Ezra Feinberg - Pentimento and others

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素晴らしい作品と出会うとき、それまでに出会ってきた何かと繋がっていることは自明でしょうか。イタリア地下シーンの立役者、Riccardo Sinigagliaの名作「Riflessi」と見紛うジャケだなと思い、メールボックスから電子の海へとダイブするとアパラチアの原風景を想起させる神秘的なフォーク・ミュージックがありました。

Ezra Feinberg(エズラ・フェインバーグ)は以前、Important RecordsやDead Oceansなどからリリースのあったサンフランシスコ拠点のフォークロック・バンド、Citayを率いていて、大望を抱くヒッピーの如く素朴なクラシックロック・サウンドを奏でて来ました。六年間で四枚のアルバムをリリースした後、2012年にはプロジェクトを解散してしまいます。彼の芸術面の師匠であった親友がガンで亡くなったからです。

負の感情を断ち切るかのように、彼は音楽から身を引いて西海岸を去り、ブルックリンへと移り住みます。結婚して、家族を作り、責任を背負い、精神分析学者としての仕事に打ち込むようになります。音楽人生で自由気ままに生活していた彼の若き日々の「喪失」からどのように先へと進んで行ったかを彼の探求心に見ることが出来るかもしれません。これらのことが彼の今年のこのファースト・ソロアルバムへと繋がりました。

このアルバムには、ティム・グリーン(ジョアンナ・ニューサムの作品にもエンジニアとして関与)やディエゴ・ゴンザレスといったCitayの元メンバーといった旧友たちを始め、グレイトフル・デッドでも演奏しているペダル・スティール奏者、ピート・グラントも参加。テリー・ライリー様式のミニマリズムや七十年代のサイケデリアへと没入して制作されたという作品。アパラチアン・フォーク~アメリカン・プリミティブの現行系とでも言えそうな、自然派サウンドの数々へと没入。多様な方面からアプローチする密度の濃さありつつ、アコースティック楽器の温かみが前面に出ており、それがこの音楽の親しみやすさの所以と言えます。ジョージ・ムカビに代表される西アフリカのギターミュージックなんかも孕んでいるようにさえ感じる、ひたすら牧歌的な響きです。難産だったことでしょうが、深い業と向き合った末に、限りない葛藤の末に産み落とした陽の音楽。

祭りやパーティーのあとの静けさや寂寞も埋めるような瑞々しいサウンドは、聴く人を選びません。確かな普遍性感じる1枚です。既に今年の上半期ベスト作品の一つかも。

彼の自主レーベルのRelated StatesとStimulus ProgressionからカセットLPが入手可能。