X.Y.R. - El Dorado

世界各地のカセットカルチャーを追いかけてきた人にはおなじみの人でしょうか。僕がリリース当時見逃していたニューエイジアンビエントの名作の再発盤を紹介します。

Constellation TatsuやNot Not Fun、今は亡きSingapore Sling Tapesなどといった、テン年代のカセット文化の軌跡をなぞるようにロシア・サンクトペテルブルグアンビエント作家、Vladimir Karpovによるソロ・プロジェクト、X.Y.R.はリリースを続けています。

2015年に、現行ヴェイパーウェイヴの聖地の一つ、Illuminated Pathsからカセット・アルバムとしてリリースされた本作は、限定25部のみの貴重な作品で、再発が待望されていましたが、グラスゴーのシンセ・ファンク・ユニット、Cru Serversやアンビエント・ポップの最先端を行くカナダの女性プロデューサー、Ramziなど、今が旬のアーティストをカタログに抱えるグラスゴーの新鋭レーベル、12th Isleから晴れてLP化されました。

ジャケット・アートワークは、Lnrdcroyが1080pに残した名作カセット作品の再発盤や、Juno plusの"Best of 2015 : Top 50 Singles"にも選出された邦人プロデューサー、Yoshinori Hayashiなどの作品のアートワークを手掛ける気鋭デザイナー、Al Whiteによって新装。より忠実に、ミステリアスでサイケデリックな彼の音楽世界が解釈されています。

本作は、2014年の四月から八月にかけて、彼の自宅の寝室とタルホフカにある別荘で録音。Formanta-MiniやAlisa -1387といったヴィンテージなソ連製のシンセサイザーや木のフルート、おもちゃのパーカッション、ペダル・エフェクトやルーパー、マイク、フィールド・レコーディングなどを用いて制作されました。

神話の黄金の町についての伝説の物語というコンセプトのこのアルバムは、Popol Vuhへのロシアからの返答とでも言えそうな、後期クラウトロックや初期のニューエイジ・クラシックに強くインスパイアされたコスミッシェ・ムジーク直系のディープ・アンビエント。トイフルな楽器隊が奏でる風趣に富んだ旋律、穏やかに流れるアナログ・トーンに、スロウなリズム、その全てが予定調和的な魅力を発揮。惑星間の交信さえも思わせる壮大なスケールのなかにありながら、とてもパーソナルに聞こえるスピリチュアルなサウンド。まさに姿勢を正して、ただ雑念を傍観するのに相応しい音楽でしょう。

既にレーベルではソールドアウトしている本作。オリジナル・カセットのみならず、リイシュー盤も非常に人気の作品のようで、マーケットプレイスでは多くのコレクターのWANTに位置しており、海外からは入手が難しいようですが、京都のレコードショップのMeditationsに入っているようなのであるうちに是非。ちなみにバンドキャンプだとデジタルはname your priceなので、絶対ダウンロードしましょう。