際、常連だったNWWのステイプルトンに見いだされた英国の作曲家、Robert Haighの最新作。今年はこれをかなりリピートしました。本作は、ピアノ演奏によるアンビエント・ミュージック。まるでハロルド・バッドエリック・サティの邂逅を果たしたような神秘的なサウンドが秀逸です。耽美な情景を思い描くとともに、ドープな地下空間が形成されゆくアンビエント・クラシカル絵巻。アンビエントというには切なすぎるかもしれませんね。変遷しない悲しみと哀愁の旋律が心に痛く沁み込み、胸を締め付けるかのようです。前作ほどではないかもしれませんが、今年を代表する作品のひとつとして薦めたいと思います。

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16. DIRTY SONGS - DIRTY SONGS Play DIRTY SONGS (Audika Records)

多分、下半期一のビッグバンド!David Toop(ベース、ギター、デジタルエレクトロニクス、VCS3シンセ)、Phil Minton(ボイス)、Evan Parker(ソプラノ、テナーサックス)、Steve Beresford(Farfisaオルガン、VCS3シンセ)、Mark Sanders(ドラム)と、フリージャズ~アヴァンギャルド好きにはたまらないメンツが揃った新鋭バンドのデビュー作。ソフト・マシーンからピンク・フロイドMC5にストゥージズ、サン・ラまでもが混沌として渦を巻いており、.乱雑なエクスペリメンタル・ロックからアヴァン・ジャズ、古き良き前衛音楽までも横断した異端音楽の源泉というべき圧倒的実験サウンド。聴いていていい意味で不快になるしっちゃかめっちゃかな展開が最高に病んでいて素晴らしい。LAFMSのTom Recchionによるパッケージデザインも秀逸です。

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15. ESPRIT 空想 - 200% Electronica (100% Electronica)

バンドキャンプに張り付くナードなキッズにはこのリリースはまさに驚嘆モノではなかったでしょうか。2014年以降のヴェイパーウェイヴのトレンドにも多大な影響を及ぼしているチルウェイヴのカリスマ、George ClantonによるESPRIT 空想の最新作。200パーセンテージのエレクトロニカ、非常にフューチャリスティックで映像喚起的な美麗サウンドの応酬に圧倒されます。本作は、クラシカルなヴェイパーウェイヴのチョップ&スクリューのスタイルを参照しつつも全編オリジナルで制作したそうですが、こうした試みはこのジャンルのアーティストとしては非常に実験的。アンビエント~ヴェイパーウェイヴ、インディファンにまでも自信を持って薦められる一作です。

14. Elodie - Vieux Silence (Ideologic Organ)

Andrew ChalkがIn CameraのTimo Van Luijkと共に率いる最高の音響ユニット、Elodieの最新作。個人的にアンドリュー・チョークは初めて聴いたドローンだったので思い入れが深い。本作は、彼の盟友、Tom James Scott(piano)を始め、Jean-Noël Rebilly(clarinette)、Daniel Morris(guitare pedal steel)を迎えた五人編成。瑞々しいアンビエンスの流れ、流れるような演奏、精緻に配置された耽美な音の数々が美麗な表現世界を構築し、ついつい聴き入ってしまうような天上世界の音楽を仕上げています。Rashad Beckerによるマスタリングも彼の音世界をより忠実に再現していて素晴らしい。今年再発された「Time Of Hayfield」のLPと併せてチョーク入門にもふさわしい一枚。

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13. Tomoko Sauvage - Musique Hydromantique (Shelter Press)

以前、ブログでも紹介した知子・ソヴァージュの久々の最新作。座右の銘は「笑う門には福来たる」。横浜で育ち、パリを拠点に活動するミュージシャンにとって、音楽への目覚めは早く、四歳でクラシック・ピアノを習い始めたそうです。今作は、南インドの伝統楽器ジャラタランガムから着想を得た独自の "エレクトロ・アクアティック" 楽器を用い、それをシンセサイザーとハイドロフォン(水中マイク)で増幅した作品。音響的に興味深い広がりを見せる神秘的なサウンドスケープ。冷たい金属質のテクスチャーで、淡々と織りなされていく創造的な演奏に圧倒される逸品です。Shelter Pressがここ最近で出した作品の中では断トツではないでしょうか。

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12. Kaitlyn Aurelia Smith - The Kid (Western Vinyl)

2015年に頭角を現して以降、どんどん壮大になっていくマジカルな表現性、そして、だんだんと理解するには及びもつかなくなっていくアートワークのセンス、Panda Bearとのライブ・ツアーに同行後、ますます深いブックラ・シンセの音世界へと探求を深めていくシンセ女子、ケイトリンの最新作はまたしても前作を上回ってきました。ループされるアンビエンス、パワフルで壮麗な歌声に乗せて進む神秘的なポップネス。「サンファン諸島の宝石」と称されるオーカス島の自然豊かな環境で育ち、バークリー音楽学校で学んだ彼女の過渡期の集大成的なアルバムでしょうか。まだまだ成長を感じます。毎年一作のペースでアルバムを出しているので来年も楽しみでなりません。

