Best 51 Reissues & Compilations Of 2017

明けましておめでとうございます。今年も既に一週間が経ち、僕も新譜をちょっとずつチェックし始めています。昨年はリイシューものを買うということを本格的に始めた年でした。と言ってもブツで買うというより、アップルミュージックやバンドキャンプ、Boomkatなどでデジタルで聴いていたことが多いかもしれません(大学生の身分だから赦しておくれ)。現行のシーンに触れるだけでなく、昔のドープな音楽にも触れることでより多角的な視点で音楽を見れるようになった気がします(ホントか?)今回は再発と編集盤、発掘音源から選んでいます。51作品と長いですが、楽しんでお読みいただければ幸いです。(1レーベルことに1作品ずつのセレクト。アルバムタイトルをクリックすると作品のリンクに飛びます。右クリック&PC閲覧推奨です。)

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51. Non Band – Non Band (TAL)

東京ロッカーズというムーブメントで異彩を放ったノンという女性の織り成すエイティーズ・ノーウェイヴ・サウンド。さすが、P-Model町田町蔵と共演した歴戦の名将だけあってさすがの貫禄。再発当時、東京ロッカーズをあまり通っていなかったのでこのリリースは勉強になりました。ともあれ時代を超え乱暴な1枚です。

「Acetone - 1992-2001」の画像検索結果
50. Acetone - 1992-2001 (Light In The Attic)

SpiritualizedやMazzy Starもフェイバリットに挙げるというロスのオルタナ・バンド、Acetoneの9年間を記録したアンソロジー。スローライフな味わい深いサーフロックサウンドでじわじわと郷愁が沁みてくる。メディテーションズのポップの通り、ベルベッツからアイザック・ヘイズニール・ヤングまでも繋がっていると思います。ペイヴメントやホームシェイクが好きな人にもツボでしょう。

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49. N. – Kata-Tone + Boring Noise (BeTon)

Atrax Morgueの運営したイタリアの伝説的ノイズレーベル、Slaughter Productionsから登場した同国の屈折ノイズ凶、N.の02年と04年の作品を拡張リイシューした特装版。ハーシュというにも下劣でヒネクレたゴテゴテのノイズが縦横無尽に暴れ回る強烈な作品集。強度という概念すら無視した腐食する破壊音の嵐はあまりノイズ初心者にはオススメ出来ないでしょうか……


48. Olima Anditi - Where Else Would I Be? (Raw Music International)

西ケニア全土で愛されるというギタリストであるOlima Anditiの2010年の宅録セッション。これを聞くまで、ケニアアコースティック・ギターのシーンがあったことは知らず、その牧歌的で素朴な音楽に心惹かれました。常人離れしたアクのある歌声と軽やかなギターサウンドが最高に聞き心地好エスノ・アフリカン・ミュージック。鬱屈とした日々にも一筋の光が差す流麗な演奏に1票です。


47. V.A. - Uzelli Psychedelic Anadolu (Uzelli)

どうやらトルコにも変なサイケがあるらしい(ギリシアから伝来したブズーキとかサーフロックとか)、というのはK2レコードで昔、Edip Akbayramを借りてから思ってはいたのですが、やっぱりありました。70、80年代にカセットでリリースされていた作品を集めたもの。アフリカ産のサイケにも劣らない珍妙なグルーヴ感で独自の境地へと。酩酊感も甚だしいほどの鮮烈な世界観に惹き込まれること間違いなし。


46. Oratorium - Oratorium (Tramp Records)

オリジナルはなんと今discogsのマーケットプレイスで70000円を超える額を付ける激レア盤というドイツ産プログレッシヴ・サイケロック。キリスト教系の団体と関わりのあるバンドで、司教に見出され、3日間にわたって大聖堂で録音されたとか。とはいえ、USサイケを彷彿する強烈な麻っぽさが酔える逸品。


45. People Like Us - Abridged Too Far (Discrepant)

90年代から活躍するDJにしてヴィジュアル・アーティストのVicki Bennettによるプロジェクトのセッション音源やシングルなどをコンパイルしたヴァンダイク・パークスにハイ・ラマズを彷彿するクラシカルでノスタルジックな宵闇のアトモスフィアが最高に沁みる激高内容の1作。The Catetakerにも通じるものがあるかも。
「Satoshi & Makoto - CZ-5000 Sounds & Sequences」の画像検索結果
44. Satoshi & Makoto - CZ-5000 Sounds & Sequences (Safe Trip)

30年以上活動しているという日本のベテラン双子ユニットの20枚以上のCDを、オランダのバレアリック魔人、Young Marcoがコンパイルしたという激熱盤。やはりニューエイジが再評価される現代に於いても重厚なアンビエンスを効かせるコズミックなMIDIサウンド。初期のジャパニーズ・テクノやThe OrbYMOKraftwerkなどの影響を受けているとか。新作が待たれます。


