First half of 2018 : Best 30

夏もいよいよ本番です。みなさんいかがお過ごしでしょうか。京都の夏は相変わらず蒸し暑いです。僕は大学に復学してからというもの、当たり前の事ながら日々の生活が忙しくなり、リストアップもだいぶん前から始めていたのに筆が進まず、随分と発表が遅れてしまいました。しかし、休学中の今年の上半期の1月から3月頃は人生で一番多くの音楽に触れた期間だったんじゃないかと思います。ただ、その分、逆に紹介する音楽を凝縮してもいいなと思い、今回はベスト作品の数を従来の50ではなく30としました。今回はリストを200作品弱ほどから厳選したものになっていて紹介するものは全て個人的に名作にタグ付けられる作品です。全部最高!それでは、楽しんでお読みいただければ幸いです。

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30. Gianluca Favaron - Variations (Fragments of Evanescent Memories) (13)

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自身の運営する、現行イタリア地下シーンの重要レーベル「13」を中心に活動する同国の実験作家、ジャンルカ・ファバロンの最新作。テープ・レコーダーやアナログ・シンセ、ギターを始め、フィールドレコーディングやコンタクトマイク、ハイドロフォンなども用いて制作。ジャケット・アートワークは、Under The SnowでGianluca Favaronと共に活動するアーティストであり、Gigi Masinのアートブック付きタイトルも担当しているStefano Gentileによるもの。「バリエーションも繰り返しの一種である」というシェーンベルクの言葉を引用しており、本作は「反復」に重きが置かれた作品のようです。静寂と轟音の間を行き交うノイズ・エレクトロニクスが凄く気持ちイイ、ダークな世界観を生み出しています。こういう瞑想的ですらある、精神世界へと浸透するノイズ・サウンドを作れるのは凄い。Cold Springが配給しているのも納得がいく作品です。

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29. Hastings of Malawi - Visceral Underskinnings (Sub Rosa)

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シンセサイザープログラマー/作曲家であり、元Nurse With WoundのメンバーでもあるHeman Pathakと、昨年のBrumeとのコラボ作やJohn Edwardsとの共演作でも知られるJohn Grieve、Dave Hodesの三人によるダダイスト・グループ、ヘイスティングス・オブ・マラウィの37年ぶりの新録音。しかし、四十分にも渡るマラウィ初代大統領のヘイスティングズ・カムズ・バンダや十九世紀後半から二十世紀初頭に活躍したアメリカの黒人歌手のGeorge Washington Johnsonの声などを始めとし、グーグル翻訳と思われる日本語の音声までもサウンド・コラージュ、さらにはこの三十年間に録音された彼らの音響彫刻の幾つかも使用、奇怪極まりない、アヴァンギャルド直系のサウンドを提示。八十年代のNurse With Woundの作品と言っても騙せそう。しかし、アップルミュージックで聞いたのでヴァイナルにはクレジットがあるか分からないけど、ジャケもやっぱりバブス・サンティニなのかな?そこんとこ知ってる人いたら教えてください。

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28. Fossil Aerosol Mining Project - August 53rd (Helen Scarsdale Agency)

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アメリカ中西部の音響考古学者4人組によって結成された、ゾビエト・フランスともコラボレーション・シングルを出している謎めいたグループの最新作。損傷したテープ・ループを基調に、アンビエントというには不気味なサウンドスケープが広がり、調子よく腐食したドローン状のシンセレイヤーが連なっていくコラージュ・エレクトロニクス作品。今年聞いたアンビエント(?)の中では一番異質な作品の一つで、ジワジワと惹き付けられる、ミステリアスで退廃的なサウンドワークに恍惚とさせられます。M.B.のアンビエント作品が好きな人にも薦められる作品だと思いますよ。

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27. Sarah Davachi - Let Night Come On Bells End the Day (Recital)

