NYP Best 30 Of 2017

下半期ベストに書いた通り、昨年も豊作だったのですが、例年通り、バンドキャンプを掘っているうちに「name your price」の音楽に出会う機会は多かったものです。いわゆる「name your price」=「NYP」、つまり投げ銭、あなたはバンドキャンプを特徴づけるこのシステムについて、どのように向き合っていますか?「0」と打ち込めば、フリーダウンロードも出来てしまう。逆に言えば、値段を自分で決められるのだから、何千ドルでも対価を支払うことができる。アーティストとリスナーが最も身近に感じられるこのコミュニケーションについて、読者の皆様にも少し考える余地を与えることができれば幸いです。以下、全て僕が今年"PAY"したNYPの作品です。それではお楽しみください。(右クリック&PC閲覧推奨。アルバム名をクリックすると作品のリンクに飛びます。)

Dog House Traps Vol. 6 by Chris Dallas

テキサスのプロデューサー、Chris Dallasによるトラップを中心にしたミックス。凡百のトラップとは一味違うレフトフィールドな選曲にセンスを感じます。この手のジャンルはあまり触れたことがなかったのですが、ウェイトレス・グライムを愛聴している身としては親和性があってちょっといいかもしれないと思うのでした。

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fantasii by MHYSA

下半期ベストにも掲載しましたが、実はこれNYPなんです。社会から隔絶される黒人女性の哀歌。希望、夢、インスピレーション、そして欲望といったものを歌い上げ、揺れ動く現代の言葉を揺さぶっているかのようです。Halcyon Veilというレーベルが送り出してきた作品の中でも一際メッセージ性の強い作品で、若い人にこそ届いて欲しい一作。

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Unholy Judgement EP / she luv it by she luv it

関西のアンダーグラウンドシーンを代表するDJ/プロデューサー、CE$の率いるビートダウン・ノイズ・ハードコア、she luv itの2011年のEPがNYPに!「全力でヘイトぶつけてエヴリデイストラグル。愛じゃ足りない部分はこの人たちが持ってきてくれる。」というニュートーンのコメントからしても最高ですね。衝動と威力と感覚だけで十分。

TERRAFORM by DADRAS

ニューヨークの気鋭プロデューサー、DADRAS(デイダラスじゃないよ)のリミックス・ミニアルバム。 Blanck MassからSampha、Clams Casinoまでも料理し、ポスト・インターネット~ポスト・クラブ以降の感性で最先端と同期し、自我を研ぎ澄ましたフューチャリスティックな感性の送り届けるエクスペリメンタル・エレクトロニックの最新系。

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All Is Well by Woo

サウスロンドンの小さなテラスハウスにて端境の音楽を追求していたIves兄弟によるデュオ、Wooの新作(?)プライベートな制作が殆どで、長年彼らの消息は掴めないままだったそうですが、近年ようやく様々なレーベルから作品が再発されて日の目を見ることに。この二人組の作品は、ニューエイジ・ミュージック・ディスクガイドにも載せました。

Elite Geographic II EP by Elite Geographic

新時代ヴェイパーの騎手的レーベル、Elemental 95からの素晴らしい作品。ニューエイジ~eccojams、ローファイも取り込んだ美麗なサウンドで切り込みをかけてます。古き良きヴェイパーのサウンドスケープがデスクトップの奥行きを超えて眼前に広がるエクセレントなメディテーション・グルーヴ。最近、ヴェイパーはあまり掘れていなくて、今回のこのベストにもほとんど載せられていませんが、来年は増やしていきたいですね。

Outdoor Session 2 by Pulse Emitter

三大宇宙深海シンセシストに数えられるポートランドのパルス・エミッターによる野外セッション。まさにコスミッシェ・ムジークの極北といえる美麗アンビエント。クラウトからニューエイジ直下のこの人のサウンドは季節感に満ち溢れ、あまりにも耽美で、感性を刺激されてならない。NYPのアルバムですが、カセットで出してほしかった一作です。

Mirror & Veil by S.Maharba

ミステリアスなUKのプロデューサー、S.Maharbaの最新カセット音源で、デジタルがNYPになっています。ウィッチハウスとヴェイパーウェイヴの折衷ともいえるようなくぐもったサウンドに神聖なる空気感が宿ったセレスティアル・ミュージック。この人もHippos In Tanksがまだあったならデビューしていたんだろうなと思ったりします。

The Sounds of Evil - Vol. 1 by Saint Abdullah

「宗教や政治、歴史文化にインスパイアされ、熱心かつ批判的に幼少時代のルーツを見直す、殉教の家族の物語」という壮大なコンセプト!イランからの移民の兄弟によるプロジェクト。ミニマル・ダブやイラン現地素材をふんだんに取り込んだレフトフィールド・エレクトロニック。SEEKERSINTERNATIONALやEl Mahdy Jr.が好きな人にも是非。

Home Demo​/​ns Vol I by Sorry

以前は、fish名義で活動していたUKのバンドであり、最近ではChildhoodのUKツアーのスペシャルゲストとして参加していたという新鋭バンド!(トリトリさん情報)哀愁たっぷりにベッドルームな感触満載の愛らしいバンドサウンド。こんなんやられちゃいますよね。Big Loveの仲さんもインスタにupしていて、今後プッシュされるかも? 

