Emerald Web – Dragon Wings And Wizard Tales (1979)

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先日、こるすとれいんすさん主催の「New Age Music Disc Guide」に参加しましたが、もう、あと二日で文フリでの配布と、筆者は緊張しているところです。さて、そこに寄稿した作品の中で、「載せたいけど、いまいち数聞けてなかったせいで載せられない(怠惰・・・)」というアーティストもありました。その代表例がこのグループ。

1978-90年まで活動したアメリカ・マイアミのキャット・エップル & ボブ・ストール夫妻によるエレクトロニック/ニューエイジ・ミュージック・デュオ、Emerald Web。彼らは約10年のキャリアの中で11枚のアルバムを発表し、プラネタリウムでのライブ演奏、USツアーの敢行、アメリカの天文学者/SF作家のカール・セーガンの映画にサウンドトラックを提供、86年には名作「Catspaw」でグラミー賞を受賞するなど、幅広く活動。

キーボードやデジタルオーケストレーション、フルート、リリコンなどで音楽を作っていた彼らは、 「電子宇宙音楽(="electronic space music")」とアコースティック楽器のブレンドでユニークな音世界を創造しました。リリコンとは、エレクトリック・ギターやオーボエ、フレンチ・ホーンなどの様々なサウンドを生成する、異例のハイブリッド・シンセサイザー木管楽器インストゥルメントです。また、ボーカル、ボーカリスト、カット・エップルは、自身の名前でもアルバムをリリースし、テレビや映画のスコアを作成し、世界中でコンサートを行っています。 Emerald Webで演奏または録音した他のミュージシャンには、エルドンのリチャード・ピナスとも共作しているバリー・クリーブランドアンビエント作家のジョーン・セリーなどがいます。

この、Emerald Webの1979年のデビューアルバムは、70年代半ばのプログレッシヴ・ロックに根ざしたサイケデリックな事象のマイルストーンであり、後に来るべきものの多くを予見していると言えるもので、今年、Improved Sound LimitedやDzyanなどの作品を抱える、クラウトロックに特化したレーベル、Long Hairより再発されました。

1980年代のエレクトロニック・ニュー・エイジ/ミニマル・シンセ/リラクゼーション・ミュージック・ブームのムーブメントを歓迎するかの如く、その精神的前兆を表現したアルバムというべきでしょうか。本作は 、クラウス・シュルツの周囲のクラウトロックのレコードと同様にモジュラ・シンセや、スイスの電子音楽のパイオニア、 Bruno Spoerriが好んだリリコン風のシンセが用いられています。

一曲一曲が比較的短くまとめられ、異国風味溢れるフルートの音色と、煌びやかな電子楽器の万華鏡のような響き、時折挿入されるアコースティック楽器や妻のキャット・エップルの可憐な歌声が情緒深い音世界を作り上げています。ホームメイドな佇まいで愛らしく、八十年代のニューエイジ・ミュージックを予見したかのようなサウンドは、フルートと電子近似の間で常にぼやけており、外宇宙の先住民の音楽を聞いているかのようです。特筆すべきは、9曲目の"The Powerstone"、内的宇宙に問いかけるような哀愁のサウンドは、キング・クリムゾンの初期、特に "Moonchild"の雰囲気を思い出します。このトラックでは、電子楽器の自然な音色や音世界を形成する上での彼らの技巧が最も顕著に表れています。

アルバムはリマスターされ、メンバーのキャット・エップルによるバンドのストーリーの解説やライナーノーツを含む4面インサートや貴重な写真集が付属。Tangerine DreamやPopol Vuhが好きな方から、オープンな心を持つ全ての人々にお薦めの一枚です。