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カナダ出身の女性シンセシストで、カリフォルニア大学ロサンゼルス校で音楽学の博士としての肩書きも持つサラ・ダバチーの最新作。Sean McCannが主催する米地下シーンの聖地、Recitalからのリリース。これがとんでもなくいいんですよね。メロトロンと電子オルガンを中心に組み上げ、バロック音楽からポストクラシカル、ミニマル・ミュージックまでもが繋がったアンビエントの結晶的作品。ショパンから影響を受けて音楽を作り始めたというのも合点がいきます。幽玄なサウンドの中に確かな温かみが存在していて、聞く度に心も洗い流される気持ちです。この人も随分前から応援してきたから、遂にこれほど洗練されたサウンドを鳴らすようになったんだと思うと感涙です。

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26. Brett Naucke - The Mansion (Spectrum Spools)

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これまたエレクトロニカの現在形とも言える霊性とノスタルジックが同居した美麗サウンド・スケープで超イイ!! Editions Mego傘下のSpectrum Spoolsから、米国のエクスペリメンタル・ロック・バンド、ONOでも活動していたBrett Nauckeによる同レーベルからの二作目のアルバム。昔の作品から既に片鱗は感じていましたが、完全にもう音楽家として洗練された音しか出て来ない領域から鳴ってます。アンビエントからニューエイジ、コンクレート・サウンド、音響テクノ、フィールド・レコーディング等がハイブリッドに混ざり合い、音楽的爆発の領域へと至った一枚。しかしまた凄く瞑想的なサウンドでもありますね。使ってくる音色の何もかもが心地よいもんで、ツボを心得ているなあ、なんて上から目線ですが感心しちゃいます。それでいて一作の中で非常に多様なエクスペリメンタルが息づいているもんだから凄いもんです。これからも長くお世話になりそうな傑作かな。

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25. t.e.s.o. - costruzione 04 (Aperture)

Bandcamp

何故かレコチョクでも楽曲が配信されているということで検索してびっくりしたイタリアのデュオ、t.e.s.o.のセカンド・アルバム。急進的な建築やブルータリズム、イタリアの建築家集団、スーパースタジオのコラージュなどからインスパイアされているというダーク・アンビエント/ミュータント・テクノ傑作。ズシリと重い野太いビートに、大胆に弾けるドラムセクション、アブストラクトを極めたエクストリームな侵食感・・・・鼓膜を痙攣させる尖端的なサウンドはエクスペリメンタル・ミュージックが好きな人間すべてを魅了してやまないでしょう。まさにクラブミュージックに寄生したエクスペリメンタルの最新系。ShapednoiseやEmptysetなんかが好きな人には確実にマストな逸品ですね。

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24. The Space Lady - On the Street of Dreams (Bongo Joe)

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サンフランシスコのアウトサイダー・ミュージックにおける伝説として、羽根突き帽子を被ってシンセを弾き語る平和の伝道師として、長年活動してきた女性作家、ザ・スペース・レディが御歳70歳にして数十年ぶりの新作。かなりの年月が経ってからの作品ながら、カルトな人気を生んだそのクオリティは健在。レノン=マッカートニーの”Across the Universe”などを始めとした、カヴァー曲で構成されるアルバムながらも、他のどんなアーティストでも真似出来ないであろう、このえげつないユルさには引きずり込まれますね。ユルユルでフニャフニャなボーカルと白昼夢を彷徨う蕩けるカシオのシンセの音色ら卒倒もの。アコーディオンを盗まれてから、羽根つき帽子を被って宇宙からの平和と調和のメッセージを歌い始めたというエピソードにそそられるだけでは終わらない、オリジナリティーの塊だと思います。いつか日本でもライブして欲しい・・・・・

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23. Controlled Death - Symphony For The Black Murder(Urashima)