43. V.A. - Seafaring Strangers: Private Yacht (Numero Group)

日本ではお馴染みながら、アメリカでは“Yacht Rock”として認知されているAORボズ・スキャッグスマイケル・マクドナルドといったメジャー・レーベルで活躍したメンツの影でこっそりと上質な音楽を届けていたオブスキュアなアーティストたちのプライベート盤をコンパイルしたアルバム。この中ではネッド・ドヒニーしか知らなかったのでかなり重宝しました。まさに外行きのための一枚。

42. Dominique Lawalree - First Meeting (Catch Wave)

歴史の影に埋もれたミニマル・アンビエント最高峰音源の一つ。ブライアン・イーノのObscure Recordsから発表される予定だったものの、結局自主レーベルよりリリースしたという強烈なミニマル音源。サティを彷彿させるような美しく物憂げなエレクトリック・ピアノの音色が天上美溢れ、瑞々しく霊性極まっています。パレスタインやライヒのファンにも届いて欲しい1枚です。

「菊地雅章 - マトリックス」の画像検索結果
41. 菊地雅章 - マトリックス (Victor)

誉れ高き和ジャズの最高峰に君臨するピアニストにして、山本邦山と伝説の名盤「銀界」を仕上げた菊地雅章の再発案件。2015年に惜しくも他界しています。そんな彼のファーストアルバムである本作は、幾度となく演奏してきた名曲"Little Aby"やジャズロックの新境地、"If I Said The Sky Was Falling"など意義のある楽曲が数多く収録。和ジャズの入門にも相応しい歴史的な一作。

40. C-Schulz - Frühe Jahre (Unseen Worlds)

ドイツはそれなりに掘っていると思っていましたが、これは全く知りませんでした。ラウンジ的な要素をカットアップ・コラージュで魅せている辺り、NWWのファンにもウケがよさそうな90年代ドイツ産エクスペリメンタル。初期テクノやインダストリアル、ニューミュージックやダダまでも包括したエキセントリックなサウンド。どこかイタリアのサントラやライブラリーミュージックにも通じる珍妙な味わいでじわじわと脳髄を侵食してきます。

39. death's dynamic shroud.wmv - RPGウィンドウズ ビスタ (Bedlam Tapes)

Tech Honorsのソロプロジェクトだったのが、今やKeith Rankin(Giant Claw)とJames Webster(Xepter Rose、HCMJ)も加わってスーパーグループとなっているdeath's dynamic shroud.wmvのまだ一人だった時の2014年の名作がカセットでリイシュー。僕が入手したのは二回目のリプレスで、始めも僕の入手した回も瞬殺でした。うっすらとヴェイパー・ウェイヴ的な要素もありつつ、シネマティックなアンビエント・ポップに仕上がっています。にしてもこのジャケは愛せますね。ブツで持っていて正解。
「Kazuma Kubota – Utsuroi」の画像検索結果38. Kazuma Kubota – Utsuroi LP (Amethyst Sunset)

日本ノイズ新時代を切り拓いてくれると確信している若手ノイジシャン、Kazuma Kubotaが2015年にカセットで限定リリースしていたもののLP版。カセットももちろん当時入手していて、お気に入りだったものがDLコード付きで再発とのことで即取り寄せました。アンビエント的な手触りもあるセレスティアルなコンクレートノイズで暴れ回る強烈な視聴体験。窮屈しない立体的なサウンドの表現が緻密かつダイナミックで破壊力バツグン。
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37. Tomografia Assiale Computerizzata – Symphonie Industrielle (Officina Fonografica Italiana)

Z'EVやIkue Moriともコラボレーションしているイタリア地下音楽界の仕掛け人、Simon Balestrazziも参加しているポスト・インダストリアル・グループ、TACの81-85年の録音を集めた初出音源集。近年彼らは再発が進んでおり、入手困難なものが多い昔のイタリア地下シーンの中でも徐々に注目が集まりつつある方ではないでしょうか。コラージュやテープループも効果的に用い、不可思議が収束する鬱屈インダストリアル。地中海独特のエスノな牧歌性は一切介在しない腐敗したサウンドが印象深い。

「Fábio Caramuru – Tom Jobim」の画像検索結果
36. Fábio Caramuru – Tom Jobim (flau)

昨年、休学を始めて帰省したとき、地元のメガネショップの「めがねのスエツグ」さんがポストクラシカルを中心に扱うレコードショップの「雨と休日」の出張販売をやっていて、そのとき拾っていった1枚(最近そこで新しくメガネも受注しました)。サンパウロのピアニスト、ファビオ・カラムルーの97年録音とそれからほぼ10年後に録音された音源を収録しています。まさに「雨と休日」という名前が似合うような物憂げな演奏ながら、ダイナミズムと熱情も絡み、限りなく美しい作品として完成。買った当初は新譜と勘違いしていて上半期のベストに入れようと思ったほどの良作。