Awake Into Life by Peter Power & Friends

Komodo KolektifやJon Keliehorなどのリリースで最近ノリにノっているUKの新鋭レーベル、Invisible, Inc.から辺境系プロデューサー、Peter Powerの気合の一発。デジタルオンリーで16年にリリースされていたものが昨年ヴァイナル化されたもの。レフトな感性で密林を練り歩く妖艶な足取り、異世界へと誘拐するガムランの響きがたまりません。

cocoon egg by x/o

登場した頃からサンクラのアカウントをフォローしていた思い入れ深いアーティストの初のフルアルバム。リリースしてくれるだけでもなんともめでたいことですが、そのサウンドも天上を突き抜けて、コスモへと至る究極の美麗アンビエント/新世代ニューエイジ的なコスミック・スケープ。このベストの中ではトップクラスに好きな作品です。

SHE IS A by パソコン音楽クラブ

ヴェイパーウェイヴ一直線な最高級の感性で関西を代表する若手の二人組による渾身のアルバム。まさか、Maltineからデビューするとは想像もつかなかった。彼らのライブも友達のおばあちゃんから借りたというテレビデオとか使ってたり、会場限定販売のVHSにはPVのあとに録画していたNARUTOBLEACHが流れてきたりと色々エモい二人です。

We, so tired of all the darkness in our lives by Leyland Kirby

2013~2017年にかけて制作されていたケアテイカーことレーランド・カービィーの編集盤なのですが、本人がこの作品には重きを置いていないそうでなんとNYPということに。2016年から始まった一連の新作シリーズや再発に加えてこのリリースにもぶったまげました。ケアテイカーとはまた違ったセレスティアルなサウンドにこの郷愁が加わってよりいっそう美麗な世界観で仕上げたオーケストラル・アンビエント。傑作です。

Root Angel REMIXES by Sasha Manik

Her Records、Gange Fatale、PTP、時代を経るごとにベースミュージックはよりアンダーグラウンドなものとなりつつも、クラブシーンへと飛び出していく。オーストリアのこのAMENというレーベルもこうした流れの中で欠かせない立ち位置にいて、まさに最先端という音を追及している。Sasha Manikも最近サンクラで名前をよく見かけるプロデューサーでしたが、このままフルアルバムへと突き進んで欲しいです。

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Memento Mansion by Yuto Ohashi

懐かしい記憶やノスタルジアに浸ろうとするとき、音楽は最高の友となる。昔読んだヘッセやブラッドベリの本の深層へと迫るかのように、それを最大限にまで高めたような夢の音楽がYuto Ohashiという人の表現性に現れているかのよう。存在時代もミステリアスなこの人の音楽もより深く縁どられた個性の中で輝くノスタルジアの境地にて、その深淵へと向かっていくようだ。それは「頼もしい」という感覚に近い。

Never Too Late by V/A

Petit Singe、Kareem Lotfy、Torusという豪華メンツによるポスト・クラブのショーケース的コンピレーションアルバム。ベースミュージックから地下テクノ、アンビエントまでも横断し、新時代の基軸となるであろう鮮やかなサウンドが展開されています。この最新鋭の感性は2018年においても引けを取ることはないでしょう。

homework - year 2 by various artists

Nimh、Yannick Dauby、Daniel Menche、Hitoshi Kojo、Fabio Orsiというエクスペリメンタルの粋を集めたような豪華コンピレーション。フィルレコ、ドローン、アンビエントなどを中心に実験的で貪欲なサウンドが実に67曲にも渡ってコンパイルされています。音響的側面から地下シーンに入っていくのにもふさわしいラインナップです。

VA - Shine (Compilation for Puerto Rico) by PTP

ポスト・インターネット以降の感性で地下テクノ~エクスペリメンタルを横断する気鋭レーベル、Purple Tape Pedigree改めPTPのクルーによるコンピレーション。2017年にリリースされたこうした界隈のコンピでは最も豪華なものの一つではないでしょうか。ポスト・クラブと称されるこうした音の世界における指標のひとつとして重要な作品です。