Soundcloud

ジャパノイズのアイコンとして、Merzbowや非常階段と並び称される、日本屈指のノイジシャン、マゾンナの新名義、コントロールド・デスのデビュー作は伊ノイズ名門中の名門Urashimaから。「山崎マゾのダークサイド・プロジェクト」とユニオンの紹介文にある通り、非常に退廃し、鬱屈とした破壊的なノイズがズブズブに垂れ流されていきます。ベアーズで、Grimの大阪初公演でもこの名義のライブを観ましたが、そこで繰り広げていたものと同様、Urashimaのレーベルカラーと共振したニヒルなノイズが大放出。ミニマルな展開ながらもロック的に聞かせる衝動性、深くエフェクトの掛かった慟哭の暗黒ヴォイス。極めて破壊的ながら包容力や安心感を感じるのは何故でしょうか。元よりの音質の悪さなど、Urashimaのプレスの問題は欠点なのか、むしろそれが功を奏しているのか、この作品の凶暴さ、粗悪さはより色彩を濃くしている気もします。ノイズミュージックの入門にも最適。2018年国産パワーエレクトロニクスの頂点とでも言うべき傑作でしょう。

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22. Dave Phillips - Ritual Protest Music (Urbsounds label)

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「psycho-physical tests and trainings - 心理的身体的実験と探求」という命題を掲げるアウトサイダーアート集団、Schimpfluch-Gruppe(シンプフルク・グループ)でも活動し、アクショニズム(自身の身体を傷つけるほどに過激なパフォーマンス・アート)というムーブメントを象徴する人物でもあるデイヴ・フィリップスの最新作。かねてより「人間主義」を希求し、あらゆる人間に対する「制限」と「縮小」へと抗議を示した今作。これらの批判の多くは全て彼の自己反映から来ているようです。盟友Rudolf Eb.erによるアートワークも不気味で良い。安穏がいつ暴虐に支配されるか緊張が漂うエクストリームなノイズミュージックの極北。「カッコイイ」音楽を求める人は必聴ですよ。

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21. Uio Loi - Template (videogamemusic)

Bandcamp

ブログ記事にも書いたこの人、一言で言えば、「箱庭サイズのVisible Cloaks」でしょうか。現行ニューエイジアンビエントといったマイナスイオンたっぷりな潤い成分を含みつつ、ゼロ年代エレクトロニカなポップな魅力を存分に発揮したエクセレントな1枚。有機的なシンセの音色、硬質なビート、Orange MilkやNoumenal Loomなんかとも非常に共振するかのように、ポップに「今」を表現したエクスペリメンタルの最新系です。エイフェックスやYMOにも影響を受けているというのは凄く合点が行くし、元々ブラックメタルが好きだったというのもグッとくる。凄くストーリー性のあるサウンドもエモくて好きだ。UmfangやKinlaw、A I W Aなど個性的なプロデューサーを生み出してきたVideogamemusicというレーベル史上、最良の作品だと思います。

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20. Bruce Gilbert - Ex Nihilo (Editions Mego)

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Editions Megoカタログ250番目は、ポストパンク重要バンドのWireや音響インダストリアル重鎮グループのDomeなどのメンバーとしても高名なブルース・ギルバートの最新作でキメてきた!彼の諸作に見られる異質極まりないテクスチャーと反復するノイズ・ビートがこの作品にも息づいていて、多分それを受け付けない人もいると思いますが、何といってもそれがこのアルバムの魅力。終始、不穏な電子音や分裂気味なビートで捲くし立て、底知れず不気味な世界へと沈み込んでいくアブストラクト・エレクトロニックの快作。彼が最も忙しい時間を送ったであろう八十年代のオルタナティヴな音楽の空気が余すところなく反映されており、インダストリアルやミニマルウェイヴといった音楽の要素もあちこちに感じます。マスタリングを担当しているのがコンシューマー・エレクトロニクスのラッセル・ハスウェルなのも最高。

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19. TEREKKE - Improvisational Loops (Music From Memory)

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数年前に通っていたというヨガの教室から触発されて考案したアルバムとのこと。前作のアップデート版となる本作は、ニューエイジ道の遥か向こうに突入した一枚です。ムダひとつない、ミニマリズムの骨頂とも言える抑制されたアンビエンス・ループがこの作品の特徴でしょう。ぼんやりと曇りがかったシンセの音色は、表情の読み取れない、異質なアンビエント・サウンドを展開しています。インナーワールドへと深く埋没するように霊的な広がりを持ち、忙しない現代の日常にもゆとりを持たせてくれる、シンプルで端正な響きです。まさに瞑想の為の一枚。