35. Om Alec Khaoli - Say You Love Me (Awesome Tapes From Africa)

85年にリリースされたオリジナル盤は40000円の高値を付ける南アフリカのディスコ・ブギー名作。5分ちょっとの曲が4曲とコンパクトな1枚で聞きやすいからか、去年外を歩くときは結構これをリピートしてました。録音当時、アパルトヘイトにより黒人は仕事の合間にしかレコーディングをする時間を取れなかったそうですが、これだけ軽快な音楽を生み出すのもカウンターカルチャーが育っていた証拠でしょうか。身構えずとも馴染みやすい良心的な一枚。

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34. Endless Nostalgia – Two Days Of Light (The League Of The Gloomers)

一昨年、昨年とここ最近一気に再発・発掘が進んでいるイタリアの地下ニューウェイヴ・バンド、Endless Nostalgia(名前が素敵)の82-83年の最初期音源をコンパイルした一枚。長いこと歴史の隅に埋まっていたのも当然というか、珍妙なサイケデリアとチープなシンセサイザーの音色で織りなされる歌入りシンセウェイヴ。オペラ調の歌もヘタ。妙に愛せるサウンド。

33. Hotline - You are mine (Happy Milf)

86年のオリジナルはマーケットプレイスで最大60000円以上を付け、もはや1年以上出品すらされていないナイジェリアン・ディスコの名作。辺境地であるということとディスコの発生から10年近くが経った時代を感じさせるサウンドが独特で、ハネのいいビートと艶やかな歌声も作品をコズミックに彩っています。アフロ・ディスコ・ファンクナンバーの”Fellas Doing It In Lagos”は、Soundwayレーベルの「Doing It In Lagos」コンピレーションのネーミング元。濃い1枚。

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32. Cozmic Corridors - Cozmic Corridors (Mental Experience)

オリジナルは1973年に発表されたという設定である96年リリースの贋作との通説があるものの、ホントは実在していたクラウト名盤。オリジナルの現物はPyramidレーベルからごく少数のみ、ハンドメイドで作られており、現在所有している人は僅かとのこと。密教からスペースサイケまでどっぷりと豊潤なサイケ成分を含んだヴィンテージ・ムーグ・サウンドで、他の代表的な70年代のクラウトと比べても遜色ない味が見事に出ています。宇宙時代を感じさせる荘厳な音世界の広がりと絶妙なミニマル加減でなかなかに聞き心地も好い神秘的な一枚。

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31. Andrew Chalk – 夜のバイオリン = Violin By Night (Faraway Press)

11年にヴァイナルとカセットで少部数リリースしていた名作のCD化。初めて聞いたドローンがバシンスキーではなくアンドリュー・チョークだったのもあり、個人的に思い出深い作家(あまり多くの作品を持っている訳ではないです。)分厚い膜のような神聖なアンビエント・ドローンで、人間の虚構までも飲み込み包むように天上の慈しみが広がっていく神秘的な作品。目を瞑り、姿勢を正して雑念を傍観するとき、助けとなるであろう美しきマスターピース

30. V.A. - 80s Underground Cassette Culture Volume 1 (Contort Yourself)

詳しくは以下の記事も書きましたが、メルツバウやノクターナル・エミッションズ、ヒューマン・フレッシュ、ブラックハウスなど著名作家から無名作家まで幅広く収録した豪華企画。コンパイルしたのは、L.I.E.S.にも名を連ねるプロデューサーであり、Contort Yourselfの主催者であるMurray CY。ノイズ、インダストリアル、ミニマルウェイヴ初心者にも最適な一枚。

http://zangiriheads.hatenablog.com/entry/2017/11/18/110912

29. Richard Horowitz – Eros In Arabia (Freedom To Spend)

RVNG傘下のレーベルからリリースされた作品で、ジョン・ハッセルの名作「Power Spot」にも参加していたリチャード・ホロヴィッツがDrahcir Ztiworoh名義で発表していた81年作の36年ぶりのリイシュー。オリジナルは20000円は下らない激レア盤。アラビアン~モロッコの土着的音楽とミニマル・ミュージックが融合したトライバル・エクスペリメンタルの金字塔。彼のルーツとするジャズやクラシックの要素も顔を覗かせ、非常に多面的な才能が輝いている破壊力満点な一作。


28. Akis - Space, Time and Beyond (Selected Works 1986​-​2016) (Into The Light)

炎のランナー」でも有名であり、昨年も現行のシーンとリンクした新作を発表しているニューエイジ作家ヴァンゲリスを擁するInto The Lightよりリリースされた、アテネのマルチ奏者Akis Daoutisの1986~2016年の音源集。ギリシアというとブズーキのイメージしか無いですが、このレーベルはギリシアの音楽を紹介していて興味深い。三十年に渡るバラエティ豊富な楽曲が収録されており、スペーシーなアンビエントの魅力を時系列で凝縮した神秘的叙事詩。これを聴いて、ギリシアの音楽シーンも掘ってみたさがちょっと出てきました。

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27. V.A. - Sweet As Broken Dates: Lost Somali Tapes from the Horn of Africa (Ostinato Records)