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11. Lau Nau - Poseidon (Yacca)

綺麗やな~。待ってました!の新作です。昨年の来日公演も最高に美しかったフィンランドの歌姫、ラウ・ナウの二年ぶりの最新作!北欧というと小さな国ばかりですが、多様なエクスペリメンタルのシーンが存在し、Fonal RecordsやSvart Recordsなどを擁するフィンランドもその重要な一角です。本作には、Espersの女性チェリストHelena Espvall、MúmのパーカッショニストSamuli Kosminen、そしてLau NauのパートナーのAntti Tolviなど、強力なミュージシャンが多数参加し、彼女の集大成と言えるこのアルバムをより彩り深いものとしています。壮麗なオーケストレーションに乗せて箱庭的で耽美な歌声を震わせる彼女の可憐な魅力が花開いた一作。フィンランド入門にもオススメ!

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10. Rainforest Spiritual Enslavement - Ambient Black Magic (Hospital Productions)

ヴァチカン・シャドウ、プルリエントなどの名義でも活躍し、今年はRainforest~名義のカセット作品の怒涛の再発ラッシュで話題の尽きなかったドミニク・フェルノーですが、いよいよこの名義での最新作も発表してきました。2LP+10”という強烈なボリューム感。マイナスイオン溢れる密林の中で秘境探索するかの如し、壮大な自然美とアンビエンスに圧倒される極上の音世界に没入してしまいます。僕は最近このアルバムを入浴時と入眠時に愛聴していますが、疲れがよく取れるような感じがして最高。ノイズ・インダストリアルの枠のみならず、これほど耽美なアンビエントが作れるとは大したもの。2017年、最も没入感のあるリスニングの一つとして是非。

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9. Loren Connors - Angels That Fall (Family Vineyard)

灰野敬二やジムオルークとの共作でも知られる孤高の音響ギタリスト、ロレン・コナーズ。今年は名作「Evangeline」の再発も話題になりましたが、昨年、ブルックリンの教会で録音されたという本作もまた素晴らしい。ニール・ヤングの「Dead Man」を思い出すような、ぼやけた音響空間の中でアコースティックが器を満たしていく神聖な演奏が何とも言えない美しさでただただ圧倒されるばかりです。黄泉の情緒に浸るかの如し静謐な音世界はこの上なく神秘的で、あまりにも精巧、そして無駄ひとつありません。耽美で、瞑想的な世界観は誰しもが酔いしれること間違いなしです。

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8. Laraaji - Bring On The Sun (All Saints Records)

ニューエイジ・ディスクガイドを書いた身としても外せない、ブライアン・イーノによるプロデュースでも知られるニューエイジの生ける神、Laraaji。深き深き精神世界にて求道を続ける瞑想神秘のグル、その新作が二連作で今年発表されたのです。何といってもこの美しさでしょうか。インドの古典音楽をバックボーンに、天空世界で華開くようなインナーワールド感溢れる静謐な調べ、ときめくほどのパーカッシヴ・ジャム、大宇宙へと昇る清々しいドローン気流、全てがカンペキな調和の中で織りなされる神秘のニューエイジ活劇。瞑想に相応しい音楽原体験的世界です。細野晴臣との共演でも知られる彼ですが、知らない人は是非一度彼の音楽に触れてみてください。

7. Haco - Qoosui (Room 40)

伝説のアヴァンポップ・バンド、After Dinnerの歌姫にして元祖音響系女子とも云われたHacoがRoom40より発表した二年ぶりのアルバム。今年はこのレーベルは豊作でどれを入れるか正直かなり迷いました。本作には、チェコの実験電子家、Gurun GurunのTarnovskiと広島の3ピースバンド、speaker gain teardropのメンバー、stabiloが参加。David Toopが賞賛の言葉を贈っているだけあって、作品の完成度は折り紙付きですね。決して難解ではない、夢見心地の柔らかなサウンド。リリシズムが感じられる清らかな歌声とフィルレコ素材の活きた神秘的な音響空間、自然美に包まるような瑞々しいアンビエンス、音と音が調和し合い、潤いある音世界が作り上げられています。こういう出会いを大切にしたい。

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6. H.Takahashi - Raum (Where To Now?)

やけのはらとP-RUFFとのアンビエント・ユニット、UNKNOWN MEの成功で一躍日本のインディ・シーンにもその名を広めることとなった作家、H.TAKAHASHIが、アンダーグラウンドのカセットシーンで異彩を放つ気鋭レーベル、Where To Now?より発表した堂々のヴァイナル。まず日本のアンビエントの系譜ということで、芦川聡や吉村弘、尾島由郎らへと連なり、サティにケージ、イーノといったアンビエントの歴史を紐解きながら、静謐の中で音楽を鳴らす稀有な世界が広がっている一枚。カフェや公園、地下鉄、オフィスなど、東京の風景を深く意識した音楽ながら、まるで無人の街を歩いているような寂しさが感じられ、胸を締め付けるようで、美しい。

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5. Ariel Pink - Dedicated to Bobby Jameson (Mexican Summer)

