Troupe École Tudu - Oyiwane

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秋もそろそろ色付き始める頃でしょうか。読書の秋と言いますが、僕は秋になると音楽の再生回数が増えるような気がします。自然と芸術に触れたいという思いにさせてくれるから秋は好きなんですよね。ところで、1980年代に西アフリカの国家、ニジェールの北部の小学校で女子生徒たちによって制作された幻のカセット音源なんていうのがあります。文化の秋こそ、ガンガン異国の文化に触れましょう。そんな彼女たちのグループ、Troupe École Tuduは、八十年代後半から九十年代前半にかけて活動し、ニジェール北部で最大の都市アガデスのある地区からその名前を取ったそうな。ベルベル人系の遊牧民トゥアレグ系ギタリストのKader "Barmo" Ballaがこの音楽グループの創設者とのこと。「ギター」というのは、Les Filles de Illighadadの記事でも述べたように彼らトゥアレグにとって、実に縁の深い楽器で、「トゥアレグ・ギター」(=通称:砂漠のブルース)なんて音楽ジャンルがあります。Kader "Barmo" Ballaにとって、ギターは当時未知の楽器で、まだ数年間しか経験を積んでいませんでした。しかしながら、彼のノートは最小限に抑えられ、マリやギニアのフォーク・ミュージックでよく使われる技法であるボーカルを反映したメロディーを取り除くなど、革新的な演奏を披露していました。

1985年、この年は様々な学校の間で音楽のコンクールを開催したそうです。彼女たちのデビュー作「Oyiwane」(「Greetings to Everyone」)はそのコンペで1等賞を受賞し、ニジェール全土の注目を集めました。翌年、Mamman Sani Abdoulayeの独創的な作品で知られる小さなブティックのレーベル「Hasada」のスタジオに招待され、そのアルバムを録音する機会に恵まれました。彼らの楽曲はトラディショナルなフォーク・ソングとオリジナルの創作をミックスした楽曲でしたが、実は内容は政治的なものでもあったそうです。大規模な農村移住、干ばつ、出国の時代であった当時のニジェールにて、彼らの歌は伝統文化を強調しながら、特に若い女性のための教育の重要性を強調し、同志たち現代の遊牧民へのメッセージを歌いました。彼女たちの音楽はニジェール全土で称賛を受け続けることに。その成功に続くように他の学校でも同様のギター/ボーカル・グループが結成されていくこととなります。このスタイルの音楽は、1980年代後半から90年代初頭にかけて人気を博し、現在のニジェールの女性音楽集団の形成に繋がったとされています。にしても初期のAli Farka Touré辺りを彷彿させてくれる、牧歌的な演奏と清らかな歌声が素晴らしい。音楽に癒される瞬間って実に尊い景色を見せてくれるものだなあと改めて実感します。イマイチ、Kader "Barmo" Ballaと歌い手の少女らの関係性は調べてもよく分かりませんでしたが。この作品は元はカセットでのリリースで、サハラ砂漠以南の音楽を掘り起こす現代の秘境と言ってもよい名レーベル、Sahel Soundsよりリマスター仕様でLP化されました。このレーベルの作品も後々入手困難になるものが多いので早めに入手した方がいいかもしれませんね。国内ではMeditationsに入ってます。