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18. Ezra Feinberg - Pentimento and others (Related States)

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今年の2月にブログ記事も書いた1枚です。Ezra Feinberg(エズラ・フェインバーグ)は以前、Important RecordsやDead Oceansなどからリリースのあったサンフランシスコ拠点のフォークロック・バンド、Citayを率いていた人物。親友であり、師であった人物を失った彼が、音楽生活から1度離れ、家庭と仕事を持ち、深い業を乗り越えた先に生み出した音楽がこの1枚です。グレイトフル・デッドでも演奏しているペダル・スティール奏者、ピート・グラントも参加。アパラチアン・フォークやニューエイジミニマル・ミュージックなどからアプローチした、精霊音楽のような完全性ある響きは聴く人全てを安らぎの境地へと導いてくれます。今年聞いたインストゥルメンタルの音楽では最高峰とも言える美しさでした。アコースティック楽器の温かみと夢見心地のシンセサイザー、アップテンポなフルートなどといった煌びやかな楽器隊が奏でる、仙境すら超越したドリーム・サウンドに触れてください。

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17. Kagami - Kagami (Root Strata)

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今年その活動に終止符を打った名レーベル&ブログのRoot Strata最後の作品は、このレーベルの主催者にして、昨年の吉村弘の再発にも関わるMaxwell August CroyとVision HeatのJared Blumによる新ユニット、Kagamiの第1作目。本作は2014年から2017年にかけて録音された音源を収録したもので、以前からプロジェクトは構想されていたようです。マスタリングはHelmut Erler、カッティングはD&Mというのもそそる案件。しかし、これまた抜けのいいシンセ・サウンドの連続、浮遊するアンビエンスのの心地よさ、疾走感溢れるポップなアプローチから、瞑想空間へとワープする静謐な味わいまで耽美な美しさに尽きる。任天堂の黄金期のサントラから現行ニューエイジ、シンセウェイヴまでもが繋がった奇跡の一枚。Motion GraphicsやVisible Cloaksのその先を握っているのはこの二人なのかもしれないですね。

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16. Aylu - Serum (Sun Ark Records)

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Orange Milkからもカセットを発表していたアルゼンチンの女性プロデューサー(これがまた美人なんですよね・・・)で、前作までのジューク/フットワーク路線から転じて、Visible Cloaksなんかとも通底するテン年代以降のアンビエント的世界観へと踏み込んできた作品。しかし、普遍性すら感じさせるそのサウンドは非常にポップ。メディテーションズのポップにも書いてありますが、ラスターノートンやメゴ、オレンジミルク辺りのサウンドがごちゃ混ぜになったような稀有な世界観。艶やかでありがらも非常に繊細なビートを基調に、独特のアンビエンスを孕む電子音和やかに、時々差し込まれるミステリアスな彼女の歌声。絶妙に間を生かしたサウンドは日本的な「間」と余白の美学なんかにも通じています。一聴して、ミクロの世界へと引き込まれるかのよう。Sugai Kenが好きな人も多分この作品にはハマるんじゃないかな。

 

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15. Gábor Lázár - Unfold (The Death Of Rave)

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コンシューマー・エレクトロニクスのラッセル・ハスウェルやマーク・フェルともコラボレーションしている、今最も最先端に近い音を出すアーティストの最新作。しかし、15年作から聞き始めて、そちらはかなりハマり、昨年の前作はそこまでピンと来なかったんですが、今回でまんまとツボにはまりました。テクノの最新系と言うべきなのか、爽快な程にストレートなビートとアカデミズムとストリートの狭間を行き交う独特の感性、こりゃマジでヤバいですね。間と余白の絶妙な隙間を突いてきたミュータント・サウンド。ほぼワンパターンの音色でこれだけ攻めた音楽も稀有なはず。テクスチャーの音楽とはまさにこのことでしょう。家で爆音で聞くにも、外行きのBGMにも、DJプレイにも見事にハマってる万能の1枚。