三年前も僕はアリエル・ピンクの「Pon Pon」をベストに選んだ記憶があるのですが、遂に新作出してくれました。本作は、LAのミュージシャン、Bobby Jameson(1945-2015)に捧げられたアルバム。このジェームソンという人物は、Robert Carl Cohen監督の1967年のカルト映画「Mondo Hollywood」にも出演しているとのこと。相変わらずクラウトロックを異形へと変化させた天変地異のローファイサウンド。しかし、本作ではより明るく、ヒップに突き抜けた大変愉快なベッドルーム・ポップで、「Pon Pon」以前のアリエル・ピンクが受け付けなかった人でもイケる作品なんじゃないかと思います。Dam-Funkが参加しているのも高ポイント。彼のキャリアの過渡期にふさわしい名作です。

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4. HMLTD - Satan, Luella, and I (Ouroboros LTD)

元々インディからディグが加速していった過去のある僕なのですが、ここ一、二年は、あまり多くのインディに触れられてはいませんでした。しかしながら、一年に一回は強烈な出会いがあるもので、このバンドの破壊力にはやられてしまいました。ロンドンからは、デヴィッド・ボウイ、アイスエイジ、ガールバンドにも連なる素晴らしい才能。The XXやKing Kruleなどに携わってきたプロデューサー、Rodaidh McDonaldに手掛けられているというのも特筆に値します。背筋が凍り、胸を締め付けに来るこのワクワク感は一体なんでしょうか。EPというかシングルですが、これはあらゆるインディファンが聴くべきだと思うので全力でプッシュします。今こそ今、お見逃しなく。

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3. Mica Levi - Delete Beach (DDS)

最初、サンクラで聞いたときはピンと来なかったんですが、一曲目の語りを聴いてハッとしました。そう、僕が今まで何気に知っていても聴いてこなかったミュージシャン代表格、Micachuの本名名義、Mica Levi。タッチやキャプテン翼キテレツ大百科などの作画監督を手がけてきたアニメーター、江口摩吏介によるアートワークが印象的です。本作は「Delete Beach」というアメリカのアニメ映画のサントラで、この印象的な語りの少女の声は、声優・矢野亜沙美が担当しています。音楽は、ディストロイド~ポスト・インターネット以降の世界観そのもので、ArcaやChino Amobi、Angel-Hoらが一堂に会したような近未来的なサウンドが聴き手のインナーゾーンへと入り込んできます。本作はフィジカルは即完売になりましたが、デジタルはまだBoomkatなどで買えるので是非。

2. Visible Cloaks - Lex (RVNG)

上半期もベストに選んだこの人達、最新作はミニアルバムなのですが、前作を上回るこのアンセム感は何なのでしょうか。ポスト・インターネット以降の音楽を超越した先鋭的なテクスチャー、瞑想神秘の霊性伴なったアンビエンスの放出、第四世界の音楽への回答とでも表現したい極上の音楽に打ちのめされるばかりです。マイナスイオンエスノ・アンビエントの滝から天へと昇る宇宙銀河的なロマンに完全に打ち砕かれた。今年はニューエイジのディスクガイドに参加した年でしたが、そこでこの人達の音楽を取り扱うことが出来て本当によかった。今年の来日に行けなかったことだけが悔やまれます。

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1. Björk - Utopia (One Little Indian)

毎回ベストで一位を何にするかということで悩んで、該当なしというときもあったりするのですが、今年はOPNのサントラにピンと来なかった中、突然アナウンスされたビョークの新作でビビっと来ました。制作時間はなんと900時間。2015年に「Vulnicura」をリリースした直後からこのアルバムの構想を練っていたそうです。2016年にBrit Awardsで"International Female Solo Artist"の賞を受賞した時点でも、アルバム制作に多忙なあまり出演しなかったほどの気合の入りようです。前作「Vulnicura」を発表したあとのインタビューで、前作は「地獄だとか結婚解消」のようなものでなく、「楽園」のようなものだと主張している彼女ですが、そのアップデート版となる本作では、「理想郷」と銘打ったタイトルの通り、ここでは彼女のやりたかったことの全てが描かれているように思われます。未来を向いて制作にのめり込んだという彼女。新時代のエレクトロニック・ミュージックの象徴ともいえる、アルカを今回もプロデューサーに選んでいますが、彼とのパートナーシップもより盤石なものとなっていることでしょう。さらに楽曲"Losss"では、Halcyon Veil主催のあのRabitも携わっているとのことでビックリ。先日、"the gate"のPVを見たときは、自分が誰よりも時間をかけていい音楽を探そうとしたその気概さえも吹き飛ばされる恐ろしいほどの創造力を見せつけられました。ビートやポップスといった概念から抜け出したであろうエソテリックで神秘的なサウンドは、形容を超えた境地にあるとしか僕には表現できない。そして、ジェシー・カンダによるアートワークも彼女の深層世界をより的確に切り取っている。それだけは確かだと言えることはこのアルバムはテン年代ビョークの金字塔にして、自信を持って僕の今年のベストとして薦められる一作です。