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A​.​D​.​2017 by V/A

ネオトーキョーの近未来の街並みを滑走する気鋭クルー、CONDOMINIMUMによる「2017」という混沌とした時代を冠するコンピレーション。Cemetery、CVN、LSTNGTなど、Solitude SolutionsやIN HAといった東京地下シーンの界隈でも活躍するアーティストが一堂に会しています。東京の新時代を体感するにふさわしい一作。

Descend In Chains by Torus

Halpがファン・アカウントで購入していてチェックした気鋭アーティスト、Torusの最新作。まさに神聖なる境地から届けられる音楽。これはアンビエントなのか、R&Bなのか。そういった不安定な、概念を超えたところからオンライン・アンダーグラウンドの新世界へと聴き手を引きずり込んでいく新たなる時代の音がここにあります。

memos v​.​2 by yyu

Beer On The Rugからも登場している名アーティストYYUによるほんのりアコースティック・セット。ローファイな録音環境の中、心地よいヒスノイズが霞み、ベッドルームな安らぎ溢れるノスタルジックな宅録フォーク。凄いシンプルな音楽なんだけど、どこか心をぎゅっと掴まれる愛おしさに満ち溢れていて、最高にグッドです。

Delay by Inner Science

Gigi MasinやUnknown Meのリミックスも手掛けるInner ScienceによるBlack Smokerバンドキャンプ限定リリース作品。ニューエイジ~バレアリックまでも横断した煌めきのサウンドで究極の天上美を届けるセレスティアル・アンビエント。音楽も息も透明になるこの季節にこそ映えるような美麗サウンドが非常に魅力的です。

XYMERIA by XOSAR

Torn Hawkの妻、そして、L.I.E.S.の代表格にして、エクソシズムやオカルトに影響されているという独特な感性を持った女性プロデューサー、Xosarによるコンセプトアルバムで、スピリチュアルな観点から人間社会を見つめ直した作品。ロウハウスやアンビエントエレクトロニカなどを腐食的にミックスした毒のあるサウンドで魅せています。

2014 - 2017 by C Plus Plus

レコードショップにしてカセットレーベルのApothecary Compositionsからの三年前のカセットでその名を知ったポートランドのプロデューサー、C Plus Plusの2014~2017年までの作品集。制作年度が多岐にわたるだけあって、テクノからグライム、アンビエントとテイストの違う楽曲が楽しめる一作。この人もそろそろカセット出してほしい。

Extended Family Comp 1 by 1432 R

ワシントンの気鋭テクノレーベル、1432 Rのショーケース的コンピレーションで、売り上げは全てアメリカ自由人権協会に寄付されることになっています。クラブミュージックの世界三大聖地であるマイアミでかかること間違いなし、突出して感覚的な前衛的サウンドデザインで攻める、聴きごたえ抜群なコンピレーション・アルバム。

Live in Durbē by Ian William Craig

Sean McCannの名レーベル、Recitalお抱えのアーティスト、Ian William Craigにより、14世紀に建造されたラトビアの教会で録音されたアルバム、Durbēのライブテイク。オペラやアンビエントを横断した幾何学的なサウンドデザインがあまりにも秀逸。今年、バンドキャンプでリリースされた作品の中では群を抜いて素晴らしい作品ではないでしょうか。

Comfort Zone Remixes: Luxury Elite - Digital Extended Edition by Luxury Elite

ヴェイパーウェイヴでも屈指のクオリティーを誇る名作家Luxury Eliteを、3D BLASTやCOSMIC CYCLERといった現行の気鋭作家たちがリミックスしたアルバム。最高にヒップなアンビエント・ポップといった風情で外行きのお供に最適。活動休止してから今年で二年目になるけど、そろそろ彼女の音楽が聴きたくなってきました。

birds of paradiso by manuel darquart

昨年最後に出会ったことでちょっと思い出深いNYPの作品。イースト・ロンドン拠点のChildsplay Recordsから最高のサマー・ハウス。最高にダスティーでローファイなグルーヴで寒さも真冬の憂鬱もふっ飛ばすバレアリック/ディスコ・ブギー。早く今年も夏が来てほしいという淡い気持ちさえ抱かせるハートフルなこのヴァイブスに乾杯です。

AS TRUTH (MIXTAPE) by Amnesia Scanner

PitchforkやTiny Mix Tapes始め、様々なレビューサイトのベストにも名を連ねていたことで話題となったAmnesia Scannerによる特製ミックステープ。まさに最先端中の最先端と呼べる形容しがたいサウンド。ベースミュージック~ポストR&Bまでも横断した越境的で逞しいこの感性と、普遍性すら香らせるエクスタティックなサウンドデザインが凝縮された新時代の音楽。どんな言葉が適正に彼の音楽を表現し得るのか、容易には例えられないし、ここまで来られると次はどうなるのかまったく見当もつきやしない。しかし、Amnesia Scannerはこれからこの境地さえも超えていくに違いない。