神谷重徳(Shigenori Kamiya)「ファラオの墓 - シンセサイザー・ファンタジー」(1982)
神谷重徳「ファラオの墓」小学館『少女コミック』で1974年から1976年に渡って連載されていた竹宮恵子氏の原作漫画であり、古代エジプトを舞台とした架空戦記『ファラオの墓』のイメージ・アルバムです。
日本のコンピューター・ミュージックの草分け的存在でもある、鬼才シンセサイザー奏者の神谷重が音楽を担当しています。アニメーションやコミック、特撮などの映像作品のイメージをシンセサイザーによって表現する日本コロムビアのシリーズ『DIGITAL TRIP』から「シンセサイザー・ファンタジー」ものとして1982年に発表された作品。
僕はというもの訳あって、最近は、アニメ関連のアンビエントかニューエイジのレコードを集めてるんですが、原作が読めていないものばかりでこれも勿論そのひとつなんですよね。去年はモー娘が舞台で演じたそうで、幅広い世代に愛されているのが分かります。
どちらかというと、吉村弘やVisible Cloaksといったサウンド・デザイン重視のニューエイジ/アンビエントから入った身としては、よくも悪くも「時代の音楽だな」とこの作品を聴いたばかりの数年前には感じましたが、色んなニューエイジやアンビエントに触れるにつれ、やはりだんだんと良さが分かるようになって来るもので、今はどっぷり聴かせて貰っています(原作は知らないけど)。わかりやすく言うと、Klaus SchulzeやTangerine Dreamといった70年代のジャーマン・エレトクロニクスと、Far East Family Bandのメンバーだった伊藤詳や宮下富実夫といった和ニューエイジ/ヒーリング・ミュージックの中間的な音楽を、日本で独自進化を遂げたアニメ音楽のファンタジックなフィルターへと通した、アニメ・レコードの王道を征くアルバムです。
本作も、「シンセサイザー・ファンタジー」シリーズの名に違わず、シンセサイザーを主軸に置いて制作が為されています。B級感も漂わせながらも、どこか神聖な雰囲気が同居していて、なんとも言えない妖しさが全面に漂います。プログレッシヴにシンセサイザーを繰り、ミステリアスなタッチで漂わせるアンビエンス、そして、ロマンティックで荘厳な雰囲気とエスニックな香りへと吸い込まれるばかりです。
この作品は入手が容易で、中古市場でも1000円くらいで取引されているみたいですね。アニメ・レコードもしくはイメージ・アルバムの入門に良いかもしれません。
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