11月に記事にも書いたソマリアのソウルやファンクを集めたコンピレーション。内戦で荒廃し、海賊の巣窟となり自衛隊を派遣されることになるなど、日本人にとっては物騒な地域だというイメージしか無さそうなソマリアですが、その軍事政権時代(=黄金時代)のナイトライフを彩るファンキーな楽曲が勢揃い。ほぼレーベルからの盤でのリリースがなく、マスターからラジオ放送で音楽を流していたソマリアの貴重な音楽をアーカイブした重要な歴史的資料としても注目したいアルバム。

http://zangiriheads.hatenablog.com/entry/2017/11/18/122243

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26. Gökçen Kaynatan - Gökçen Kaynatan (Finders Keepers)

トルコのサイケはさっきも登場しましたが、またあります。アナトリアン・ロックの誕生に貢献したとされる伝説的作曲家Gökçen Kaynatanの電化以降の音源を集めたコンピレーション。トルコのお家芸とも言えるサーフロックから、怒涛の酩酊グルーヴを生み出すリズムシーケンス、電子サイケ独特のコズミックな酩酊メロディが絡み合い、奇抜でストレンジな感じがよく出ています。元はロックンロール畑という過去もあってか、変化球だけでは勝負しない熱いサウンドが非常にGood。

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25. Abdou El Omari - Nuits D'Été Avec Naima Samih (Radio Martiko)

上にこれと関連付けられそうな辺境サイケものがちょうど載っていますが、モロッコのオルガン・サイケものです。別のリイシューは以下の記事をご参照ください。モロッコに生まれ、モロッコに没したオルガン王者、Abdou El Omariの7インチと未発表音源をコンパイルしたもの。アラビアン・サイケからジャズ・ファンク電子音楽までもが混沌として渦巻く強烈なオルガン・ロック。麻とか健康的に吸ってられるレベルじゃない狂気じみたサイケデリアがフィールドを支配するアホみたいな酩酊盤。

http://zangiriheads.hatenablog.com/entry/2017/08/10/182805

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24. Charles Duvelle, Hisham Mayet - The Photographs of Charles Duvelle: Disques Ocora and Collection Prophet (SUBLIME FREQUENCIES)

これはフィジカルはブック付きのリリースで、もので持っていないと意味無いような気もしますが、とんでもない内容なので載せます。1959年から1974年までOcoraで活動したCharles Duvelleの録音(と写真)をコンパイルした豪華セット。西アフリカからインド、パプワニューギニアラオスなどの伝統音楽を収録していて、まだ色濃く残っていた当時のプリミティブな音楽が神秘的に炸裂する歴史的アーカイヴ。緻密かつ自然に練られた独特の音楽は今でも鮮度を保っていて、まだ見ぬ音楽は辺境にあるという人間の本質的な探究心をくすぐる一枚。民族音楽に興味ある割にはOcoraの音源って一枚しか持ってないので今年は増やしたい。写真集が見たいのでいずれフィジカルでも買いたいですね。

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23. Tradition - Captain Ganja and the Space Patrol (Bokeh Versions)

昨年最大級のリイシュー案件の一つと言っても過言ではないであろう、UKダブの秘宝、Traditionの80年作。オリジナルはdiscogsで60000円を付ける激レア盤。これにはMusic From MemoryからのCalibanと並んで衝撃を受けました。限りなくスペーシーで、バレアリックにも通じる空間的なサウンドとライブラリーミュージックとも繋がる浮遊感溢れるアクのある表現が鮮烈な一枚。これはレゲエやダブのマニアならずとも手にして欲しい重厚な音楽体験が待っています。

22. V.A. - TRAX TEST (Excerpts From The Modular Network 1981​-​1987) (Ecstatic Recordings)

Nurse With Woundに参加する前のColin PotterにMerzbow、Die Form、Nocturnal Emissionsまでも収録した、1981年から1987年にかけて活動した共同プロジェクトにしてネットワークとして運営されたイタリアのレーベル・コレクティヴにしてメールアート集団Traxの初めてのコンピレーション。何気に上に載せたEndless Nostalgiaのメンバー、Bi Nostalgiaも入ってます。Merzbowの「君が代」カヴァーまで収録されていて、非常に凶悪な音源集。パンクからノイズ、インダストリアル、ミニマルウェイヴまで純度の高いマスターピースばかりが収録された、イタリア地下シーンの歴史的資料。Frans De Waardの書いたライナーが入っているということでフィジカルで持っておきたい一枚です。

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21. Beverly Glenn-Copeland - Keyboard Fantasies (Invisible City Editions)

ニューエイジ・ミュージック・ディスクガイドにも載せた作品。オリジナルはカセットで、カナダのAtlast Recordsからのリリースですが、今年ジャケットを新装して再発。Growing BinやMusic From Memoryといったニューエイジ再評価の中心的レーベル周辺に沸く音楽マニアの度肝を抜いたカナダ産宅録コスミッシェ・ムジーク。昨年末に再発されたセルフタイトルのように、作風は、ジャズ~カントリー、フォーク、ファンクまでも横断していたようで、多彩なアプローチから引き出される要素要素が葛藤しており、アンビエントとしても、歌モノとしても非常にクオリティが高い作品に仕上がっています。坂本龍一も使用した名機DX7のシミュレートする音色も淡々として美麗極まりない、白昼夢のシンセシス。幼少期のノスタルジアを思い起こすサウンドがとても愛らしいですね。