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14. Fallen - ást (Time Released Sound)

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Rock In Oppositionにもタグ付けられるイタリアのエクスペリメンタル・グループ、The Doubling Ridersの名作なんかもリイシューしているカリフォルニアのレーベルから、Midori HiranoさんやMarissa Nadlerとも共演しているイタリアの作家、Lorenzo BracaloniによるFallenの2018年一作目。こういうアンビエントを待っていたんや・・・・これ以上ない・・・・・本気でそんな感じの至高の安らぎを齎してくれるのがこの作品。ピアノ、オルガン、シンセサイザー、ギター、オルガン、あらゆるテクスチャーが澄み渡っていて、1音1音が響き渡るたび、愛おしい景色が広がっていくような、そんな充足感がこの作品にはあります。12k的ライクな白昼アンビエントの中でも今年トップクラスに美しいと感じた作品です。この人はもっと知られて欲しいな。

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13. Koenraad Ecker - A Biology of Shadows (In Aulis)

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二年位前に来日したときにライブも見たLumisokeaの1/2であるKoenraad Eckerの三年ぶりソロ作品。サポートメンバーにもKai FagaschinskiやMichael Thieke、Chris Heenanなど即興~フリージャズ系の人脈が多く集った編成。Lumisokeaもそんな感じなんですが、音の質感と空気感としては、僕が一番聞きたいサウンドを地で行っていて、聞いてて恍惚感の極みですらあります(エクスペリメンタル系がみんなこんな音だったらいいなあなんて・・・)。ズシリと重いコンクレート・サウンドに、時折のスポークン・ワード、冷涼な電子音のアンビエンス、慟哭する一音一音に激しく酩酊させられるダーク・エレクトロニクスの深遠。A5の”L'incendio Genovese (In memoriam Carlo Giuliani)”の冒頭で鳴り響く歪んだ聖歌のようなボイス・エフェクトには完全にトビました。前作同様ラシャド・ベッカーによるマスタリングなのも頷ける傑作ですね。あとアートワークが最初普通に岩だと思ってたのが徐々にファンシーなイカに見えるようになってきたのが悔しいです。笑

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12. Pendant - Make Me Know You Sweet (West Mineral Ltd.)

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バンドキャンプでもベストセラー入りしていたので、見かけた人も多いのではないでしょうか。人気プロデューサー、フエコ・エスが始動した新レーベル、West Mineral Ltd.からの自身の新名義、ペンダントのデビュー作。これがもうおっかなびっくりのディープ度で完全に異世界へと連れていかれますよね。スロウペースにズブズブ、ズブズブと沈み込んでいく冒頭曲から既に異郷の地にいます。凄く快楽的でもあるし、多方面からの実験要素が詰め込まれながらも、音楽的にアプローチ。アンビエント、ドローン、フィールドレコーディングなど、様々なテクスチャーの果てにある電子音響の到達点的な一枚。ラシャド・ベッカーによるマスタリングというのもこの作品に箔を押しています。そこからベーシックチャンネルとかガスに繋がる訳だし。クラブでかかってたら、意識飛んじゃうかもなくらい、ホントに傑作ですよ。

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11. The Caretaker - Everywhere At The End Of Time Stage 4 (History Always Favours The Winners)

