Pier Luigi Andreoni, Francesco Paladino - Aeolyca

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最近、個人的な興味でイタリアのアンダーグラウンド・シーンに興味があるのですが、やはりドイツやイギリスと比べて、日本では知名度の低い同国のシーン、日本人の僕にとっては未開拓もいいところで、掘れば掘るほど面白い音源が出てきます。そのうちに一昨年設立され、昨年にリリースを始めた同国の新鋭レーベル、Soaveに出会いました。昨年当ブログでも取り上げたロベルト・ムスチやピエロ・リュナーレのArturo Stàlteriなどを始め、イタロ・ディスコからライブラリーミュージックまでもが渦巻く同国の地下シーンから重要な作家を再発し、既にそのカタログは14作を数える勢いです。

今回紹介するのは、A.T.R.O.X.やLa Patonaといった同国地下シーンの前衛的なニューウェイヴ・バンドのメンバーとして活動したことでも知られ、重鎮リッカルド・シニガリア(Organic MusicのCheeさん主催の17853 Recordsからも編集盤が出ています)ものちに参加した同国地下最重要角のエスノ・トライバル・アンビエント・グループ、The Doubling Ridersを率いたピエール・ルイージアンドレオニとフランシスコ・パラディーノの共作「Aeolyca」のSoaveからの再発盤。本作は、1989年にオハイオ州トレド拠点のレーベルで、Vidna ObmanaもリリースしているViolet Glass Oracle Tapesからカセットでリリース。今となってはあまり出回らない貴重な作品です。

イタリア・ピアチェンツァにあるスタジオで、前者らによるRoland S 50を2台、Yamaha tX 81 Z、 マリオ・チチョリによるエオリアン・ハープ(1988年に音楽フェスティバルの「タイムゾーン」で披露された風を浴びることで音を生み出す楽器)などを用いてアンドレオニによって録音、ミックスは、ミラノのコンピューター・スタジオでシニガリアが手掛けています。この「Aeolyca」はプラスティック・アート(sculpture) と音楽 (doubling music=オーバーダブのことでしょうか?)の何気ない出会いによって生み出されたものだそうです。これらの自然音を底流にアンドレオニとパラディーノによるシンセサイザーやサンプリングを掛け合わせて制作されています。

ハリー・ベルトイアの鋭利な音響彫刻へとオーガニックなニューエイジの要素を持ち込んだかのような独創的な音場は、荘厳なアトモスフィアを香らせながらも、どこまでも広がりを見せるようであります。電子音楽がより多様により自由に繰り広げられた80年代の末期にあって、この時代の集大成ともいえる壮大な実験が試みられた傑作。