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20. 尾島由郎 - コレクシオン・デ・シェノン II (Newsic / Spiral)

「コレクシオン・デ・シェノン・・・鎖の作品集」と題された二枚のアルバムのうち2枚目。連鎖する環境音楽として作曲された音楽で、本作は「エヤコンや冷蔵庫のモーター音といった"生活音"と同じくらいのボリュームで聴いてみて下さい」というメッセージが秘められています。冒頭からピアノとシンセの絡みが幻想的で美しい。1曲1曲が繊細に彩られた個性を持ち、極上のアンビエンスを纏った趣深いシンセワークが秀逸な箱庭サイズの楽曲集。こちらもニューエイジ・ディスクガイドにも掲載しています。

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19. V.A. - Noise War (Audio Dissection)

ノイズ魔人、Macronymphaのレーベルから93年に2本組カセットでリリースされた音源にボーナスディスクを付属し、念願の再発となった5枚組CDボックス。マゾンナメルツバウ、インキャパシタンツ、エミール・ボーリュー、ソルマニア、コン・ドム、MSBR、ザ・ヘイターズ、サドン・インファントまでも収録した超豪華コンピレーション。RRRを知らないならノイズ好きとしてモグリと言われる程ですが、このコンピもまたノイズ好きなら持っておきたいマストアイテム。パワエレからインダストリアル、エクスペリメンタルまでノイズの為せる音楽の秘境を追求に追求した究極のノイズ体験談。パッケージ込みで持っている価値最高峰です。

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18. Nord - Nord (Art Into Life)

僕が日本で最も信用を置くレコードショップの一つ「Art Into Life」から再発されたジャパノイズの金字塔にしてメルツバウとも複数回に渡ってコラボレーションしているNord。灰野敬二の「わたしだけ?」、タコのセルフタイトル、阿部怪異(こちらも今年再発されましたね)、ジョン・ダンカンやトム・レッシオンといったLAFM関連まで揃える名レーベル、ピナコテカからリリースされていた作品に、ライブテイクを追加収録したもの。ミニマルウェイヴからパワエレ、サイケデリック、コラージュまでも取り込み、細部まで緻密にデザインされた、ノイズ・フェチにはたまらない極上音源集。極悪なノイズを直線放射するライブテイクも最高。

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17. ÆOLUS - A Retrospective (Aloha Got Soul)

ホノルル初の音楽ブログで、昨今レーベルをスタートさせたAloha Got Soulが発掘したポーランド出身のマルチ・ミュージシャンで心理療法士のRobert ÆOLUS Myersが1982年~2006年に発表してきたCDやカセットをまとめた編集盤。まさしく天上の音楽といった風情。序盤に入ってくるフルートが特にこの曲の安心感を与えています。中盤に差し掛かると、エキゾチックなアンビエントプログレッシヴ・エレクトロニックの異なる風を受けた特別なヒーリング・ミュージックが温かみを持って広がり、聴く人の感情を炎天の雨水のごとく満たしていく。こちらもニューエイジ・ミュージック・ディスクガイドに掲載した一枚です。

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16. Mulatu Astatke - Mulatu of Ethiopia (Strut)

エチオピアビブラフォン奏者で、Hailu MergiaやTilahun Gessesseなど、同国のアーティストにも多く関わる「エチオジャズ」の生みの親、ムラトゥ・アスタトゥケの72年激レア盤(オリジナルは最大で10万近くで取引されています)。アフロ・レア・グルーヴの最高峰とも言うべき音源だけあって、その溝の黒いグルーヴの高まりは大地を震撼させるほど強烈なサイケデリアを纏っています。エチオピアプエルトリコ、アメリカという異質な文化圏の融合に成功し、世紀の発明「エチオジャズ」を確立した歴史的一枚。

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15. V.A. - Visions of Darkness (Cold Spring)

ダーク・アンビエントやノイズのリリースに定評のある名門、Cold Springから、イランのエクスペリメンタル・ミュージックやダーク・アンビエントなどをコンパイルしたという歴史的コンピレーション。さすがにここまで来ると一人も知っている人はいませんでした。意外と強靭で聞かせに来る楽曲のクオリティ、しっかり聴けちゃうところが辺境物件らしからぬ良さがあります。もしかしたら「ペルシャ猫を誰も知らない」にこっそり出演したアーテイストもいたりするんじゃないでしょうか。

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14. Minoru 'Hoodoo' Fushimi - In Praise Of Mitochondria (Left Ear Records)