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漆黒のダーク・アンビエント・クラシカル紳士、ザ・ケアテイカーの三年間に渡る六部作の四枚目。新譜出すたびに高騰するほど人気のあるLeyland Kirby諸作ですが今作も完売御礼って感じで、国内には残ってなさそうですが、今さらヴァイナルでStage 1からちゃんと集めとけばよかったと後悔してます・・・Stage 2くらいまでは、夕方の哀愁とともにノスタルジアに浸る宵闇のクラシカル・ミュージック、みたいな形容が似合う和やかなムードがありましたけど、ここまで来てノイズ・ミュージックとかの領域までも踏破。今作でも彼のこだわり通り、百年前のヴィンテージなレコードをサンプリングしているのか、Stage 1辺りで鳴らしてた音と思われるサウンドを相当イビツに加工したホラー極まりない世界観へと仕上がっています。Nurse With Woundのステイプルトンに感想を聞いたらどんなことを言うのか気になるな。Stage 2では手抜き感を少し感じたりしましたが、今のところ、Stage 1と同じくらい好きかな。次作は九月に出るそうで楽しみです。ちなみにバンドキャンプで買うとシリーズ全部がリリースされるたびにダウンロード可能になるのでお薦めです。

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10. Hailu Mergia - Lala Belu (Awesome Tapes From Africa)

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これぞ、エチオジャズの器量!個人的に辺境音楽へとズブズブにハマっていくきっかけになったのが、このエチオピアのキーボード奏者ハイル・メルギアの2014年の再発なんですが、なんとその彼が新作を出すというわけで買わないわけがありませんでした。しかも、ゲスト奏者で、The NecksのTony Buck、アップライト・ベースにMike Majkowski(二人とも実験畑)が参加しているというのもよく分からないことにもなっていますが、フリー系の要素ありつつも、れっきとしたエチオジャズ・サウンドが鳴り響いています。特にゲストの2人はこんなものまで演奏出来るのかというところに僕の中では大きな驚きがありましたが……エチオ歌謡(演歌のように聞こえることでも有名なエチオピアの大衆音楽)なんかも含めて70年代に黄金期を迎えたエチオピア音楽の粋を集めた1枚と言えるでしょう。

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9. Bobby BeauSoleil - Voodoo Shivaya (White Dog Music)

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世界中の様々なカルチャーに影響を与えてきたカルト指導者・犯罪者であり、昨年獄死し、大きな反響を呼んだチャールズ・マンソンの「マンソン・ファミリー」の一員であり、また、犯罪者(現在も服役中)のボビー・ビューソレイユ(御歳71歳)のオレゴン州の刑務所内で録音された最新作。カバー曲を中心にオリジナル曲も披露しており、僕も個人的に好きなネオフォーク・プロジェクトのBlood Axisも参加、相変わらず渋い作風で決めてきました。ブルース色の強い曲からネオフォーク、フューネラル・ドゥーム、ブラックサバス+疾走感なハードロック、さらにはインド古典音楽にもインスパイアされたような楽曲も入っていて、獄中にいるとは思えない非常にバラエティ豊かで現代的な楽曲の数々になっています。獄中で彼は何を思ったのでしょうか、ディスク2では非常にパーソナルな面とも言えるようなリリカルな音楽色が全面に出ていますね。あまり流通してはいないようですが、アップルミュージックでも聴けますし、物好きだけじゃなく、純粋に音楽好きには薦めたい一作です。

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8. Young Echo - Young Echo (Young Echo Records)

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前作がリリースされた当時は、学校の先輩に「騒がれすぎで大したことないよ」と言われて真に受けてましたが、聞き直した前作も今作も凄い……(今回は大して話題になっていませんね)マッシヴ・アタックやポーディスヘッドを生み出した土地であり、今でもブリストルの名レコードショップ、Idle Handsには"Bristol Releases"という現行シーンのコーナーがあるほど(また、Rewind Forwardというディストリビューターの存在も大きい)ブリストルの現行シーンを代表する彼らの久々の最新作。24曲59分というボリューム、そして何よりこの分厚いビートの壁、完全に国籍を超越したアブストラクトな衝撃の連続には、ズブズブとドープな音楽の海へと引き込まれていきますよね。エクスペリメンタルとヒップホップ、テクノの間で揺れ動くような現行クラブ・サウンドの金字塔。

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7. Dedekind Cut - Tahoe (Kranky)

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Ninja TuneからのLee Bannonとしてのリリースでも知られているこの人、デテキント・カット(で日本語読みは合っているのか?)。新作はまさかのKrankyからというのが非常にそそる案件であった今作、アメリカのその時代の空気と原風景をよりモダンに解釈しているとも言えるレーベルカラーにもフィットしているような気もしますね。神聖さや敬虔な要素を孕むスピリチュアル・アンビエント大作に仕上げて来ました。なんと言っても瑞々しいシンセの音色、ニューエイジ・ミュージックにも通じると言えるかな、ソレが完璧に僕にとってツボなんですが、マントラやフィールドレコーディングなんかも駆使し、あまりにも広がりのある、崇高な音風景を描いていく作品です。今回このベストで紹介している作品の中でも万人に薦められ得る作品なんじゃないかなとも思っています。

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6. Mark Fell - Computer Generated Rhythm For Microtonal Metallophones (Boomkat Editions)

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この人やっぱり外さない……やっぱりとんでもなく良い。今作は、Drumming Grupo De Percussão De Serralvesというポルトガルのグループとのコラボレーション作品。そして、このアルバムのキモとなるのが、執拗なまでのミニマリズムポリリズムへの執着、それがこの作品をこの作品を孤高の境地へと高めたのだと思います。そして、クセナキスの考案した微分音からなる金属製の打楽器を用いており、もはや演者たちは完全にトランス状態。そりゃ、ぶっ飛んだトリップ・ミュージックに仕上がりますよね。幽玄な雅楽を聞く時の感情にも似た静謐なフィーリングに包まれる奇跡の一作です。

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5. STRUGGLE FOR PRIDE - We Struggle For All Our Pride (WDsounds)

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個人的には初めてちゃんとアルバムで聞くこととなる日本のハードコア・パンク・バンド、ストラグル・フォー・プライドによる最新作であり、「2018年東京の深い憎しみの音楽」です。しかし、このアルバムはただのハードコア・パンク的なアルバムではなく、カヒミ・カリィ中納良恵(EGO-WRAPPIN`)、NIPPS小西康陽などといった異様なメンバーがゲスト参加していて、邦楽シーンの粋を集めたような作品と言えるでしょう。ヒップホップやダブ、アブストラクトにも寄った楽曲からもちろんハードコアまで密度の濃い1枚なんですが、僕はこれを聞いていると、毛色は全く違うのにK DUB SHINEとかTHA BLUE HERBのアルバムを聞いている時のような、そんな感情が湧いてきます。ディスク2のECDがゲスト参加したライブ録音も凄く良い。多分これ僕にとって生涯に渡って聴いていくアルバムのひとつになるでしょうね。

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4. Young Fathers - Cocoa Sugar (Ninja Tune)

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僕は観れてないのですがタイムラインでも話題になっていた映画「トレインスポッティング」にも楽曲が起用されたり、マッシヴ・アタックにベタ褒めされているなど、以前にも増して注目を浴びるヤング・ファーザーズの久々の最新作。今年最大の驚きだったのが、なんとなくMikikiのアンケートに答えたら、1名だけに当たる彼らのサイン付きカラー・ヴァイナルが当たったというトンデモな事案、これがよりこのアルバムを思い出深く彩ってくれる出来事かな。音楽は最初(レコード当たる前)は入ってこなかったんですが、レコードで聴き込んで行くにつれ、ズブズブと深みにハマっていきました。レコードには何回針を落としたことか、、、思い入れ補正がデカいかもしれませんが、完全にキマってるアブストラクトな変則的ビートの連続、独特の艶のある歌声、ポップ・ミュージック"だからこそ"出来る実験的なアプローチの数々は必聴の価値アリです。

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3. Mouse On Mars - Dimensional People (Thrill Jockey)