Zappが相撲を取り、Grandmaster Flashが畳の上でブレイクダンスを行い、Afrika Bambaataaがワウペダルで三味線を弾いたかのような、正真正銘の血まみれ狂気のジャパン・エレクトロ・ファンク!! 」というメディテーションズのコメントがジワジワきます。この作品はブログにも載せましたが、昨年の和モノの再発の中でもかなり異質な部類に入るんじゃないでしょうか。琴や三味線といった日本の楽器を用い、恐らく偶発発生的だと思われる、ボコーダーを使った独特のラップも乗ったあまり聞いたことのないような、まさに「ドープ」の塊みたいな音楽。このレーベルからの再発では、昨年は、Kingsley BucknorとShahara-Jaも良かったので迷いましたが、男意気でこれに1票。

http://zangiriheads.hatenablog.com/entry/2017/11/10/155742

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13. Software - Digital​-​Dance (100% Electronica)

90年代後半まで活動していたドイツのPeter MergenerとMichael WeisserのデュオSoftwareによる88年のプログレッシヴ・エレクトロニック大名盤。クラウス・シュルツェ主催のニューエイジ・コレクティヴ、Innovative Communicationから発表されていたことも有名。本作は今年、George Clanton(a.k.a.Esprit 空想)の100% Electronicaから30年ぶりに再発がなされています。もはやヴィジュアルの佇まいからして完全にアートの領域。違和感なく染み込んでくる純粋なメロディの美しさ、天の川をなぞる神秘的なエレクトロニクスとお抱えのフルート/サックス奏者、Toni Schneiderの絶妙な絡み、フローティングするシンセのレイヤー・サウンドが圧倒的美を見せつけています。極めて映像喚起的でスペーシーなトリップミュージックを探求した作品。

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12. V.A. - An Eclectic Selection of Music from the Arab World (Habibi Funk)

こちらもブログに昨年載せている激ヤバ音源。北アフリカからアラビアの音楽を再発・発掘しているドイツの気鋭レーベル、Habibi Funkのリリースの中でも最も重要であると言えるでしょう一枚。本作は、同地域のサイケデリック・ロックジャズ・ファンクにフォーカスを当てており、多彩な音楽的影響のプロセスを経た強烈な楽曲たちが収録されています。辺境サイケ、ジャズ・ファンク好きには多分人を選ばずハマるであろうバケモノじみたショーケース。個人的に純粋な民族音楽より、辺境地の土着的な音楽と融合した欧米の音楽が好きなのでこういうのはメチャクチャたまらないです。

http://zangiriheads.hatenablog.com/entry/2017/11/03/064409

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11. Le Forte Four – Bikini Tennis Shoes (États-Unis)

一昨年のボックスに続き、昨年も豊作だったLAFMS関連の再発の中でも一際重要な名作がリイシュー来てました!ボックスが高すぎて買えず拗ねていたところでのリイシューだったのでこれは非常に胸熱でした。オリジナルは200部限定、再発も100部限定と入手困難な中だったので、この再発を待ちわびた人は多かったんじゃないでしょうか。ゴチャゴチャとしながらもグダつかない、しかし予測不可能な展開の連続。ミュージック・コンクレート~非音楽、チェンバー・ミュージック、電子音楽をもストイックに吸収したアヴァンギャルド・ミュージックの歴史に燦然と輝く一枚。このリイシューも500枚限定なのであるうちに是非!

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10. V.A. - ETHIOPIQUES BOX7" (Heavenly Sweetness)

Record Store Day 限定でリリースされたまさに夢のエチオピーク・ボックス・セット。前述したエチオジャズから、エチオピアジャズ・ファンクにフォーカスを当てた7インチ6枚組ボックスです(ちなみに僕はデジタルで買いました)。先ほどのMulatu AstatkéにAlèmayèhu Eshèté、Mahmoud Ahmed、Tilahun Géssésséとエチオ歌謡の大御所たちの激レアなシングルがふんだんに集められていて非常に資料価値も高いコンピレーション。厚化粧にノッリノリでアディスアベバナイトライフ謳歌する怒涛のBGMに常時乗せられっぱなし。これはお金出来たらブツで欲しい激ヤバ案件です。

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9. Luc Ferrari - Hétérozygote / Petite symphonie… (Recollection GRM)

Editions MegoとINA-GRMによる共同レーベルのRecollection GRMからリリースされたリュック・フェラーリの1960年代代表曲を集めた編集盤。63年から64年に渡って製作された磁気テープのための作品”Hétérozygote”や73年から74年に渡って製作された”Petite symphonie intuitive pour un paysage de printemps”を収録。初期実験音楽的なフォーマットではありながらも、現行のエレクトロ・アコースティックにも通じる前衛性がたっぷり味わえるフェラーリ入門にも相応しい一枚。レイアウトはStephen O'Malley、カッティングはRashad Becker、プロダクションはPeter Rehbergという布陣も非常に好みをそそりますね。

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8. Pandit Pran Nath - The Raga Cycle, Palace Theatre, Paris 1972, Volume II (Sri Moonshine)