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今年、僕にとって、海外の音楽で最も衝撃を受けた音楽と言えるのがこれでしょう。今年これを聞くまで数年彼らの作品を聞いていなかったので、マウス・オン・マーズとマウス・オン・ザ・キーズが頭の中でごっちゃになっていました。しかし、ミニマル複合ポリリズムとでも称されるような独特のリズム感迸るこのアルバムの冒頭3曲を思いっきり浴びて完全に解決。こりゃ凄いですよ。ジャスティン・ヴァーノン(ボン・イヴェール)、アーロン&ブライス・デスナー(ザ・ナショナル)、スワンプ・ドッグ等ゲストも豪華過ぎ。コスミッシェなクラウトロックからミニマル・ミュージック、現代音楽、教会音楽、辺境の民族音楽の要素までもが跋扈しているウルトラ・ハイブリッドな作風、そして、何よりそれが何なのか言葉に出来ない得体の知れなさ、これが僕には最大の魅力として映りました。これをカナビス酔い無しで作ってるとしたら奇人狂人の類です。個人的な悪癖として僕はポストロックを嫌う傾向にありますが、これぞ、「ポストロック」と言うべきでしょう。洋楽好きは絶対聞かなきゃダメ!

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2. 頭士奈生樹 - IV (Org Records)

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先日、渚にてとのドッキング・バンドでのライブも初めて拝見しましたが、やはり、頭士さんズバ抜けています。そのライブ(頭士さん自身の曲が中心)でも披露していましたが、このアルバムの冒頭曲の数分にも渡るアウトロ(それもインプロヴィゼーションを怒涛の勢いで詰め込んだ猛烈なアンビエント~ノイズ・サウンド)の壮大さで完全に惹き込む。一曲目のボリュームがとにかく凄すぎて、聞き終わってもいいかなと思ってしまうレベルですが、基本的にインストながらも、1時間13分にも渡るボリュームのこのアルバムは聞きどころ満載。2曲目の大曲「夜想曲」から4曲目「メヌエット」まで日本のアングラ・サイケの粋を凝縮したようなミスティック・サウンド(割礼のファンにはたまらないはず)で圧倒し続け、5曲目16分超えの「狂想曲」も秀逸で、日本的なドロドロしたサイケデリックな情緒や、センチメンタルへと沈み込むような哀愁のサウンドがゆらゆらと揺蕩う夢想のインプロヴィゼーション大曲。ラストを飾る「花が咲きますように」、これはもう仙境へと至った者のみが鳴らせる音でしょう。心の汚れを洗い去るような、星空のように澄み渡る音色、そして後半から始まる歌に込められた優しさには、ただただ「生きててよかった」と思える、そんな純朴な感情を抱きます。ブレることのない、頭士さんらしい作品だと思います。渚にての新作の録音も始まってるみたいだし、楽しみですね。

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1. 土井玄臣 / Motoomi Doi - 針のない画鋲 / Hari No Nai Gabyo (Noble)

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五年くらい前かな、その頃から繋がっているあるフォロワーさんが土井玄臣さんのことをよくツイートしていて、それが頭の隅にずっと刻まれていました。しかし、初めて聞いた時はその良さが分からず、二年前のアルバムもスルーしてしまったのですが、今年は土井さんの音楽を聞くタイミングに恵まれたのか、導かれるようにこの歌声に吸い込まれていきました。土井さんは大阪のシンガーソングライターで、くるりのレーベルのコンピにも楽曲が収録されたりしています。七尾旅人の音楽にうちのめされて音楽を一度諦めたりしながらも、再び歌い始め、それから何年か経った土井さんの最新作が僕の上半期聞いた最良の音楽です。雁字搦めのカルマを浄化する、というと言い過ぎのようで言い過ぎではない、それほどに、優しい土井さんの歌の世界に吸い込まれた僕がいます。多分、歌声で好き嫌い分かれるんだろうな~とも思うんだけど、僕はあまりにも好きです。淡いギターの安らかな響きに乗せて、悲しみと救いの狭間で揺蕩う。僕は間違いなく拾われました。遙か昔に忘れてきた尊い感情が戻って来たようなそんな感触さえこのアルバムには覚えます。音楽を聴いていて、これだけ優しい気持ちになれたのも久しぶりでした。間違いなく一生涯に渡って聞き続けるアルバムになるでしょう。近いうちに、絶対ライブ観たいな。