Pandit Pran Nathの作品の中でも、最も静謐で、霊性抜群な一枚。ラ・モンテ・ヤングやテリー・ライリー、ジョン・ハッセルといったミニマル・ミュージックの巨匠にも多大な影響を与えたインド古典ヴォーカリスト。1972年にパリで三日間に渡り行ったコンサートでの録音で、彼の弟子のラ・モンテ・ヤングとマリアン・ザジーラがタンブーラ、テリー・ライリーがタブラで参加した公演。まさに神域突入したと思える、黄泉世界のラーガが流れを渡る極上の一枚。一昨年のラモンテ同様、恐らくこのアルバムもレア化すると思われるのであるうちに買った方がいいと思います。この人の名前を知らない人は絶対に聞くべし。

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7. 高田みどり - 鏡の向こう側 (WRWTFWW)

昨年のリイシューで最も話題となった一枚と自信を持って言える紛うことなき名作。このリリースを機に彼女の海外公演も増えているように思います。ベルリン・ラジオ・シンフォニーのソリストとしてデビュー後、1980年代、アフリカやアジア各地を巡って伝統音楽へと探求を深めた彼女は、ガーナやブルキナファソセネガル、韓国などの演奏家とセッションを重ね、音と人体との一貫性というインデグラルなコンセプトを基に、アフリカの動的な音楽性とアジアの静的なスピリットを統合。精神性の上に成り立つ独自の世界を華開かせました。人力ミニマル・ニューエイジという点でも誉れ高き一作。こちらは、こるすとれいんす氏がニューエイジ・ミュージック・ディスクガイドにも載せています。また、昨年末に彼女の参加した伝説的アヴァンギャルド・ミニマル・グループ、Mkwaju Ensembleの2作もColumbiaからリイシューされているのでそちらにも注目です。

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6. Michel Banabila - Trespassing (Séance Centre)

83年から活動する、御年56歳のオランダを代表するサウンド・アーティストにしてコンポーザー、プロデューサーのMichel Banabilaの激レア盤「Marilli」と、80年代から現代までの未発表音源をコンパイルした歴史的一枚。こちらは上に載せたビバリー・グレン・コープランドを再発しているInvisible Cityの傘下のレーベルから。アジアからアフリカ、中東など、世界各地を異国を訪問し、現地素材をフィールドレコーディングした土着的なサウンドを、シンセサイザーや当時の電子機器を用い再構築したトライバル・エスノ・アンビエント大傑作。上にも書いた通り、個人的に辺境の音と欧米の音楽が邂逅を果たした音が好きなので、これはストライク・ゾーンに刺さりました。ヴァイナルは少々値が張りますが、アップルミュージックにもあるので是非聴いて頂きたいマストアイテム。

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5. MACINTOSH PLUS - FLORAL SHOPPE (OESB)

こちら、初のオフィシャル再発いうことで、昨年の夏頃に馬鹿みたいに高い送料を払って、未だに配送されて来ておらず、確かめようがないのですが、長いことやってるレーベルだし、きっと送ってきてくれるという期待を込めて4位に。もはや、メジャーにも届いたんじゃないかとさえ思えるヴェイパーウェイヴの金字塔であるこの作品は、三年前の12月頃の時点で代表曲「リサフランク420 / 現代のコンピュー」の再生回数が(確か)100万回だったのがなんと現在再生回数3600万回という驚異の知名度を誇るにまで至りました。並みの邦楽ロックよりよっぽど有名じゃねぇかと感嘆させられるものですが、オリジナルのカセットが30000円くらいだった頃にこれを所有していた知人に売ってもらえば良かったと悔やまれる限りです。幾度となくこのオリジナル・カセットのブートが出回り、それすらも入手困難。しかし、それだけ音楽ファンを魅了したという事実は、Vektroidという女性の揺るぎない才能が為せる業。ヴェイパーウェイヴというムーブメントが残したこの偉大なる功績は時代を超えて続いていくことになるでしょう。

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4. Charlemagne Palestine - Strumming Music (Aguirre)

ラ・モンテ・ヤング、テリー・ライリー、スティーヴ・ライヒ達と共にミニマリスト四天王として揺るぎない地位を誇る名作家、シャルルマーニュ・パレスタインの74年最高傑作の再発盤(しかも、オリジナルはなんとテリー・ライリーからライヒ、パンディット・プラン・ナートまでも擁する仏名門Shandarからという折り紙付きの大名盤)。これを再発したベルギーのAguirreもまた現代のShandar的な立ち位置にある名門。シンプルなピアノの反復が極上の倍音を放射し、それが延々と続いていく様子は、永遠という一つの壮大な宇宙を彷彿させます。ゆったりと時間をかけて、恍惚感溢れる演奏へと移ろったり、長い時間をかけて、音楽を装飾していく静謐で細緻な至高の音楽。まさしく、ミニマル・ミュージック最高峰の一枚。ヴァイナル・カッティングはRashad Beckerとプロダクションも最高に分かってます。限定1000枚、あるうちにお求めしましょう。

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3. V.A. - Outro Tempo (Electronic And Contemporary Music From Brazil 1978-1992) (Music From Memory)

アンビエント、バレアリック、ニューエイジモンド・ミュージック…。オブスキュアの極みといえる音楽の数々を発掘してきたオランダ最大級の気鋭レーベル、Music From Memoryがこれまでのブラジルもののコンピレーションの概念を覆すブラジル産秘境電子音楽の編集盤を発表しました。主に伝統的なブラジル音楽のエッセンスやその発想にフォーカスが置かれ、アンビエントから黎明期のエレクトロニカ、ジャズフュージョンスティーヴ・ライヒ式のミニマリズムの要素にまで光が当たっている。民族史が育む越境的なグルーヴ、成層圏を飛び越えてしびれるような電子音、霊性さえ感じるスピリチュアルな展開、全てが限りなく美しく、まさしくレーベルカラーの集大成ともいえる。これらの作品のオリジナルは入手困難を極めるレア盤ばかり。そして、Piry Reis(Piri)やEgberto Gismontiといった大御所が関わった楽曲が収録されていることにも注目すべきでしょう。

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2. Roberto Musci - The Loa of music (The complete sessions) (Soave)

昨年ブログに全力を挙げて取り上げたこちら。イタリア・ミラノ生まれの音楽作家、パフォーマーにしてサックス・ギタープレイヤー。1974年から1985年にかけて、フィールドレコーディング素材や楽器を収集するため、アフリカやインド、中近東に赴き、その結果、スケールやリズム、音楽制作や演奏に於いて、土着の音楽に深くインスパイアされた音楽を(プログレ・レコメン系でおなじみ)クリス・カトラー主催の「ReR Megacorp」やJim O'RourkeやFred Frithといった大物を擁するカナダの名門「Les Disques Victo」などから発表。また、80~90年代にはイタリアの国営ラジオ・ステーションの「Rai」や「Radio Popolare」などで、エスニック~電子音楽実験音楽などを発信し、IBMNikeなど数多くのビデオ~コマーシャル・ミュージック、舞踊、無声映画のサウンドトラックなどを手がけ、1987年には、彼の作品『Water messages on desert sand』が英国グラミー賞にノミネートされています。ここまではブログからの引用ですが、この人のこのアルバムをリリースした「Soave」(2017年設立)というイタリアのレーベルは、同国のアンダーグラウンドの音楽を再評価するムーブメントをより加速させており、僕が昨今イタリアの地下シーンに個人的に注目するきっかけを作ってくれました。このレーベルの作品は昨年数枚購入しており、どの作品を選ぶか相当迷いましたが、歴史的意義という観点でダントツこれでした。今作はオリジナルのマスターテープから起こしたコンプリート・セッションで、当時未収録だったアウトテイクを全て収録。アフリカから中東、インドといった彼の訪れた国々の伝統音楽の素材をふんだんに利用しており、さらにブードゥー教や黒魔術にもインスパイアされているとのことで、非常にドープかつ奥深い音楽が形成されています。現地素材がふんだんに活かされており、DJのネタとしても秀逸かもしれません。昨年聞いた音楽の中でも、最も素晴らしい部類に入る紛うことなき名作。

http://zangiriheads.hatenablog.com/entry/2017/08/12/185016

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1. 灰野敬二 - わたしだけ? (Black Editions)

ゆらゆら帝国のレア曲欲しさに「東京フラッシュバック2」を買った僕を、ジャックスの名曲「マリアンヌ」のカバーでイチコロにした日本、いや、世界最強のアウトサイダー灰野敬二のピナコテカからの歴史的ファースト・アルバム。灰野敬二という存在を知ったことで亡き生悦住氏が運営したPSFやモダーン・ミュージックを知り、僕は日本のアングラの音楽へと吸い込まれていきました。灰野さんで初めて買ったアルバムは不失者の「まぶしいいたずらな祈り」で、6年前の当時、エクスペリメンタルの右も左も分からなかった僕には、アヴァンギャルドも超越した黄泉の音楽に打ちひしがれるばかりでした。灰野さんのソロにはCDで拾ったこれを初めて聞き、あのときはこれは全然分かりませんでした。しかし、深層意識ではこのアルバムを好きになりたい、かっこいいという思いがあり、それから何年か経ち、エクスペリメンタルやアヴァンギャルドという音楽に日常的に触れるようになった昨年のこの再発でしっくり来ました。独奏により、即興で繰り出される無我の言繰り、深淵から内的宇宙を突き破るギターの咆哮、漆黒の中で全てを破壊し、無に返すノイズの絶叫が、この完全なハーモニーとブレイクダウンの中で混ざり合い、あらゆる希望や絶望を宇宙の彼方へと追いやっていく。約三十分に渡るラスト曲であり、彼の名著のネーミング元ともなっている「捧げる」にこの音楽の全てが詰め込まれています。このアルバムも今や何度聞いたか分かりませんが思い出深い一枚。ヴァイナルで持っていられることが嬉しくてたまりません。ただ、未だに彼のライブを見たことがないので、今年こそは…という所存です。

さて、ここまで18000字、長いことお付き合いいただいてありがとうございます。今年も面白い音楽見つけて生活・趣味共に盛り上げていきましょう。